ビギナー向け!香港映画入門 <後編>アクション映画だけじゃない!多彩な香港映画の沼へようこそ
これぞ明星(スター)! チョウ・ユンファ、四大天王、輝ける女優たち、そしてレスリー・チャン
ジャンルで見るか、スターで見るか、監督で見るか。さまざまな選択肢の中でも「スターで見る」楽しさをたっぷり味わえるのが香港映画の魅力の1つ。
というのも基本的に香港の明星たちは男女を問わずアクションもラブストーリーもコメディもシリアスもお任せ! の全方位対応型。映画の中でいろんな顔を見せてくれるのだ。
ではどんなスターがどんな映画に出ているのか。
カンフー映画とコメディ映画については先述のとおりで、ここで真っ先に名前をあげたいのが『男たちの挽歌』で一躍アジアのトップスターとなったチョウ・ユンファ(周潤發) である。彼は『狼/男たちの挽歌・最終章』などノワール系だけでなく『風の輝く朝に』(84)『誰かがあなたを愛してる』(87)『過ぎゆく時の中で』(89)『ゴッド・ギャンブラー』(89)など文芸映画の傑作からコテコテのコメディまで数えきれないほど主演作を持つ、香港でもっとも尊敬される名優だ。
名優といえば次に名前をあげるべきはトニー・レオン(梁朝偉)であろう。ジョン・ウー(呉宇森)監督の『ハード・ボイルド 新・男たちの挽歌』ではチョウ・ユンファとダブル主演。近年もジョン・ウーとは『レッド・クリフPartI』(08)『レッド・クリフPart II 未来への最終決戦』(09)で組んでいる。また、『恋する惑星』(94)をはじめウォン・カーウァイ(王家衛)作品の常連スターであり(ウォン・カーウァイについては後述)、台湾やベトナムほか海外の巨匠からの信頼も厚い。
先に全方位対応型と書いたが、歌手と俳優を兼ねたスターが多いのも香港エンタメ界の特徴で、その代表格が「四大天王」ことアンディ・ラウ(劉德華)、アーロン・クォック(郭富城)、レオン・ライ(黎明)、ジャッキー・チュン(張學友)。
とくにアンディ・ラウの仕事量はただごとでなく、『望郷 ボートピープル』(82)『欲望の翼』(90)『インファナル・アフェア』『桃(タオ)さんのしあわせ』(11)など文芸映画でもアクション映画でも数多くの代表作を持つ。また、アーロン・クォックは『風雲 ストームライダーズ』(98)『影なきリベンジャー 極限探偵C+』(07)『コンスピレーター 謀略 極限探偵A+』(13)、レオン・ライは『天使の涙』(95)『ラヴソング』(96)『インファナル・アフェアⅢ 終極無間』(03)、ジャッキー・チュンは『欲望の翼』『ハイリスク』(95)などでその魅力と実力を堪能できる。
さて、ここまでちっとも女優の話が出てこなくてアンバランスに感じた人もいるだろう。映画史的には女優優位の時代もあった香港だが、近年は一枚看板でブームを引っ張ってきたのは男性のスターが多数派なのだ。
とはいえもちろん美しくかっこいいスター女優もキラ星のごとく、身体を張ったアクションからおバカなコメディまで多芸多才にこなしてきた。
代表的存在が『ラヴソング』『欲望の翼』『花様年華』(00)のマギー・チャン(張曼玉)。『スウォーズマン/女神伝説の章』『キラーウルフ 白髪魔女伝』(93)のブリジット・リン(林青霞)。『ルージュ』(88)『ワンダーガールズ 東方三侠』(93)のアニタ・ムイ(梅艷芳)。『北京オペラブルース』(86)『誰かがあなたを愛してる』『狼たちの絆』のチェリー・チェン(鍾楚紅)。そして『ポリス・ストーリー3』(92)『宗家の三姉妹』(97)『イップ・マン外伝 マスターZ』のミシェル・ヨー(楊紫瓊)は、今ではハリウッドでも引っぱりだこの大女優である。
ここで再び男性スターに話を戻し、レスリー・チャン(張國榮)で本項をしめくくりたい。
四大天王と同じくレスリーも歌手・俳優の両輪で人気を博したトップアイドル。『男たちの挽歌』『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』(87)『欲望の翼』『さらば、わが愛 覇王別姫』(93)『君さえいれば/金枝玉葉』(94)をはじめ数多くの名作・傑作に主演したが、03年に自らこの世を去ってしまった。その美しさを映画の中にとどめ、永遠に忘れ得ぬ星となったのである。
<次のページ:オシャレなアートムービーもアクション抜きの文芸作品も 香港映画の沼へようこそ>
記事の更新情報を
Twitter、Facebookでお届け!
Twitter
Facebook