作家/女優・一青妙さんが教えてくれる、おすすめカルチャー×スイーツ【台湾編②】
つづいて…台湾編の最新注目作は 映画『バナナパラダイス』
2019年金馬奨終身成就賞受賞!
台湾映画のレジェンド、ワン・トン(王童)監督作品 本邦劇場初公開!
台湾――そこはバナナがたわわに実る<天国(パラダイス)>のはずだった….。中国、台湾の歴史の大きなうねりの中 流れに抗うこともままならない立場に置かれた非力な人々が とにかく必死に生きようとする姿を ユーモアを交えて描く!
『バナナパラダイス』
新宿K's cinemaにて開催中の、台湾巨匠傑作選2020にて上映中、以降全国順次公開!
詳しくは公式サイトへ。
https://taiwan-kyosho2020.com/
『バナナパラダイス』を見るときに一緒に楽しめそうな、台湾のおやつは何?
甘蔗汁(サトウキビジュース)
日本統治時代や終戦後でも、台湾の温暖な気候ですくすくと育ってきたのが甘蔗(サトウキビ)とバナナ。
両者とも台湾の豊かさを象徴するものとして挙げられることが多い。
私が台湾で暮らしていたのは70〜80年代前半。当時、映画館で映画を見る際に食べ物の持ち込み制限はほとんどなく、イカ焼き、臭豆腐、滷味(台湾風煮込み)などを片手に映画に見入っていたものだ。
飲み物も必需品であり、塩辛いものに合わせるのが「サトウキビジュース」だった。映画館付近の屋台で、しぼりたてのジュースをビニール袋に入れてもらい、ストローを挿し、紐でしばれば完成だ。
口のなかで広がるサトウキビのほどよい甘さは、難しい映画も、悲しい映画も、怖い映画も楽しく感じさせてしまう不思議なパワーがある。
映画『バナナパラダイス』は、戦後の台湾で、望郷の念にかられながらも、たくましく生き抜こうとする外省人の話だ。外省人の悲哀を、サトウキビジュースが和らげてくれるかもしれない。
台湾バナナ
ずばり、タイトルにも使われている「バナナ」以上に本作にぴったりくるおやつはないと思う。もちろん、バナナはフィリピンでもエクアドル産でもなく、台湾産の「台湾バナナ」だ。
台湾バナナは、こぶりで皮が薄い。甘みが強くて、口に入れればねっとりとした食感が特徴で、台湾でも日本でも、昔からの定番のおやつとして親しまれてきた。
映画『バナナパラダイス』は、冒頭から、「台湾にはバナナがある」「大きくてジューシー」「甘い」などと、台湾に向かう国民党の兵士たちが台湾バナナを新天地の象徴として考えていたことが分かるシーンがある。作品の中では、一面のバナナ畑やバナナ農家が登場する。特に、主人公がセリフを吐かずにバナナを頬張りながら涙するシーンは、言葉以上の感情が伝わってきた。
台湾バナナを食べながら本作を見れば、物語の世界観に入りこみ、監督が表現したかった切ない甘さを含んだ当時人々の思いに近づけるに違いない。(一青さん)
Edited:小俣悦子(フリーランス編集・ライター)
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