【私の履歴書・延 智美(ヨン・ジミ)】第6回 映画を通じた日韓交流
私の履歴書~Profile No.2~
「通訳は裏方の仕事だから、私が表に出るなんて!」と、恐縮されていた延さん。しかし、いざインタビューが始まると、通訳をされているのは勿体ないほどの滑らかな語り口!凡人には決して経験できない延さんの半生に、身を乗り出して聴き入ってしまいました。延さんのインタビュー、必見です。
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これまで様々な文化・エンターテイメントの分野で通訳をしてきましたが、なかでも映画交流には強い思い入れがあります。
釜山映画祭で通訳をしたことがきっかけでシナリオや字幕の翻訳を手がけるようになり、映画祭で日韓の様々な映画人に出会えたことで、仕事の幅が広がっていきました。
そんなご縁で、日仏韓合作映画であるポン・ジュノ監督の『TOKYO!』(シェイキング東京)にも参加するという得がたい体験をすることが出来ました。
この作品は、監督とスクリプター以外、キャスト、スタッフは全員日本人という構成でしたので、短編ではありましたが、映画製作の全過程に通訳・翻訳としてかかわりました。通訳・翻訳は基本的に一人でする孤独な作業ですが、数十人の共同作業である映画の仕事は、苦楽を共にする仲間がいるだけに、達成感、喜びの大きさも数十倍でした。また、ポン・ジュノ監督と主演の香川照之さんだけでなく現場のスタッフに至るまで、日韓のクリエイターがお互いをリスペクトしながら物づくりをしていく姿は感動的で、ああ、これこそが、私が長年見たいと願っていた光景なんだ、とも思いました。
映画の仕事で印象に残っていることはたくさんありすぎて、一日でも語りきれないかもしれません(笑)。韓流ブームの影で日本の皆さんにはあまり知られていないかもしれませんが、2004年から文化庁がソウルで開催した大規模な日本映画祭がありました。これには立ち上げから参加し、韓国の観客、映画人に愛される映画祭となったので、日本の文化を韓国に紹介するお手伝いができたことは嬉しかったですね。
また、ソウルで「黒澤明生誕100周年」「増村保造&市川崑特集上映」が開催されたときのことですが、ゲストとして2010年に仲代達矢さん、2013年に若尾文子さんが来韓されました。どちらも会場は若い映画ファンでいっぱいで、トークのときの盛り上がりが、まるで韓流スターのファンミーティングのようでした。お二人とも80歳を超えるご高齢であるにも関わらず、セクシーでチャーミング!お話も本当に面白くて、人間的な魅力にあふれ、日本人の品格を体現しているように思いました。ティーチインの終了後にはサイン会で長蛇の列ができていて、この時も、時空、国境、世代を超えて人と人を結びつける、映画の力を実感しました。
(第7回へつづく)
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