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【韓流お仕事図鑑】あなたのもとに韓国ドラマが届くまで<買付編 #2>




★★今までの「あなたのもとに韓国ドラマが届くまで」はこちら★★


普段私たちが見ている韓国ドラマ。韓国で制作されたドラマがどういう道のりを経て、日本でテレビ放送されたりDVDになっていたりするかご存知ですか?この連載は、韓国ドラマを日本のお茶の間に届ける過程に携わる人たちにインタビューする、韓流お仕事図鑑です。

<買付編>エスピーオー 森丘直子さん
第2回 「冬ソナ廃人」




韓国ドラマが日本にやってくる、最初の一歩がこの「買付」という仕事。実際に買付を担当しているエスピーオー・森丘直子さんに、「買付」のお仕事についてお話をお伺いしました。
第2回の今回は、韓国ドラマの買付の仕事についた経緯についてお伺いします。「ヨン様」「冬ソナ」「韓流ブーム」...初期韓ドラファンは懐かしく、現韓ドラファンも思わず共感のエピソード満載です!

<買付編>
第1回 「買付の仕事ってなんですか?」 
第2回 「冬ソナ廃人」
第3回 「韓流スターたちの素顔」

**********

―森丘さんがこの仕事についたきっかけはなんだったんですか?

もともと、私イギリスに留学してたんです。2004年に日本に帰ってきたら、日本が空前のペ・ヨンジュンブームだったんですよ。

私2年間イギリスにいて、韓国ドラマなんて見たことなくて。韓国に興味もなかったし、行ったこともなかった。でも映画は好きで、もともと映画のバイヤーをしたかったので、『シュリ』『JSA』だとかは見ていたわけです。でもドラマにはまったく関心が無かった。

ところが、帰ってきたら日本がペ・ヨンジュン一色になってた。しかも、2004年4月にペ・ヨンジュンが初来日したんですよ。その時に羽田空港に5000人がきてパニックになったんですね。お迎えの車からサングラスを掛けた彼が手を振っている写真が朝日新聞の一面を飾ったんです。

私、それを見たときに、彼の人気を実感したんですよ。その時点で「冬ソナ」は見てなかったけれど、現象としては興味が湧いたんです。「日本の中高年女性が、彼に魅かれるのはなぜか?」って。「これは見てみよう」と思い、ゴールデンウィークにDVDをレンタルしたんです。

そしたら2話ぐらいでどっぷりはまっちゃって。先が気になって他のことに手がつかない。続きを借りにいったら貸し出し中。ゴールデンウィークだったし(笑)でも「いますぐ先を見たい!」という気持ちを抑えられず、レンタル店の隣りの新星堂で、いきなりDVD-BOX1、2を大人買いしました


―ええええ!たった2話でそこまで!?

もう「見ないと死ぬ~」って思って(笑)。しかも留学から帰ってきたばっかりで、お金もない。なけなしの貯金をはたいて何の躊躇もなく36,000円ぐらいをポンと出しちゃった。サントラも買っちゃったんですよ(笑)。何の後悔もなかったですね。それで徹夜で一気に全20話を視聴。そのあと廃人になりました (笑)。


―あはははは!笑

ひたすらネットで「ペ・ヨンジュン」とか「冬ソナ」を検索する日々が始まったんです。

それでショウタイムを見つけて入会したら、「冬ソナ」の韓国版が配信されてて。見たらカットされたシーンがいっぱいあって。「これは完全版がほしい」と。それで韓国から韓国版のDVDを輸入したり...と今では考えられないぐらいのフットワークの軽さで、どんどん仕事をこなしてました(笑)

ショウタイムで、「愛の群像」とか、ペ・ヨンジュンの出演の過去作をどんどん見つけちゃって。もう毎晩、仕事終わるとすぐ帰ってきて、一刻も早くショウタイムを見なくちゃという生活(笑)。毎日睡眠不足で死にそうでした。「もう寝なきゃ」って思うけど、続きが見たくて寝られず、気づくと3時、4時ということがよくありました。


―そのころからネット配信でドラマを視聴してた、って結構時代を先取りですね。

レンタル店に韓国ドラマが少なかったんです。映画ならたくさんあったので、片っ端から見ていたけど。
と同時に、ペ・ヨンジュン氏が話している言葉を知りたくなって、2004年すぐさま韓国語教室に通いだしました。そこで同志のおばさまたちと知り合って。当時、私30歳そこそこで一番若かったので、みんなに可愛がって頂きました。週に1回そこに行ってみんなでペ・ヨンジュン氏の話をするのが、何より楽しかったな~。

