埋まらない喪失感、その先の“愛”の行く末…『親愛なる君へ』。そして台湾のLGBTQ映画たち <前編>
Cinem@rtでは2か月連続で映画を特集中! 7月のテーマは「台湾映画」! 今年、日本では6月~8月に多くの新作台湾映画が公開に。まさに台湾映画を味わうべき今年の夏、新作映画を切り口に台湾映画を楽しむコラムやインタビューをお届けします。
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日本で『親愛なる君へ(原題:親愛的房客)』が劇場で見られるなんて、なんと幸せなのだろう!
最近Netflixで大量の新作台湾映画が配信され、それはそれで嬉しいのだが、そうなると劇場の大きなスクリーンで見ることができなくなる。こういったジレンマを感じている人は、私だけではないはずだ。
去年の6月、台北電影節(台北映画祭)で本作が特別上映されるというニュースを見て、チェン・ヨウジエ(鄭有傑)監督とモー・ズーイー(莫子儀)が14年ぶりにタッグを組むというだけでも、興奮した。
その14年前の『一年の初め』が日本で公開された2009年、東京国際映画祭で『陽陽(ヤンヤン)』が上映され来日したチェン・ヨウジエ監督は、シネマート新宿に『一年の初め』の初日舞台挨拶に駆けつけたことがある。一緒に登壇したのはモー・ズーイーではなく『陽陽』のホアン・ジエンウェイ(黄健瑋)だったけれど、日本語が堪能な監督が通訳も兼ねて進行していたことを思い出す。
『親愛なる君へ』のチェン・ヨウジエ監督は日本語堪能な俳優
チェン・ヨウジエ監督は、俳優としても長澤まさみが主演したドラマ「ショコラ」ほか映画でも色々な作品に出演しているので、顔を見たらあっ!と思われる方も多いのでは? 一青妙の原作本「私の箱子」+「ママ、ごはんまだ?」が舞台化された「時光の手箱:我的阿爸和卡桑」では、一青妙、台湾で活躍する日本人女優の大久保麻梨子と共に、メインキャストを務めた。
チェン・ヨウジエ監督が流暢な日本語を話すのは、日本語が堪能なお父さんの影響。台湾で日本の出版物の翻訳をしたり、2019年の金馬影展(金馬映画祭)で映画人を対象にした講座に永瀬正敏が登壇した時は、通訳兼司会をこなしたほどだ。
そしてトム・リン(林書宇)監督と仲が良く、デビュー作の短編『海岸巡視兵』の新兵いじめの上官役や、『九月に降る風』では警官役などで出ている。『陽陽』の撮影中、チェン・ヨウジエ監督のご家族に不幸があり、一日だけ現場を離れなければならなかった時、トム・リン監督に助っ人を頼んだことがあるそうだ。このエピソードを話してくれたチェン・ヨウジエ監督は、「どのシーンを彼が撮ったか、絶対にわからないと思う」と自信たっぷりに笑っていた。
<次のページ:『親愛なる君へ』その舞台と俳優たち>
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