最後に紹介するトルシンニョは、『ブーメランファミリー』(2013)に出てくるハチャメチャ3人きょうだいの末っ子ミヨン(コン・ヒョジン)です。なんとミヨンは2度の離婚を経験しているトルシンニョ。さらには中学生の娘がいるにもかかわらず、新しい男とのロマンスののち、3度目の結婚をするという、韓国映画の中でも異色のキャラクター。
ミヨンの兄である、刑務所帰りの長男ハンモ(ユン・ジェムン)と、自称映画監督の職無し金無しの次男インモ(パク・ヘイル)は、実家である母の住むアパートに寄生しています。そこに、夫のDVに耐えられなくなったミヨンが、娘を連れてアパートに転がり込みます。ただでさえ狭い家が窮屈になったことに不満を抱いた兄2人は、何とかミヨンと DV夫を仲直りさせて、彼女たちをアパートから追い出そうと試みるのですが、そうこうしているうちに、ミヨンは新しい彼氏を見つけて、この人と結婚すると言い出す……というストーリー。
離婚経験者の私から言わせてもらうと、精神的にも肉体的にも、離婚は結婚の3倍は大変なのです。特に韓国の離婚は、紙切れ1枚を提出するだけの日本とは違い、申請約1カ月後に裁判所へふたり一緒に出向いて離婚証明をしてもらうなど、ややこしい手続きが必要となります。なのに、それを2度も繰り返し、さらに新しい男を捕まえるというハンターのようなミヨンの強さったら!
結婚してみたらDV夫だったという事例は、万国共通で珍しくない話ですが、ミヨンは「子どものために……」などという理由で暴力に耐え忍ぶのではなく、結婚生活に見切りをつけて、次に進むことができる強さを持ったトルシンニョです。
そんなミヨンというキャラクターが登場したことに、世間体より自分と自分の大切なものを重視しようという韓国の女性たちの心の変化が伺われます。特に、私も相手の浮気と、それを問い詰めたことによる逆切れ暴力が最終的な離婚の原因だったことから、ミヨンにはどうしても特別な思い入れを持ってこの映画を観てしまいますね。
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