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韓国映画特集

【韓ドラ&映画】バツイチ・ヒロインたちへの共感が韓国女性を救う

突然ですが、筆者は10年ほど前に韓国で離婚しました。相手は韓国人男性で、よくある国際結婚からの離婚です(当時落ち込みはしたものの、現在は再婚しとても幸せに暮らしているので安心してください)。

そんな自分の経験もあって、普段から魅力的なバツイチ女性の生き方を描いたドラマや映画に注目しているのですが、今回は「韓国におけるバツイチ女性に対するイメージの遍歴」を見ていきます。どうぞお付き合いください。

韓国は離婚率が非常に高い国です。2003年にはOECD諸国のなかでもアメリカに続いて2番目に高い粗離婚率(韓国統計庁発表したデータに基づく。2002年の離婚件数は約14.5万件で、1000人あたりの離婚件数=粗離婚率=で計算)だったといい、離婚というキーワードがなにかと大きくフィーチャーされる年でもありました。そのニュースをテレビで見ていた時は、まさか10年後に自分もその仲間入りするとは思ってもみませんでしたが……。

ちょうど、このニュースが話題になる数カ月前に公開された映画『春の日は過ぎゆく』(2001)では、イ・ヨンエ演じるラジオDJ兼プロデューサーのウンスが、どこか影がありつつも、小悪魔要素を持つ魅力的なバツイチ女性として登場し話題をさらっていたところでした。



イ・ヨンエが表現したバツイチ女性のリアル『春の日は過ぎゆく』


『春の日は過ぎゆく』©サイダス 松竹 アプローズピクチャーズ

 ウンスは、録音技師の年下男子サンウ(ユ・ジテ)と仕事を通じて出会い、徐々に深い仲になっていきますが、バツイチの彼女は次のステップである再婚へ一歩踏み出せないでいます。サンウの「キムチ漬けられる?」の問いに「私キムチ漬けられないよ?」と真顔で答え、その日から彼と距離を置こうとするウンス。彼女は“結婚”というリアルをすでに身に染みて知っているだけに、それに縛られない道を選ぶことになります。『春の日は過ぎゆく』という映画のタイトルが表すように、二人の春は過ぎていってしまうのでした。

 この作品は、日本でも人気の高い映画『八月のクリスマス』(1998)のホ・ジノ監督の第2作目であり、第21回青龍映画賞の最優秀作品賞はじめ、さまざまな映画賞を総なめにしました。

 一貫して淡々と描かれる一組の男女の出会いと別れ。しかしそこここにホ・ジノ監督らしいスパイスが効いていました。

 特に、セリフの中に何度か出てくる「ラーメン」もその一つです。

 韓国でも「ラーメン」は人気食品ですが、韓国でラーメンといえば「インスタントラーメン」を指します(ちなみに日本で一般的に知られるラーメンは「生ラーメン」と呼ばれる)。この作品の中でも何度か、キーワードとしてセリフの中に登場しますが、特に印象的な一言と言えば、彼を家に誘う時のウンスの一言「ラーメン食べていかない?」です。

これはただ単に夜食としてラーメンを食べる意味ではなく「泊って行かない?(つまり、今夜は一緒に過ごさない?)」の意味が含まれているのです。もし、あなたが韓国でこう言われたら、本当にラーメンか、または深い意味があるのか、よく考えて!(笑)

さらに、中盤サンウが叫ぶ「僕はラーメンじゃない」も、インスタントでお手軽と言う意味を持つラーメンを自分に例えたセリフであり、かなりインパクトがありました。

 また、公開当時「消火器」のセリフも映画批評家たちの間で、何かの比喩ではないかと言う憶測が飛び交いました。ラジオ局の廊下でウンスがサンウに初めて自分に離婚歴があることを話すシーンです。「結婚すればいいのに」というサンウに、ウンスは「してみたわ。1度だけ」と答えます。そのあと何も言えないサンウは、気まずそうにただ飲みかけのコップを見つめるだけ。沈黙を破るようにウンスは「消火器の使い方、知ってる?」と何の脈絡もない消火器の使用方法について説明するのです。このウンスの行動は人によっては痛く共感できるといいます。

ことに韓国では、 自ら離婚歴を明かすと、聞き手の反応は様々です。冒頭で述べたように、2001年には離婚率が上がり、離婚自体そこまで珍しくない世の中だったにもかかわらず、離婚の話は、尋ねられてもいない消火器の話をしなければいけないほど、腫れ物に触るような話題でした。

 私自身、離婚について心の整理が付くまで数年かかりましたが、いつの間にか笑い飛ばしながら周囲の人たちに離婚話ができるようになりました。

 しかし、ある時を境にバツイチに対する韓国人の反応の変化に気づき始めました。

 確信したのは、韓国人の知り合いとこんなやり取りをした時でした。

「いやぁ、実は離婚歴があるんだよね」

「ああ! トルシンニョなんだ~」

「え? トルシンニョ?」

そう、その境とは“トルシンニョ“と言う言葉が韓国で生まれた頃でした。

 

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