古代中国の医家(医者)の種類 ~太医から流しまで~|中国時代劇トリビア #114
シエ・ビンビン(謝彬彬)&ウー・ジアイー(呉佳怡)主演の謎解きラブロマンス時代劇「雲中月~二人だけの約束~」。劇中では、顧家と賀家という2つの医家の対立が描かれます。
古代中国では、医家(医者)と一言で言っても大きく3つのグループが存在したそう。この3種類の医家を、中国ドラマの中に登場するお医者様のスタイルに当てはめて紹介します。
御用医家
「雲中月~二人だけの約束~」ではヒロインの父親が太医を務めていたが、冤罪で処刑されてしまう。
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皇室や朝廷に仕えて医療を行う「御医」「太医」「官医」といわれる御用医家で、朝廷の俸禄を受ける。秦の始皇帝の時代から上級官職として太医令・丞という役職があり、これが中国の太医制の始まりなのだとか。役割としては、宮廷の医・薬・衛生の管理、皇室・役人の病気の治療などを担当。
ドラマ「雲中月」に登場する顧家は、皇室との関わりが深い医家だったので、このグループに入る。ちなみに、南朝では徐家が代々医家として有名で、一族の多くが御医を務めたとか。徐家=医療に関係がある家系と覚えておくと、南朝のドラマを見るときに役立つかも⁉
市医の医家
「明蘭~才媛の春~」では、幼い明蘭が母を救うため医者を呼びに行く。
© Daylight Entertainment CO.,LTD
依頼を受けて診察する医家で、病人が出た家の者がお金を払い、医家のところに訪問して診察してもらったり、迎えをよこして病人宅に往診をしてもらう。
ドラマで裕福な家の主が「お医者様をすぐに呼んで!」という場面で登場するタイプ。実は古代では最も多いスタイルの医家で、市場町に定着し決まった診療所があり、薬局を兼ねたものもあったそう。
流医の医家
自ら患者を探して各地を巡る、いわゆる“流し”スタイルの医家で、巧みな話術などで患者を説得し、治療をうけさせてお金をもらう。患者を求めて様々な土地や貧民街などを渡り歩くことから、「走歩医」「流医」といったそう。
患者をその気にさせる話術やパフォーマンス技術を持ち、仲間同士で特殊な専門用語を使ったり、市医が使わない医療技術を把握したり、秘術の治療方法や門外不出の伝授書なども持つ彼らは、江湖の世界の神秘性を感じさせ、「江湖郎中」と称されるとも。
彼らの治療は「早い(即効性がある)」「安い(薬代が安く入手しやすい)」「便利(治療が便利)」が売り。危険性と隣り合わせではあるけれど、安くて簡単に素早く病を治してくれるのはまさに神医!……ということで、ドラマではこのタイプの医家が神医として登場するのも納得できます。チョン・イー、ツォン・シュンシーらが出演した武侠ドラマ「蓮花楼(れんかろう)」では、チョン・イーがこのタイプのお医者様を借りの姿に。
時代によってはさらに色々なお医者様が登場するので、作品ごとにお医者様の役割に注目してみても面白いかもしれませね!
【参考文献】
著者:張志斌 李経緯 鄭金生 訳者:湯野基生 『図説中医学入門 中国伝統医学史話』 科学出版社
著者:李経緯ほか 訳者:及川佳織 『図説中医学入門 歴代王朝の宮廷医療』 科学出版社
DVD-BOX1:2023.10.11(水)発売
DVD-BOX2:2023.11.8(水)発売 各14,300円(税込)
※2023.10.4より、レンタル開始&各社動画配信サービスにて配信開始。
発売・販売元:エスピーオー
©Hunan Mgtv.com Interactive Entertainment Media Co., Ltd.
HP:https://www.cinemart.co.jp/dc/c/unchugetsu.html
この連載では、中国時代劇を見て感じるちょっとした不思議や疑問を解説します。
Text:島田亜希子
ライター。中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆する他、中文翻訳も時々担当。Cinem@rtにて「中国時代劇トリビア」「中国エンタメニュース」を連載中。『中国時代劇で学ぶ中国の歴史』(キネマ旬報社)『見るべき中国時代劇ドラマ』(ぴあ株式会社)『中国ドラマ・時代劇・スターがよくわかる』(コスミック出版)などにも執筆しています。
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