そうこうするうちに留学以前に勤めていた会社の社長さんが、エスピーオーを紹介してくれて。「国際部で人を募集してるから、興味ある?」って。

私、その時にすでにKNTVにも加入して、毎日狂ったようにドラマを見てました。





―つまり、ヨン様以外にも他の韓国ドラマも見てみよう、って思ったわけですね。

そう!韓国ドラマって面白い、って思って。毎晩毎晩見てたわけですよ。いち早くスカパー申し込んで、勝手にアンテナつけて。実家は一軒家だったんだけど、スカパーを見るために、無断で壁に穴開けました。家族からしたら、ある日突然工事の人が来て、「ガガガガガ」と壁に穴開けるから、ビックリしたでしょうね(笑)。


―あはははは!家族はびっくりですよね!イギリスから帰ってきた途端、韓国ドラマばっかり見て。しかも壁に穴開けて(笑)

その時は家族に隠れて、夜に見てたんですよ。


―どうしてですか?

だって毎晩毎晩、狂ったようにドラマを見てるんだから。しかも同じドラマを何回も(笑)。お金使ってイギリスに行かせたのに、定職にもつかず。。。親には申し訳ない気持ちでいっぱいでした・・・。


―全然英語と関係ないですもんね。

そう。しかも私は戻ってきたばっかりなのに「韓国に留学にいきたい」って思ってて。「なんでイギリスに留学しちゃったんだろう」って、既に後悔の日々(笑)。
その頃、韓流ムックが出始めて、「もっと知りたい!韓国TVドラマガイド」のvol.1~3が冬ソナ特集だったから、もちろんすばやく購入(笑)。


―そこまでのめりこんだ理由ってなんだったんですか?

初めてだったんですね、ああいうドラマ。初恋にフォーカスした、本当の純愛。しかも、それが私にとっては「海外ドラマ」だった。日本にはない異国情緒があり。韓国に行った経験もなかったんですが、「こんなにおしゃれだったんだ」って、ビックリ。トレンディだったんですよ。


―韓国のイメージがほとんどなかった状態で。

そう。しかもあれ、マクチャンドラマですよね。ありえない展開の連続じゃないですか。交通事故があって、異母兄妹疑惑もあり、記憶喪失もあって。


―大映ドラマみたいな。

大映ドラマ好きだったので、素質はあったと思います。映画好きだったのに、韓国ドラマの買付やるとは思わなかったですね。





―そんな森丘さんが思う、買付のお仕事のやりがいってなんですか?

この仕事に就いた時は、今ほど韓国ドラマが知られていなかったから、自分のように韓国ドラマをまだ見たことのない方々に「こんなに面白いものが韓国にはあるんだよ」ということを知ってほしかったんですよ。弊社の企業理念とも似ていますが、20代のときからずっと変わらない私のポリシーが「映像を通じた文化交流の促進に寄与する」だったので。
知らない国の映像をお届けすることで、その国に興味を持ってもらえたりするじゃないですか。


―映像だと、その国の生活や文化がそのまま見られるわけですからね。

その通り。だから映画も好きだったの。しかもインデペンデントの。

だから韓国ドラマを日本の視聴者にお届けする仕事も私の理念には反してないと思って。「多くの方々に見て頂いて、韓国の良さを知って頂いて、新たな文化交流が始まればいいな」という思いで今までやってきた、という感じですね。


―では、逆に辛いことはなんですか?

すごく欲しかった某作品を買えなかったときは、辛かった。すごく落ち込みました


―金額が高かったんですか?

いや、金額は僅差だったんですよ。買うためにずっとアピールして。努力を重ねて。うちが買ったらこういう風に売りますっていって企画書も作ってそれを韓国語に訳して、制作会社やTV局に持って行って。弊社にこの作品を預けてもらえたら、これだけお戻しできますよ、って過去作の事例とかを使いながら企画書を作って。本当に努力しましたね。それで、交渉のテーブルにはついていると思っていたんですね。

それがある日、あるマーケットの会場で、人から「あの作品、他社に売られちゃったらしいね」って言われたんです。担当者に確認したら、売れてた。もう頭、真っ白。あれは辛かったですね。





―買付のお仕事でのこだわりはなんですか?

