【連載:中国の歴史・文化からひも解く「山河令」 】第1回 武術に欠かせない「気」のパワー
この連載では、知っていると「山河令」をより深く理解できる、中国の歴史・文化をご紹介します。
第1回 武術に欠かせない「気」のパワー
「山河令」の周子舒も温客行も武術が得意という設定ですが、アクションシーンを見ていれば、彼らがただ体力に優れていたり、武術の技が凄かったりするだけでなく、超人的なパワーを持っていることに気づくと思います。
鏡湖山荘を訪れた周子舒が桃林の上を飛んでいくシーン(第2話)などに見られるように、彼らはいとも簡単に空を飛んだりもできるのです。
このように、キャラクターたちが特別なパワーを秘めている設定なのは、中国文化における「気」という考え方がもとになっています。
日本語でも「元気」「活気」などの言葉で使われる「気」は、中国では古来からこの世のエネルギーを表す概念です。 「気」の流れを物を置く位置でコントロールする「風水」、体内の「気」をコントロールする健康法「気功」など、中国では日常生活に「気」という考え方が深く浸透しています。
中国時代劇ではこの「気」の持つ力を拡大解釈して、武術における超人的なパワーとして表現することが珍しくありません。 特に、「山河令」をはじめとする「武侠ドラマ」と呼ばれるフィクション世界では、武芸者なら身軽に空を飛んだり、体内の「気」のパワーを自在に操って戦ったりするのが、欠かせないお約束となっています。
中国の武術で体を軽くして移動する技は実際に「軽功」と呼ばれ、「気」の訓練によって修得できるといわれています。 ただし、現実の「軽功」は身軽に岩をよじ登ったり、軽やかに塀を飛び越えたりする「パルクール」のようなイメージで、空高く飛んだり屋根に飛び上がったりするのは、ドラマだからこその大げさな表現です。
また、体内の「気」のパワーを操って戦うのは現実にはないフィクションの技といっていいでしょう。 「山河令」では他の「武侠ドラマ」と同様、体内から生み出される「内力」と呼ばれる「気」を操る「内効」が使われます。
「武侠ドラマ」において「内功」は相手を攻撃するのに必要不可欠な技です。 武術を鍛錬する場合は、筋力を鍛えたり武術の型を覚えたりするだけでなく、この「内功」を高めることが重要で、「内功」が使えなければ武術ができるとはいえません。
また、攻撃を受けたり病気の影響を受けたりすることによって、体の外側に傷を負ってはいなくても、体内の「内力」にダメージを受ける「内傷」を負うことがあり、それを癒すのにも「内功」が役に立ちます。
周子舒は自らの体に釘を打った結果、「内力」が衰えていっているため、しばしば「内功」によって自らの体調を整えています。 温客行が瀕死の李おじを治療したシーン(第2話)のように、人の背中に手を当てて何かを送っているような描写も、相手に「内力」を送る「内功」による治療なのです。
さらに、温客行が「内傷」を負った周子舒のために簫を吹くシーン(第4話)では、温客行が「内力」を使って曲を奏でることによって周子舒の「内力」を回復させる「内功」を使っています。
こうした描写が中国では特に多くの説明もなく暗黙の了解として出てくるのは、中国人にとって「気」という概念が非常に身近なものだからでしょう。
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TEXT: 小酒真由子(フリーライター)
アジアから欧米までドラマについて執筆しています。双葉社『韓国TVドラマガイド』にて「熱烈推薦!! 中華ドラマはこうハマる!」を、Cinem@rtにて「アジドラ処方箋」を連載中。また、執筆させていただいたキネマ旬報ムック『最新!中国時代劇ドラマガイド 2021』が絶賛発売中です。
Edited:小俣悦子(フリーランス編集・ライター)
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