【きゅんとあじあ】台湾映画memo ルゥルゥ・チェン主演の青春映画『若葉のころ』明日より公開!
ある日ふと目にしたTVコマーシャル。
数人の男子高校生が悪ふざけをしている。誰もが経験したような日常が細切れに映し出される。そのちょうど中間くらい、「わけもなく盛り上がる瞬間と 急にやってくる冷静も...」というナレーションをバックに、電車のなかで眠る仲間たちの中でたったひとり、窓の外を見つめる少年がいた。私はその一瞬の静寂にこそ、たまらなく青春を感じていた。(「モンスターストライク」CM 「くだらないこと篇」)
このCMを見るたびに思い出す歌がある。
大西洋平というシンガーソングライターによる「雨上がりの街へ」という青春ソングだ。その歌は、少年たちが雨上がりの街へと駆け出してゆくシーンから始まる。そしてサビへ。
「でたらめが やけにしみる坂道で
僕らは 変わってゆくことを抱きしめた
あきれるほど無駄にした1秒たちが
夕焼けに染まって もらい泣きしているよ」
特にこの、「あきれるほど無駄にした1秒」という部分に、胸の奥がぎゅっとなる。思い出にもなり得ないような、どうしようもなく時間を持て余していたあの頃が、こんなにも懐かしいのはなぜだろう。
台湾映画『若葉のころ』にも、この一節を思い出させるワンシーンがある。
1982年のとある高校。少年たちが指導室に忍び込み、大量の"ある物"を持ち出し屋上へと駆け上がる。少年たちは日頃の鬱憤を晴らすように、色とりどりの"それ"を、夕焼け空に向かって次々と飛ばしてゆく。それは彼らの、ささやかな復讐。数年後には楽しい思い出話になるような、青春の1ページ。この映画の中でも特に印象的で感動的な、美しいシーンだった。しかしこれがやがて、主人公たちの初恋を大きく左右する事件への伏線となる......
17歳、初恋...記憶の中の君に 僕はもう一度 恋に落ちた-
台北に住む17歳の女子高生バイは、離婚した母と祖母との3人暮らし。楽しい学校生活を送っていたが、ある日、母のワンが交通事故で意識不明の重体になってしまう。さらに、自分に気があるそぶりの男子生徒イエと親友ウエンとの関係が彼女の心を追い詰めてゆく。途方に暮れる中、バイは母のパソコンに1件の未送信メールを見つける。「お元気ですか? まだ私を覚えていますか?」-それは母が初恋の相手リンに宛てたメールだった。自分と同じ17歳の頃の母の青春に想いを馳せるバイは、母に代わって、リンに「会いたい」とメールを送る...
1971年の大ヒット作『小さな恋のメロディ』の挿入歌として知られる、ビージーズの名曲「若葉のころ」の旋律にのせ綴る、眩しくも切ない初恋物語。新緑と雨上がりの煌きが似合う台北の美しい風景の中で描かれる2013年のバイの青春と、ノスタルジックな光の中で描かれる1982年の母の初恋が交錯し、時を経ても変わらない青春の疼きを紡ぎだしてゆく。
本作を細やかな描写でまとめ上げたのは、これが長編映画デビューとなったジョウ・グータイ監督だ。ジェイ・チョウ(周杰倫)やメイデイ(五月天)などのミュージックビデオやCMで実績を積んできたというだけに、とにかく映像が美しい。十数年温め練り直してきたという物語もまた、小さなワンシーンやセリフが幾重にも交差しながら、深い感動へと導いてくれる。
初日には監督の舞台挨拶が決定しているので、是非とも駆け付けてほしい。
それにしても、台湾映画は次々と青春映画の傑作を送り出してくる。ここ15年ほどの間でも、『藍色夏恋』『九月に降る風』『あの頃、君を追いかけた』、そして昨年からアジアを席巻中の『我の少女時代』などなど。ちょっと広げれば『GF*BF』や『モンガに散る』だってあるし、17歳の初恋という点では『僕の恋、彼の秘密』もか? とか、挙げ出したらきりがない。
そのすべてに共通するのが、魅力的な新人俳優たちとの出会いだ。『藍色夏恋』のチェン・ボーリン、グイ・ルンメイという奇跡の発掘を筆頭に、その後もたくさんの俳優たちが注目されてきた。青春映画を観るときは決まって、「グイちゃんやボーリンのような出会いがありますように」と期待してしまう。では、『若葉のころ』はどうか?
