台湾で最も重要な映画祭の一つ「台北電影節」前編:台北電影節とは?|台湾エンタメ通信
台湾の映画祭というと、台北金馬映画祭(台北金馬影展/TGHFF)が有名ですが、もう一つ、映画ファンの注目度が非常に高い映画祭が先日行われた台北電影節(台北フィルムフェスティバル、台北映画祭)です。そこで今回は、「台北電影節」と「今年の結果発表」を前後編に分けてご紹介したいと思います。
台北電影節とは?
左から、Anong Houngheuangsy、リー・カンション、ツァイ・ミンリャン監督
提供:台北電影節
2024年で26回目を迎える台北電影節は、毎年の夏、台北で開催される映画祭で、最終日には中山堂で台北電影奨の授賞式が行われます。1988年創設の「中時晚報電影獎」を前身とし、94年に「台北電影獎」と改名。96年に台北市政府が主催に加わり、98年、中時晚報電影獎のコンペティション方式に国際映画祭のスタイルを掛け合わせ、現在の台北電影節となりました。
台北電影節のコンペティションにおける最大の特徴は、なんといっても「台湾映画」であること。その点が、中華圏の作品を対象にした金馬奨との違いでもあります。厳密には、文化部が定める認定基準(例えば「監督および主要キャストの4分の1以上が中華民国の身分証を有し、作品の3分の1以上が台湾で撮影されている」など、部門ごとに条件は若干異なる)を満たした作品のみが対象となります。そのため、金鐘奨(ゴールデン・ベル・アワード/GBA)と同様に、より台湾らしさが感じられる賞といえるでしょう。
期間中、約数百作品が上映され、10万人以上の観客を動員する台北電影節は、上映作品の多くが台湾での劇場公開や配給に繋がることから、台湾で最も重要な映画祭の一つに位置付けられています。
コンペティションについて
台北電影奨のコンペティションのカテゴリーは、「長編劇映画」、「ドキュメンタリー」、「短編映画」、「アニメーション」の4つ。授賞式では、各部門の優秀作品賞をはじめ、監督賞、脚本賞、主演男優/女優賞など個人賞を合わせた約20部門で選出された最大5組のノミネートから、それぞれ最優秀者/作品が選ばれます。最高位の賞は、4部門の最優秀作品賞から選出される「百萬首獎」。その名の通り100万ニュー台湾ドルの賞金が授与されます。
2024年のコンペティションには、長編劇映画48作品、ドキュメンタリー49作品、短編映画157作品、アニメーション17作品を含む計271作品が応募され、その中から長編映画15作品、ドキュメンタリー6作品、短編映画5作品、アニメーション5 作品の計31作品がノミネートされました。
選出には、一次選考、二次選考、最終選考という3段階のプロセスがあり、それぞれ国内外から招聘された映画のプロフェッショナルたちによって構成された審査委員がその任を務めます。審査員の中には著名人も多く、今年の一次選考の審査員には、シェリル・ヤン(楊謹華)やアニー・チェン(陳庭妮)、二次選考にはヤオ・イーティー(姚以緹)、リン・ジュンヤン(林君陽)、アン・シュー(許瑋甯)、最終選考には、審査員長としてフルーツ・チャン(陳果)ら国内外の監督や俳優らが名を連ねました。
なお、台北電影奨に並行して開催されている「國際新導演競賽(国際若手監督コンペティション)」も台北電影節の特徴の一つ。2005年に創設された「國際新導演競賽」は、劇映画およびノンフィクション映画の1、2作目を対象にした新人監督のためのコンペティションで、国籍や年齢は問わず、広く国内外から選出されます。台北電影節は、台湾映画人の活躍を奨励し台湾映画の発展に寄与すると同時に、観客により多様な作品と多角的な視点を提供する国際的な側面を併せ持つ映画祭ともいえるでしょう。
Text:二瓶里美
編集者、ライター。2014年より台湾在住。中華圏のエンターテインメント誌、旅行情報誌、中国語教材などの執筆・編集に携わる。2020年5月、張克柔(字幕翻訳家・通訳者)との共著『日本人が知りたい台湾人の当たり前 台湾華語リーディング』(三修社)を上梓。
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