中国鍼ってどんなもの? 歴史や日本鍼との違いを紹介|中国時代劇トリビア #113
シエ・ビンビン(謝彬彬)&ウー・ジアイー(呉佳怡)主演の謎解きラブロマンス時代劇「雲中月~二人だけの約束~」。太医を務めた顧家の娘であるヒロインの沈魚は、医術に長け、時に特殊な鍼を使ってその能力を発揮します。今回はこの作品に登場する“鍼”ついて、探っていきたいと思います!
中国鍼ってどんなもの?
「雲中月~二人だけの約束~」©Hunan Mgtv.com Interactive Entertainment Media Co., Ltd.
鍼治療は、中国だけでなく日本でも行われているのを目にします。体に鍼を刺すのは同じですが、中国鍼・日本鍼などと呼ばれるように、両者は形状が異なる鍼を用いて施術を行います。中国鍼の特徴としては、日本の鍼よりも太く長めであることがあげられます。
中国鍼の歴史は、紀元前200年頃(前漢)から220年(後漢)の頃にかけて編幕されたと推定される、中国最古の医学書『黄帝内経』の一部である『霊枢』に、鍼具の形状と用途について記述されており、現存する最も古い鍼具の実物は、前漢の皇族・諸侯王の劉勝の墓から出土された金鍼とされているそう。『霊枢』に記載される鍼具には「九鍼」とされる九種類の鍼があり、沈魚が携帯する鍼のように、形状も用途も異なるものが揃えられていました。その後、医学の発展に伴い、「九鍼」を基本形として、それぞれの用途にあわせて使用する鍼具は発展を遂げていったそうです。
「雲中月~二人だけの約束~」©Hunan Mgtv.com Interactive Entertainment Media Co., Ltd.
歴史ドラマの中に登場する鍼は、現代の中国鍼と近い形状のものですが、古代の鍼具の中には、刀状の武器をそのまま小さくしたような形状もあり、鍼とは言えない大きさのものもありました。これは、古来中国の観念として、武器や宝剣、腰刀が邪気を払う力があるものだとされていたことと、人が病を患うときは“鬼邪が中る(あたる)(中る=毒気などにあたるの意)”ためだとされ、武器や宝剣を模した鍼で鬼邪が通った部位(穴=経穴)を刺せば、鬼邪をやっつけて(瀉血(しゃけつ)などさせて)病を治すことができる……と考えられたからなのだとか。
また、火も鬼や邪を追いはらう力があるとされ、先端を炙るなどして熱を加えた鍼を刺す火鍼法の他、艾(もぐさ)を置いて燃焼させ、刺激を加える灸法(お灸)も併用されてきました。灸法で艾が使われるのは、燃えやすいということだけでなく、邪気を払う風習でも使われるヨモギを用いることで、より鬼や邪を払う効果があると考えられたからだという説も。このように、鬼邪を追い払うという観念が、鍼法や灸法が生まれた初期の原因の一つと考えられるそうです。
「雲中月~二人だけの約束~」©Hunan Mgtv.com Interactive Entertainment Media Co., Ltd.
【参考文献】
主編者:黄龍祥 監訳者:荒川緑 訳者:岡田隆 小林剣二 左合昌美 『中国鍼灸史図鑑 第2巻』 科学出版社
DVD-BOX1:発売中
DVD-BOX2:2023.11.8(水)発売 各14,300円(税込)
※レンタルリリース中&各社動画配信サービスにて配信中
発売・販売元:エスピーオー
©Hunan Mgtv.com Interactive Entertainment Media Co., Ltd.
HP:https://www.cinemart.co.jp/dc/c/unchugetsu.html
この連載では、中国時代劇を見て感じるちょっとした不思議や疑問を解説します。
Text:島田亜希子
ライター。中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆する他、中文翻訳も時々担当。Cinem@rtにて「中国時代劇トリビア」「中国エンタメニュース」を連載中。『中国時代劇で学ぶ中国の歴史』(キネマ旬報社)『見るべき中国時代劇ドラマ』(ぴあ株式会社)『中国ドラマ・時代劇・スターがよくわかる』(コスミック出版)などにも執筆しています。
記事の更新情報を
Twitter、Facebookでお届け!
Twitter
Facebook