【連載:中国の歴史・文化からひも解く「山河令」 】第6回 ちょっと気になる「葬祭」のあれこれ
この連載では、知っていると「山河令」をより深く理解できる、中国の歴史・文化をご紹介します。
第6回 ちょっと気になる「葬祭」のあれこれ
第25話には四季山荘に帰った周子舒、温客行、張成嶺が墓参りをするシーンが登場します。中国は古来より祖先を敬う儒教の教えに基づき、葬儀は盛大に行い長く喪に服す習慣がありました。そんな日本とは違うところも多い葬祭文化について、過去のエピソードのシーンを振り返りつつ解説します。
墓参り
第25話の墓参りシーンでは、四季山荘の前師匠・秦懐章とその息子・秦九霄の墓が登場します。墓石の後ろにある甲羅のようなものは、龍から生まれたという亀に似た伝説の神獣「贔屭」をかたどったもので、傍らにあるのは古墳などでもよく見られる「石馬」。これらは古代中国の墓によく見られるものです。
また、中国では古代から埋葬は土葬で行われていて、儒教では火葬は遺体への冒涜という考えがありました。そのため、火葬が推奨されるようになった現代でも、特に田舎では土葬信仰が根強く残っています。
なお、現代でも墓参りを行う伝統的な祭日といえば清明節(4月頭)。その日は墓前で供物を並べて礼拝するのが慣わしです。
位牌
位牌は後漢時代に丁蘭という男性が亡き両親の木像を作って拝んだことが起源とされています。中国時代劇では祖先や一族の位牌を安置した「祠堂」という部屋が出てくることが多いですが、「山河令」でも第5話で登場する趙氏義荘の中には趙氏一族の位牌が並んだ「祠堂」がありました。
また、武侠ものではそこに義兄弟の位牌を並ベるのがお約束で、岳陽城にある五湖盟の本拠地には五湖盟の義兄弟たちの位牌を安置した「祠堂」があります。第11話ではそこで高崇が死んだ仲間たちに語りかけ、第28話でも趙敬が彼らの位牌に本音をぶちまけるシーンが登場します。
葬儀
第5話で温客行が足を踏み入れた趙氏義荘で見た幻覚は、父親が棺桶の前に座って線香をあげている通夜の光景でした。通夜では家族や友人が線香やロウソクの火が絶えないように徹夜で見守らなければなりません。その時に着るのは荒い麻布で作られた喪服です。
第14話では師匠・傲崍子を亡くした泰山派の弟子たちが麻布の喪服を着て白いハチマキをしています。現代では中国でも都市部では黒い喪服が一般的になってきていますが、もともと伝統的な喪服の色は「白」とされ、第25話で登場する高小怜がいつもと違って質素な白い服を着ているのも、喪に服している服装といえます。
また、中国では死者をあの世に送るときにお金に困らないようにという願いを込めて、現代でも金銭を模した紙のお金「紙銭」を焼いたり、葬列で巻いたりする風習があります。「山河令」では黄色い丸い形に切った「紙銭」が登場しますが、これは「金」を模したもの。第2話で鬼谷が鏡湖派を襲う現場ではたくさんの黄色い「紙銭」が空を舞っていますが、命を狙われる不吉なシーンで葬列をイメージさせる「紙銭」が登場するのは中華圏のホラー映画などでよくある描写で、「山河令」でも「紙銭」が舞うことで敵が殺しにきたということがすぐにわかる演出となっています。
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TEXT: 小酒真由子(フリーライター)
アジアから欧米までドラマについて執筆しています。双葉社『韓国TVドラマガイド』にて「熱烈推薦!! 中華ドラマはこうハマる!」を、Cinem@rtにて「アジドラ処方箋」を連載中。また、執筆させていただいたキネマ旬報ムック『最新!中国時代劇ドラマガイド 2021』が絶賛発売中です。
Edited:小俣悦子(フリーランス編集・ライター)
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