「蓮花楼」にも登場! “病”を名前に使う理由|中国時代劇トリビア#126
男たちの絆と成長の物語が熱く描かれていくドラマ「蓮花楼」。
その中に登場する李蓮花・笛飛声・方多病の3人組のムードメーカー的存在で、きらきらな少年っぽさがとても眩しい方多病ですが、その生き生きとした印象とは裏腹に、幼い頃は病気がちで、そこから“多病”と呼ばれるようになったというエピソードが劇中でも登場します。(第2話)
大事な名前に“病”という縁起の悪い言葉を入れるのは、ちょっとびっくりしますよね⁉ しかし、調べてみると、中国では物語の登場人物を始め、実在の人物にも“病”をつかった名前を持つ人がいるのです。
今回は名前につけた “病”の意味を、詳しく探っていきたいと思います!
「蓮花楼」方多病 © Beijing iQIYI Science and Technology Co Ltd. & H&R Century Pictures Co.,Ltd. All rights reserved.
“病気”を名前に使う理由
その1 “病”を取り入れて、病を避ける!
前漢の武帝時代の武将、霍去病(かくきょへい)は、「去病」が「病が去る」という意味で付けられており、健康で長生きすることを祈るという意味になります。この名づけの由来については、
① 生まれたばかりの彼の泣き声を聞いて、病から回復した武帝が、赤子が病を取り去ってくれたということで、「去病」の名前を与えた。
② 満足に食事を与えられなかった母親が彼の身を心配し、病気を追い払い、健康に育つようにとつけた。
③ 両親が占い師に彼をみてもらったところ、後の大病を避けるために「去病」にするよう告げられた。
など諸説あるようです。その後成長した霍去病は、多くの武功をあげ、漢代の人々の心に広く知られる英雄となりましたが、24歳の若さで亡くなっています。
ドラマ「雲中歌 〜愛を奏でる〜」に登場する武帝の曾孫の劉病已(宣帝)も、“已”という字と“病”組み合わせることで、病を遠ざける意味の名前にしています。
「雲中歌 〜愛を奏でる〜」劉病已 ©東陽星瑞影視文化伝媒有限公司,東陽歓娯影視文化有限
ではここで、方多病の場合を考察してみましょう。
古代中国では医療水準が遅れ、裕福な家庭であっても子供の死亡は珍しくありませんでした。そしてこの頃は、子どもの死は悪霊によるものであり、わざと俗っぽいあだ名を付けることで悪霊を追い払い、幼少期の健全な成長を守ることができると信じられていました。
こうした背景を考えると方多病の名は、親が子を守ろうとした祈りとおまじないのようなものだったのかもしれませんね。
「蓮花楼」方多病 © Beijing iQIYI Science and Technology Co Ltd. & H&R Century Pictures Co.,Ltd. All rights reserved.
“病気”を名前に使う理由
その2 “超越”を意味する“病”
名称に使われる「病」という文字の、もう一つの役割。それは、“超越”という意味でも使われていることです。
「水滸伝」に登場する梁山泊第三十二位の好漢・楊雄は、渾名は病関索(びょうかんさく)、そして第三十九位の好漢・孫立は、渾名は病尉遅(びょううっち)で、いずれも“病”がついています。これは、病気がちということではなく、2人が非常に強力ということを表しているそう。
いずれも深い意味を持った名づけの知恵があって、面白いですね!
“病気”を名前に使う理由 ミニトリビア
病や死、といった忌み語に関連して、中国では、年齢を表す数字も生命との関わりがあるとされ、いわゆる不吉な数字を使う特定の年齢にも忌み語があるそうです。
横浜商大論集「中国語の忌み言葉と代替語についての一考察」(陳珊珊)の論文からひくと、
・36歳…三国志にも登場する周瑜の享年
・45歳…遭難など不吉なことに関わる
・73、83歳…孔子と孟子の享年で、人生の関所
・100歳…寿命の極限を示す
ということで、この歳の前後の年齢で言い換えたりすることもあるとか。このほかにも、地方によっては、男性の30歳、女性の40歳が良くないなど、さまざまな言われがあるそうなので、ご興味がある方は、さらに調べてみても面白いかもしれません。
セルBlu-ray/DVD:11月13日より順次発売(全3BOX/各BD19,800円・DVD16,500円 税込)
レンタルDVD:11月2日より順次レンタル開始
発売・販売元:エスピーオー
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Text:島田亜希子
ライター。中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆する他、中文翻訳も時々担当。Cinem@rtにて「中国時代劇トリビア」「中国エンタメニュース」を連載中。『中国時代劇で学ぶ中国の歴史』(キネマ旬報社)『見るべき中国時代劇ドラマ』(ぴあ株式会社)『中国ドラマ・時代劇・スターがよくわかる』(コスミック出版)などにも執筆しています。
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