今秋、日本で見られる台湾映画 −東京国際映画祭−|台湾エンタメ通信
まだ暑さがぶり返すような日もありますが、秋といえば映画祭の季節ですね! 台湾では台北金馬映画祭(台北金馬影展/TGHFF)開催まで半月を切りましたが、日本でも東京国際映画祭(2024年10月28日~11月6日)、東京フィルメックス(2024年11月23日~12月1日)と国際映画祭が目白押しです。今回は、来週から始まる東京国際映画祭(TIFF)で上映される台湾関連の映画をご紹介します。
(本文中、敬称略)
金馬奨でも5部門ノミネート! 命と家族、女性の選択を描いた物語
今年はトニー・レオン(梁朝偉)が審査委員長を務めるというだけでさらにテンションが上がってしまいそうですが、一番の注目作はやはり「コンペティション」部門の『娘の娘』(原題:女兒的女兒)でしょう。TIFFコンペ部門の最終15作品に選出された台湾映画は、意外にも2004年チェン・ウェンタン(鄭文堂)の『時の流れの中で』(原題:經過)以来、実に20年ぶり。9月に開催されたトロント国際映画祭のプラットフォーム部門では特別賞を受賞、金馬奨(ゴールデン・ホース・アワード/GHA)では最優秀主演女優賞をはじめ5部門でノミネートされており、台湾で今最も注目されている映画の一つといっていいでしょう。
©Sun Lok Productions Ltd
監督は、2018年に日本でも劇場公開された『台北暮色』(原題:強尼·凱克)の新鋭ホアン・シー(黄煕)。同作で制作総指揮を務めたホウ・シャオシェン(侯孝賢)が再びエグゼクティブ・プロデューサーを務めたほか、名女優シルヴィア・チャン(張艾嘉)がエグゼクティブ・プロデューサーと主演を兼任というだけでも一見の価値ありですが、さらに主要キャストもカリーナ・ラム(林嘉欣)、ユージェニー・リウ(劉奕兒)と強力布陣です。
急逝した娘の受精卵の保護者として、代理母を探すのか廃棄するのか選択を迫られるアイシャをシルヴィア・チャン、アメリカで同性パートナーと交通事故に遭うズーアルをユージェニー・リウ、アイシャが若いころ里子に出した娘エマをカリーナ・ラムが演じます。予告映像では、特にサイドを刈り上げたショートヘアのユージェニー・リウが印象的。『怪怪怪怪物!』のモンスターなど、これまで演じた役柄とは大きくかけ離れた外見や立ち居振る舞い、そのカメレオンぶりに驚かせられます。
©Sun Lok Productions Ltd
残念ながらチケットはすでに完売ですが、監督はじめ主演キャスト3人が登壇するQ&Aも予定されているので、メディア報道と日本公開に期待したいところです。
成田凌主演、台湾を舞台に男女の激しい性愛に迫る
コンペティション部門『雨の中の慾情』は、つげ義春の同名短編漫画を原作とした日台共同制作映画で、90%以上が台湾(嘉義市)で撮影されたそうです。監督は『ガンニバル』の片山慎三、キャストは成田凌、中村映里子、森田剛、竹中直人ら日本人俳優のほか、台湾人俳優のリー・シン(李杏)ら。成田凌と中村映里子が欲望をぶつけ合うシーンと、嘉義のノスタルジックな街並みが絶妙にマッチして、独特なウェット感と奇妙な迫力が感じられます。『雨の中の慾情』は、金馬奨の「アジア映画の窓」部門でも上映されるほか、11月29日から劇場公開予定。
©2024 「雨の中の慾情」製作委員会 ©2024 “LUST IN THE RAIN” Film Committee
このほか、「アジアの未来」部門の『黒の牛』は日・台・米の合作です。監督は『祖谷物語―おくのひと―』の蔦哲一朗、主演はツァイ・ミンリャン(蔡明亮)作品でおなじみのリー・カンション(李康生)。坂本龍一の音楽とともに、モノクロで映し出された農民、牛、大地など怒涛の映像美から、時代の流れや人間の営みが力強く迫ってきます。
©NIKO NIKO FILM / MOOLIN FILMS / CINEMA INUTILE / CINERIC CREATIVE / FOURIER FILMS
その他台湾つながりの作品
中国や香港に比べると、台湾が制作に携わった作品は先述3作のみと少なめですが、何らかの「台湾つながり」がある作品まで対象を広げるともう数作品あります。
まず「ガラ・セレクション」部門の2作品には、台湾人キャストが出演しています。中国第六世代の人気監督グァン・フー(管虎)の『ブラックドッグ』(原題:狗陳)は、エディ・ポン(彭于晏)の主演作。ちなみに本作には同じく第六世代の鬼才ジャ・ジャンクー(賈樟柯)も俳優として出演しているそう。またルイス・クー(古天楽)主演、ソイ・チェン(鄭保瑞)監督の『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』(原題:九龍城寨之圍城)には、近年香港を拠点に活躍し、台湾で見る機会の少ないリッチー・レン(任賢齊)が出演しています。
また、台湾人ではないですが、台湾作品多数のディーン・フジオカが、太平洋戦争中のインドネシアを舞台にしたマイク・ウィルアン監督の『オラン・イカン』に、日本兵として主演しています。
そのほか台湾でも活躍中のミャンマー人監督ミディ・ジー(趙德胤)の『チャオ・イェンの思い』、『南巫』で金馬奨の新人監督賞とオリジナル脚本を受賞したマレーシア人監督チャン・ジーアン (張吉安)の『幼な子のためのパヴァーヌ』などもありますね。
ちなみに東京国際映画祭には、日本が世界に誇る故・黒澤明監督の名を冠したその名も黒澤明賞というものがあります。世界の映画界に貢献した映画人、映画界の未来を託していきたい映画人に贈られる賞で、開催に先駆け、今年は日本人監督の三宅唱とともに台湾人監督のフー・ティエンユー(傅天余)が選出されました。9月に公開された『本日公休』で、庶民の生活を温かい目線で描いた手法が高く評価され、台湾ニューシネマの伝統を現代に引き継ぐ監督と期待されての授与とのこと。今後のさらなる活躍が楽しみです。
フー・ティエンユー監督
先述した作品のうち『雨の中の慾情』、『黒の牛』、『ブラックドッグ』『オラン・イカン』はチケット販売中(執筆現在)なので、ご興味ある方は今すぐチェック! 映画祭でしか見られない作品も含めて、今週も台湾映画を楽しみましょう〜
<第37回東京国際映画祭 開催概要>
開催期間:2024年10月28日(月)~11月6日(水)
会場:日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区
公式サイト:www.tiff-jp.net
Text:二瓶里美
編集者、ライター。2014年より台湾在住。中華圏のエンターテインメント誌、旅行情報誌、中国語教材などの執筆・編集に携わる。2020年5月、張克柔(字幕翻訳家・通訳者)との共著『日本人が知りたい台湾人の当たり前 台湾華語リーディング』(三修社)を上梓。
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