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【インタビュー】『映画 真・三國無双』音楽制作担当 波多野裕介氏 “登場人物たちの戦いと一緒に演奏しているという迫力を出したかった”



― 音圧や迫力以外では何かご自分なりのこだわりはあったのでしょうか?

波多野 曲調も工夫しました。「真・三國無双」の曲は、戦いに勝つことを前提として作られていて、音楽を聞くだけで「あ、絶対勝つな」と気持ちが高揚するポジティブさがあります。でも映画の中では、勝つだけでなくピンチな場面も多いです。そういうときにそのまま明るい音楽を入れてしまうとミスマッチになってしまうので、アグレッシブな音色はそのままにしつつ、ネガティブな感情が出るような編曲をしました。

また、呂布の場面ではロックのなかでもさらに暗く重く、ドラムの低音が鳴り響くようなヘヴィメタル調にするなど、人物や情景によって色分けするという工夫もしています。 シーンの変化に合わせて、観ている人も意識せずに自然と気持ちや感情が移っていけるように音楽をつなげることをかなり意識して作りました。


― ゲームのオリジナルBGMを使ったり取り入れたりした部分はあるのでしょうか?

波多野 音楽を担当すると決まったときに「真・三國無双8」の音源をいただいて、自由に使っていいと言われてはいましたが、完成した曲の半分以上は自分のオリジナル楽曲です。

でも、僕自身もファンなので分かるんですが、「ここはこういう音楽がほしい!」という期待があるんですよね。だからその期待に応えたいという思いで、本当に重要な場面のときにはオリジナルの曲の一部を使うなど、ゲームの世界観を再現することにこだわりました。たとえば必殺技が出る瞬間にはこの曲のこの部分を使おうとか、ギター2本で奏でるロックの特徴的な音色やハーモニーは絶対外せないとか。


― 演奏にはさまざまな楽器が使われているようですが、バンドやオーケストラの演奏は香港で録音したのでしょうか?

波多野 はい。ほとんど香港で録音しました。アジアンチックな曲を演奏する際は中国の大学で中国楽器を専攻している方たちに来てもらったり、オーケストラの演奏はブダペストのフィルハーモニックオーケストラとリモートで録音したりしました。実は香港には、フィルハーモニックオーケストラのような大きいオーケストラの演奏を録音できる場所がないんです。

海外のオーケストラとのリモート録音は、ロイ・チョウ監督の前作品で音楽制作を担当したときに試していて、そのときの感触が自分的にとても良かったので、ブダペストのオーケストラに依頼することにしたんです。ロックサウンドの部分は日本に行って、日本のロックミュージシャンの方々と一緒に録音しました。


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