猟奇的な彼女からキム・ジヨン、椿まで ヒロインたちは韓国社会に何を訴えたか
80年代生まれの彼女たち 『82年生まれ、キム・ジヨン』『はちどり』『子猫をお願い』
『最も普通の恋愛』がオフィスで働く女性たちの今を描いたのに対し、韓国で130万部越えの大ヒット小説を原作とする『82年生まれ、キム・ジヨン』(2019)は、仕事を辞めて子育てに専念している33歳の女性の日常を見つめる。
『最も普通の恋愛』のソニョンと同じく小さな広告代理店に勤めていた主人公ジヨン(チョン・ユミ)は、出産により退職を余儀なくされたあと、家事をこなし、娘を育て、正月やお盆になれば夫の実家を訪ねるといった、「韓国の女性であれば当たり前」とされてきた日々を送る中で、少しずつ不思議な症状を見せるようになっていく。
このような、劇中で綴られるジヨンの変貌を通して
「女性だから」
「妻だから」
「母だから」
という理由で、韓国の女性たちが自分のやりたいことができなかったり、制限されたりしてきた(している)ことは、決して“当たり前ではない”という事実を痛切に訴える。
一方、1994年を舞台にした『はちどり』(2019)の主人公、14歳の中学生ウニは、キム・ジヨンと同世代(1980年生まれ)で、家族構成も似ている(両親、姉、兄。キム・ジヨンは両親、姉、弟)。
高圧的で兄ばかり優遇する父と、見て見ぬふりをしながらそれをやりすごす母の態度にストレスを溜めながら生きるウニが、人生の師とも言える女性教師と知り合ったりしながら、なんとか自分の進んでいく道を見つけようと、もがく。
『キム・ジヨン』と『はちどり』、男尊女卑の空気が今よりも色濃かった同時代を歩みながら、女性たちが感じてきた逃げ場のない閉塞感が、まったく違う2本の映画の中で響き合う。
家の外をふらふらと歩き虚空を見つめるウニの母の姿は、ベランダに佇むキム・ジヨンとも重なって見え、母から娘へ、90年代から現代へと、女性たちが変わらずに背負わせられ続けてきてしまったものの重みが、ひしひしと感じられる。
さらにもう1本、キム・ジヨンと同世代の女性たちが主人公として登場するのが、『猟奇的な彼女』と同じ2001年に発表された『子猫をお願い』だ。
女子商業高校の同級生であるテヒ(ペ・ドゥナ)、ヘジュ(イ・ヨウォン)たち仲良し5人組が、卒業後1年を経て直面する現実を、ソウル近郊の港街・仁川を舞台に描くこの青春映画のテーマは「金銭的に自立して生きていくことの難しさ」だったが、女性が社会に出る痛みも浮き彫りにした。
もちろん、これは“若い”“女性”だけに限った悩みではないが、5人の中で唯一、正社員として証券会社に就職し、比較的恵まれた立場にあるヘジュという登場人物が「女性だから」「高卒だから」と受ける不当な扱いを見ていると、やはりそこに大きな違いが存在していることに気づかされる。
『はちどり』『子猫をお願い』『82年生まれ、キム・ジヨン』という3本を合わせて見ていくと、80年代に生まれた彼女たちが、自分の人生をつかみとるため様々なものと闘いながら、10代、20代、30代を過ごしてきたことがよくわかる。
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