本作で、ヒロインのバイと、17歳の頃の母ワンの二役を演じるのは、最注目の新星ルゥルゥ・チェン(程予希)。台湾ドラマ「美男〈イケメン〉ですね~Fabulous★Boys」で本格的女優デビューを飾ったシンデレラガールだ。その後は「GTO TAIWAN」に出演したり、雑誌Hanakoの表紙になっていたので、印象に残っている人も多いはず。本作でも、ふたつの時代に生きる17歳の少女の純粋、不器用さや葛藤を、生き生きとそして時に激しく演じきっている。本作の魅力を一気に引き上げているのが彼女だと言っても過言ではないだろう。その後は、台湾ロックレコードのヒット曲をドラマ化した「滾石愛情故事‐?威的森林」や、SpeXialのエヴァンらと共演の「終極遊?」などドラマが続いているようだが、スクリーンでの再会も期待したい。
そんなバイに想いを寄せるイエ・チョンシューを演じているのが、アンダーソン・チェン(鄭?達)。ファーストシーンから思わず「かっこいい!」と思ってしまう。女の子なら絶対好きな、ちょっと悪そうな感じ。でも、バイをひたすら目で追ったり、後をつけたり、少年っぽさが可愛い。本作以降は、『時の流れの中で』『深海Blue Cha-Cha』でお馴染みのチェン・ウェンタン(鄭文堂)監督作品であり、『共犯』『The Kids』のウー・チエンホー(巫建和)、『オーロラの愛』『欠けてる一族』のリン・ボーホン(林柏宏)らの出演で注目されたドラマ「燦爛時光」への出演を果たしている。
母ワンの初恋相手、リン・クーミンの若き日を演じるのがシー・チーティエン(石知天)。
『軍中楽園』に出演後、『私の少女時代』では、主人公シュー・タイユーの人生に大きな影を落とす原因となった、重要な役を演じた。本作では主役級に大抜擢。優等生なのに悪ガキ。乱暴なアプローチもまたいい。観ているうちにどんどん惹きこまれる。彼の目線や行動、感情は、"青春"を最も体現しているといえるかもしれない。夏に台湾で公開予定の青春ラブコメディ『極樂宿舍』では、堂々の主役を務めている。
3人ともそれぞれに魅力的で、彼らの青春にみるみる感情移入してしまう。今後の活躍にも期待したい。そんな3人からのコメントが、公式Facebookにて公開中。可愛いので是非チェックしてほしい。
さて、大人たちも負けてはいない。特に台湾ポップス、台湾エンタメファンにはお楽しみがいっぱいだ。成人したリン・クーミンに、ジョニ・トー監督作品で俳優としての評価も高い、台湾を代表するポップシンガー、リッチー・レン(任賢齊)。大人になりきれず愛し抜く自信も持てない、ちょっとくたびれかけた中年男を見事に演じている。バイの母ワンには、「二人の王女」のアリッサ・チア(賈靜?)。そしてリン・クーミンの恋人キキには、『花蓮の夏』のケイト・ヤン(楊淇)が出演!
特別ゲストがまたにぎやか。イェン・ジュエ(嚴爵)、元無印良品のヴィクター・ウォン(品冠)、フィービー(黄嘉千)、MP魔幻力量。どこに出演しているかは、観てのお楽しみ!
もうひとつの重要な主役といえるのが、ビージーズの「若葉のころ」をはじめとする音楽だ。
映画音楽を手掛けるのは、台湾金馬奨で最優秀音楽賞を受賞した『深海Blue Cha-Cha』や、『ダブル・ビジョン』『練習曲』などを手掛けてきたシンシン・リー(李欣芸)。その上質な旋律がエンドロールにいたるまで沁みわたり、心疼く青春時代へと誘ってくれる。
「返事を待っているから...」
私たちもまた、出来ないまますれ違ってしまった「返事」があったかもしれない。
この物語の先で、リン・クーミンは、ワンは、バイは、答えにたどり着くことができただろうか?
(文:村野奈穂美)
■若葉のころ
5月28日(土)、シネマート新宿・シネマート心斎橋ほか全国順次公開
[原題: 五月一号 英題: FIRST OF MAY]
[2015年/中国語・台湾語/110分]
製作総指揮:リャオ・チンソン(廖慶松)?
監督・原案:ジョウ・グータイ(周格泰)
脚本:ユアン・チュンチュン(袁瓊瓊)
出演:ルゥルゥ・チェン(程予希)/リッチー・レン(任賢齊)/シー・チーティエン(石知天)/シャオ・ユーウェイ(邵雨薇)/アンダーソン・チェン(鄭?達)/アリッサ・チア(賈靜?)
提供・配給:アクセスエー/シネマハイブリッドジャパン
配給協力:ニチホランド
cSouth of the Road Production House
映画『若葉のころ』オリジナル予告?80年代編
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