アジア映画研究者・松岡環さんが教えてくれる、おすすめカルチャー×スイーツ【インド編②】
Cinem@rt 10月の特集テーマは「アジアンスイーツ」。ですが、アジアンカルチャーの“好き”を応援するCinem@rtらしく、スイーツとカルチャーを一緒に楽しむ3つの質問を、有識者の方々にしてみました。
Q1「代表的スイーツと一緒に楽しみたい、おすすめカルチャー作品は?」
Q2「代表的スイーツからイメージする人は?」
Q3「最新注目作と一緒に楽しむ、おすすめおやつは?」
どんなスイーツ&カルチャーの出会いがあるでしょうか?
【教えてくれた人】松岡環さん(アジア映画研究者)
インド映画の紹介と研究に従事し、様々なインド映画の上映に協力している。『ムトゥ 踊るマハラジャ』『きっと、うまくいく』『パッドマン 5億人の女性を救った男』等、字幕も多数担当。
※お写真で松岡さんの右隣にいるのはボリウッドスターのヴィッキー・コウシャルさん。日本では『SANJU/サンジュ』『URI サージカル・ストライク』で彼の演技を観ることができます。
まず…インド編のスイーツ代表は グラーブ・ジャームン
牛乳と小麦粉で出来たドーナツをシロップに浸した、世界で一番甘いと言われるインドのスイーツ。日本では缶詰めで売られていたりもする。
<グラーブ・ジャームン>と一緒に楽しみたい、おすすめカルチャー作品は?
インド映画『ガリーボーイ』(2018)
<グラーブ・ジャームン>は、私のイメージからすると、下町の食堂やお菓子屋の店頭で、大きな鉄鍋にたっぷり入った蜜の中にぷかぷか浮かんでいる揚げ団子。牛乳と小麦粉から作った本体はふわっとしているのですが、揚げた表面は焦げ茶色でなかなかに食べ応えがあり、しかも脳天パーになるぐらい甘い蜜がたっぷりしみ込んでいるという、個性的な女の子みたいなスイーツです。
名前の元は木の名前で、それになる実がこのお菓子の形とそっくりなことから命名されたそうですが、「グラーブ(バラの花)」がペルシャ語由来なので、イスラーム教徒の女の子を連想させます。
というわけで、真っ先に浮かぶのが『ガリーボーイ』のヒロインであるサフィナ(アーリアー・バット)の姿。スラム出身でラッパーになっていく青年ムラド(ランヴィール・シン)が主人公の『ガリーボーイ』ですが、本作を目が覚めるようなユニークな作品にしているのは、彼の恋人サフィナの存在です。美人なのに暴力的で、恋を勝ち取るためにはウソも平気な下町の女の子。<グラーブ・ジャームン>といい勝負です。(松岡さん)
<グラーブ・ジャームン>からイメージする人は?
シャー・ルク・カーン(俳優)
デリー出身であり、イスラーム教徒であること。グラーブ・ジャームンが一番ピッタリなのはイスラーム文化色の強いデリーの町で、デリーのストリートフード・スイーツとしては、ジャレービー(タネを油の中に絞り出して蚊取り線香みたいな形状にし、揚げた後蜜に漬ける)と共にグラーブ・ジャームンが代表格です。
インドには地方地方を代表するスイーツがあるのですが(例えば、シュリカンドというヨーグルトクリーム菓子はムンバイなどのマハーラーシュトラ州、ラスグッラーという蜜漬けのカッテージチーズ団子はベンガル地方、などなど)、グラーブ・ジャームンはデリーのイメージです。
シャー・ルク・カーンはボリウッドスターには珍しく、デリー生まれでデリーが本拠地のインド国営テレビの俳優としてキャリアをスタートさせた人です。聞くところによると本人は、グラーブ・ジャームンよりアイスクリームの方が好きだそうですが、デリーの下町チャーンドニー・チョークでグラーブ・ジャームンを立ち食いしていそうなイメージから選びました。(松岡さん)
※動画は、シャー・ルク・カーン主演映画『Chennai Expres(邦題:チェンナイ・エクスプレス 〜愛と勇気のヒーロー参上〜)』OFFICIAL TRAILER
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