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【連載「山河令」の台詞を読み解く】第2回 高山流水

この連載では、「山河令」の台詞に引用されている漢詩や故事と、そこに隠された意味を紹介します。

連載「山河令」の台詞を読み解く
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第2回 高山流水

「山河令」の台詞には有名な漢詩や故事が多く引用されていて、そこには深い意味が隠されています。今回は第9話に登場する「高山流水」を解説します。

第9話、周子舒と温客行は安吉の美しい竹林に隠居する4人の侠客“安吉の四賢”がともに音楽に興じる姿を眺めます。そして、彼らの関係を周子舒は「高山流水の故事さながら」と表現します。

この「高山流水」の故事は、道家(春秋戦国時代に現れた思想家・学派である諸子百家の一つで、老子・荘子の思想を奉じる)の書である「列子」の「湯問篇」にあり、「知己」について語ったエピソードとして有名です。


「山河令」第9話より ©Youku Information Technology (Beijing) Co., Ltd.


「知己(己を知る)」とは自分の心をよく理解してくれる友のこと。日本ではただの知り合いを「知己」と呼ぶこともありますが、中国で「知己」といえば心の深いところで通じ合ったソウルメイトを指します。また、「知己」と同じ意味で「知音(音を知る)」という言葉もありますが、それはこの「高山流水」の故事に由来します。

春秋戦国時代、琴の名手だった伯牙には良き聴き手となる友、鍾子期がいました。伯牙が“高い山”に登るイメージで琴を弾けば、鍾子期は「そびえ立つ泰山のようだ」と称え、伯牙が“流れる水”のイメージで曲を奏でれば、鍾子期は「洋々とした大河のようだ」と感嘆し、伯牙が音に込めた思いを鍾子期だけは理解したのです。そのため、鍾子期が亡くなると伯牙は自分の音を知る者はいなくなったと嘆き、琴を壊し弦を切って、その後の生涯で一度も琴を弾くことはなかったといいます。

なお、伯牙が作曲したと伝えられる古琴の名曲「高山流水」(現在は「高山」と「流水」の2曲に分かれる)は現代まで脈々と受け継がれていて、中国十大古曲の一つに数えられています。

さらに、第9話のこのシーンでは、周子舒が「知己に遇えば山河も重からず」と、唐代の詩人である鮑溶の詩「壮士行」の一節を引用します。これは「天下よりも貴重なのは知己に出会うこと」という意味で、周子舒が温客行を自分の「知己」だと認めたことを暗に伝える台詞です。

周子舒を「知己」と慕う温客行は、第8話で周子舒にただの友達=「朋友」と呼ばれて落胆していましたが、第9話で周子舒がこの詩を引用するのを聞くと、彼の真意を悟り、黙って静かに微笑むのです。

そんな2人の姿もまた「高山流水の故事さながら」といえるのではないでしょうか。

第3回「風雨」へ続きます

\「山河令」特集はこちら/

TEXT: 小酒真由子(フリーライター)
アジアから欧米までドラマについて執筆しています。双葉社『韓国TVドラマガイド』にて「熱烈推薦!! 中華ドラマはこうハマる!」を、Cinem@rtにて「アジドラ処方箋」を連載中。また、執筆させていただいたキネマ旬報ムック『最新!中国時代劇ドラマガイド 2021』が絶賛発売中です。

Edited:小俣悦子(フリーランス編集・ライター)

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