【連載:中国の歴史・文化からひも解く「山河令」 】第3回 顔を自由自在に変えられる!?「変装術」
この連載では、知っていると「山河令」をより深く理解できる、中国の歴史・文化をご紹介します。
第3回 顔を自由自在に変えられる!?「変装術」
周子舒は“変装術”が使えるという設定で、ドラマの冒頭では顔を変えています。この“変装術”は中国語では“易容術”といい、「山河令」だけでなく多くの中国時代劇に頻繁に登場します。いったい “易容術=変装術”とは何なのでしょうか?
中国の歴史を遡ると、後漢時代の方士(占いや錬丹術を行う者)として有名な左慈は、様々な不思議な術を使えたという伝説が残されていて、その中には変装術もありました。曹操が彼に腹を立てて逮捕しようとしたとき、市場で左慈を捜すとそこにいる人々がみんな左慈とそっくりの姿になっていたり、左慈が羊の姿に扮装して群れの中に隠れてしまったりして、彼を捕まえられなかったといいます。
また、宋の時代、宋四公と呼ばれた泥棒も“変装術”が得意でした。ある日、宋四公を捕まえようと家にやってきた役人たちは、向かいの茶屋にいた1人の老人に彼を呼んできてもらうよう頼みます。すると、宋四公の家の中で2人がしばらく会話する声が聞こえた後、老人が出てきて「宋四公に粥を買ってくるように頼まれたからもう少し待っててくれ」と言いました。そのため役人たちは老人を待ちますが、一向に帰ってこない上、宋四公が出てくる気配もありません。そこで彼らが家に踏み込むと、家の中には縛られた老人がいました。つまり、粥を買いに行った老人は“変装術”で老人になり代わって逃げた宋四公だったのです。
さらに、明の時代には桑沖という悪名高い犯罪者が“変装術”を極めていたといいます。彼は“変装術”で男性ながら完璧に女性になりすまし、良家の婦女子たちに近づいてはさらって乱暴していましたが、最後には処刑されました。
こうした逸話にある“変装術”が実際にどれほどのレベルだったかは知りようもありませんが、中国時代劇に登場する“変装術”は、簡単な変装だけでなく別人そっくりな外見にすることも可能です。古代が舞台なのにそんな技術があるなんておかしいと違和感を抱くかもしれませんが、“変装術”も武術と同じくフィクションの世界では大げさに描かれるのがお約束。「武侠小説」の“あるある設定”でもあるので、中国の視聴者にとってはもう慣れっこなのです。
例えば、「山河令」の“変装術”は顔に薄いマスクを貼りつけたり化粧を施したりする、映画撮影などでよく行われる特殊メイクのようなものです。このテクニックで周子舒は本来の美しい顔を隠して正体を知られないようにし、艶鬼(柳千巧)は自分の顔にある醜い傷を隠したり、別の誰かになりすましたりします。
この“変装術”がさらに発展して美容整形がテーマになっている作品もあります。中国で2014年に大ヒットした時代劇ドラマ「美人制造~唐の美容整形師~」は則天武后にお気に入りの美容整形師がいたという奇想天外な設定で、周子舒役のチャン・ジャーハンがこの作品では美容整形師の弟子を演じています。
なお、現代の中国で“変装術”といえば特殊メイクの技術を指すことが多く、芸能人やキャラクターに似せるモノマネメイクを“変装術”と呼ぶことも。
このように、はるか昔から現代まで伝わる“変装術”が武術とともにフィクション世界を盛り上げる定番の要素となっているのも、想像力をかき立てられる興味深い中国文化の一つといえるでしょう。
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TEXT: 小酒真由子(フリーライター)
アジアから欧米までドラマについて執筆しています。双葉社『韓国TVドラマガイド』にて「熱烈推薦!! 中華ドラマはこうハマる!」を、Cinem@rtにて「アジドラ処方箋」を連載中。また、執筆させていただいたキネマ旬報ムック『最新!中国時代劇ドラマガイド 2021』が絶賛発売中です。
Edited:小俣悦子(フリーランス編集・ライター)
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