"自分が面白いと思う作品をお届けしたい"ということ。"相手関係なく真摯に向かい合って仕事する"こと。

あとは、弊社が "韓国ドラマに関して3本の指に入るメーカー"です、ということは常々アピールしています。うちに任せてくれれば安心だと。信用してもらえないと売ってくれないから。だから会社の代表として、会社のアピールは常に韓国にしなくてはいけない。
年に2回、釜山とソウルでマーケットがあるんです。大体30分刻みでTV局や制作会社とミーティングするんですけど、そこで必ず、その会社から買った作品の結果をお知らせするようにしています。DVDがどうだった、TVはどうだった。こういう事をやったら、こういうリアクションがありました、とか。

日本の視聴者の方が喜んでくれるもの、というのも常に考えています。

釜山で行われる、アジアン・フィルム・マーケット



―そこに自分の好みってどれぐらい入っていると思いますか?

あんまり入っていないですね。
仕事なので、買える作品、買えない作品って出てくるじゃないですか。いくら買いたくても、予算の問題だったり、同時期に他の作品があったりだとか。すごく好きでも買えないこともありますよ。

さきほどの某作品しかり、もう1本忘れられないのは「華麗なる遺産」(※)ですよね。毎日毎日、韓国のテレビ局に電話してました。それで買うもんだって頑張ってたら、会社の方針で韓流スターの出ている別のドラマを買うことになって...。
あの時のショックは忘れられない。「これを逃したら絶対後悔する!」って思って毎日頑張っていたのに...と。


―イ・スンギ主演なのに!?

当時、イ・スンギって何者でもなかったから。あんなに好きだったのに買えなくて。「自分の好きな作品が買えるわけではない」という辛さを知りました。

でも、その時にチン・ヒョク監督やソ・ヒョンギョン作家を知ったのは、私にとっての財産でしたね


※「華麗なる遺産」
2009年の放送時、最高視聴率47.1%という驚異の高視聴率をたたき出した大ヒット作。歌手として知られていたイ・スンギが、本作で主演を担い、俳優としてもブレイクするきっかけとなった。その人気から、台湾・中国でもリメイクされた。
(写真は台湾・中国版の「華麗なる遺産」)





―今までのお話をお伺いしていると、選ぶときにも自分の好みだけではセレクトできないわけですね。

常に自分が好きな作品が無い時もあるし(笑)。個人的にはそうでもないと思っていても、ジャンル、内容、キャスティングが合って、手ごろな値段で条件が合えば、買うこともありますよ。

あとこだわりでいえば"自分が買い付けた作品の悪口は言わない"ってことですね。それって結局自分の存在を貶めることになるから。


―自分が選んでいるわけですからね。

これは、もう作品に対しての必要最低限のマナーとして。
でも、他社の方々には分かるらしいです。「森丘さん、このドラマ、あんまり好みじゃないでしょ?」とか言われたりする(笑)


―あははははは!(笑)

あと買付の仕事は演技力が必要ですね。


―交渉とかで、ですか?

怒らないといけない時もありますから。強気の交渉が必要。映像素材のデリバリー(=権利元から日本への発送)が遅れたときとか。
入社したばかりの時は、胃が痛くなることばかりでした。毎日毎日、担当者から「これ以上、デリバリーが遅れると、発売延期だよ」ってよく脅されてました。「本当に発売延期になったら、どうしよう?」と夜も眠れない時もありましたよ。権利元の担当者には「これが明日までに届かないと、私ほんとにクビになるんで」って、よく言ってましたね。

でもそういう感覚とか、日本がきっちりしすぎてるんだとも思う。


―そこも、違う文化との交流ですね。

そう。他文化に対する、寛容な姿勢は必要。海外経験が豊富である必要はないと思うけど、日本の常識にこだわる人は辛いと思いますね。


―自分の当たり前が、当たり前じゃない可能性があるという意識が必要なんですね。




<第3回に続きます>
次回は、買付担当者がみた、韓流スター達の素顔のエピソードをお伺いします!




「華麗なる遺産~燦爛人生~」c上海尚世影業有限公司,上海展傑文化藝術有限公司,上海金禾影視傳播有限公司 c2011 GALA Television Corporation

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