「戦神」ってどんな神様?|中国時代劇トリビア#47
桃林で育てられた医仙の娘・霊汐と5万年の眠りから覚めた戦神・九宸との切ないラブ・ストーリーが話題のドラマ「運命の桃花~宸汐縁~」。この物語に登場する戦神って、一体どんな神様なのでしょうか?
中国神話に登場する戦神としてよく知られているのは「蚩尤(しゆう)」と言う神様で 、中国神話中で最も恐れられた不死身の戦神とも。蚩尤は古代中国の伝説に登場する民族の総称の一つである九黎の首領であり、勇猛果敢で戦争が非常に強く、戦いで必要となる戦斧、楯、弓矢など優れた武器を発明したといわれています。
獣身で銅の頭に鉄の額を持つとか、頭に角がある、足が8本で足の指が9本から10本あったとも言われており、見た目もかなりいかつく、美神と呼ぶには少し縁遠い姿形で表現されることが多いようです。性格は邪であり、その凶暴・貪欲さはフクロウにたとえられ、反乱というものをはじめて行った荒ぶる神として挙げられています。蚩尤は炎帝と大きな戦いを繰り広げ、黄帝の助けを求めた炎帝は連合軍を組んで対抗、蚩尤は81人の兄弟たち(一説によると72人とも)と共に黄帝と天下を争いました。
貴州省の丹寨では、ミャオ族の祖先といわれる蚩尤を祭る、全国でも唯一の「祭尤節」が今も行われています。
『史記』「封禅書」では蚩尤は八神のうちの「兵主神(ひょうずのかみ)」に相当するとされています。この兵主神、実は日本にも祀られているのです。蚩尤神は日本の古墳時代に国内に入り、伝承したのは朝鮮半島の新羅から渡来豪族として日本に渡ってきた秦氏といわれているとか。
日本では兵主神社(兵主大社)の祭神を指し、実際にまつられているのは大己貴命(おおなむちのみこと) (大国主神)や素戔嗚尊(すさのおのみこと)などで、兵庫県日高町・黒田庄町・春日町などの兵主神社が知られています。「兵主」の神を祀る神社は日本全国に約50社もあり、遠い存在に感じていた中国の戦神が、実は日本にも縁が深かったというのには、ちょっと驚きを感じたりもしますね。
ドラマではこの屈強な戦神像を大胆にアレンジして、九宸のキャラクターを誕生させました。九宸が身に着ける鎧から鉄の塊のような硬さと重厚さを失くすことで、強さの中にある心の温かさを表現し、九宸の宮殿の柱を青いものにすることで、戦神の孤独さを示したそう。また、宮殿の庭に赤い花を咲かせる木が1本だけあるのは、九宸が強い熱情を秘めていることを暗示しており、九宸を深い優しさと悲しみを秘めた神として描きだしているそうです。
Text:島田亜希子
ライター。中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆する他、中文翻訳も時々担当。『台湾エンタメパラダイス』『中国時代劇で学ぶ中国の歴史』(キネマ旬報社)にて執筆記事掲載中。
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