中国時代劇に登場する「仮死状態にする薬」は実在した?|中国時代劇トリビア #111
過去の事件をきっかけに、秘密を抱えた4人が協力し事件を解決していく謎解きラブロマンス時代劇「雲中月~二人だけの約束~」。今回はこの作品に関する、気になる“アレ”について探っていきます!
中国時代劇に登場する「仮死状態にする薬」は実在した?
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「雲中月~二人だけの約束~」で主人公・沈魚は、蝕骨草の液を染みこませた紙を利用して仮死状態となります。さて、古代中国に仮死状態にする薬って本当に存在したのでしょうか?
この場面では植物の名前が出ているので、トリカブト、曼殊沙華など、毒性の強い植物の何かを摂取することで、意識が朦朧としたり、中枢神経の麻痺、心臓麻痺…ということが起きるのは理論的にはあり得る設定。「一歩間違えば…」と斉璋と韓枕雲が使い方を心配するところも、少量であれば微弱な毒でも、摂取量を間違えれば本当に死に至るということだと想像できます。
仮死状態といえば、尸厥(しけつ)という状態もドラマなどには登場しますね。尸厥は、死んだように見えるが脈は動いているという状態で、「魂が抜けた」というような表現をされることも。こちらは陽脈が落ち込んで、陰脈が上で争い、気が閉塞したために起きたもの…ということで、体の中の気の流れが影響を与えた現象のようです。
古代中国・春秋戦国時代の伝説的な医者、扁鵲(へんじゃく)は、各地を放浪し、その地で必要とされる医療に何でも対応できたオールマイティーな医師と伝えらえていますが、特に視診と脈診に優れていて、ある国の太子の死を尸厥と判断し、鍼治療によって意識を戻し、その後、煎じ薬を与えて陰陽を調整し20日程度で完治させたという逸話が残っているそうです。
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仮死状態で心臓を入れ替える⁉ 驚きの治療法とは
この扁鵲の逸話にはもう一つ、驚きの治療が!
あるとき、魯公扈、趙齊嬰の2人が病を患い扁鵲の元を訪れ、一緒に治療をしてほしいと診察をうけます。2人の診察をした扁鵲は、「公扈は意志は強いが体が弱く、狡猾だが決断力がない。齊嬰は意志が弱いが体は強い、策は持たないがこだわりは強い。2人の心臓を入れ替えたら、きっと平衡が保たれて病も良くなる」と診断します。そして2人に薬の入った酒を飲ませて数日間仮死状態にし、その間に開胸手術をして2人の心臓を入れ替えました。その後、神薬を与えて2人を目覚めさせ、すっかり健康になった魯公扈、趙齊嬰は、扁鵲に別れを告げて家路についたそうです。
扁鵲が用いた薬が何なのか? は、謎ですが、同じく神医で知られる華佗も「麻沸散」と呼ばれる麻酔薬を使って手術を行ったと伝えられており、それらもまた生きる人間を仮死状態にさせる薬の一つと言えるのかもしれないですね!
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Text:島田亜希子
ライター。中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆する他、中文翻訳も時々担当。Cinem@rtにて「中国時代劇トリビア」「中国エンタメニュース」を連載中。『中国時代劇で学ぶ中国の歴史』(キネマ旬報社)『見るべき中国時代劇ドラマ』(ぴあ株式会社)『中国ドラマ・時代劇・スターがよくわかる』(コスミック出版)などにも執筆しています。
DVD-BOX1:2023.10.11(水)発売
DVD-BOX2:2023.11.8(水)発売 各14,300円(税込)
※2023.10.4より、レンタル開始&各社動画配信サービスにて配信開始。
発売・販売元:エスピーオー
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HP:https://www.cinemart.co.jp/dc/c/unchugetsu.html
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