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杖刑って、なぜお尻を打つの?|中国時代劇トリビア#132

落ちぶれた名門一家の女性たちが、聡明なヒロイン・花芷を中心に、数々の困難を乗り越え前向きに生き抜いていく姿を描いたドラマ「惜花芷~星が照らす道~」。今回もこのドラマの中から、気になるアレを探っていきたいと思います!

杖刑って、なぜお尻を打つの?

  「想いの温度差~九霄寒夜暖~」の杖刑シーン
「想いの温度差~九霄寒夜暖~」の杖刑シーン
©BEIJING IQIYI SCIENCE & TECHNOLOGY CO., LTD.

「惜花芷~星が照らす道~」の主人公・花芷も受けることになってしまった杖刑。杖で背中や尻を打つ刑で、罪を犯した人が木の板や棒で打たれるシーンは、中国時代劇にはよく登場します。花芷の場合は背中でしたが、お尻を打つ杖刑シーンを見たことがある方も多いはず。でも…どうして打つのはお尻なのでしょう?

「惜花芷」背中を打たれた花芷の後ろ姿 
「惜花芷」では打たれるのは背中。お尻と同じく、背中を打つ杖刑シーンもドラマで見たことがある方は多いのでは?
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杖刑は、罪を犯した人を殺めるのが目的ではなく、公衆の面前で身を打たれるという公開刑とすることで、他者への警告や戒めとするものであり、罪人に社会的な羞恥心を与え、罪を悔い改めさせることが刑の目的とされていました。そして貞節を重んじられた古代中国の女性にとっては、(ドラマでは服の上から打つ演出が多いですが)人前で肌をさらすことになる杖刑は、まさに死にも値する刑となったとされています。恥を与える罰だからこそ、お尻を打つ、ということにもなったようですが、一説によると、こんな理由もあるそうです。

時は唐の皇帝・太宗の時代。医師から人体の経絡図を描いた「明堂鍼灸之図」を見せられた太宗は、人体の重要な臓器のツボが胸と背中にあり、これらの部分が深刻な影響を受けると、命が危険にさらされることになり、お尻は比較的ツボが少なく、命にかかわるツボも少ないことを理解します。この知識に基づき、唐律を改正する際に、杖刑の実施基準を厳しく定め、杖を使って囚人を拷問する際、胸や背中を叩くのは許されないが、命に影響を及ぼす恐れのない尻は強く叩くべきだ、というものになっていきます。太宗の定めたこの基準は、その後すべての王朝で積極的に採用されたため、現在の中国歴史ドラマで再現される杖刑の尻打ちシーンは、架空の演出ではなく、史実に基づくものと理解されているそうです。

「孤高の花」で尻の傷を治療してもらう何侠
「孤高の花~General&I~」より、杖刑によるお尻の傷を治療してもらう何侠。薬が染みて痛そうな表情……
 © Croton Entertainment

杖刑が登場するドラマ「惜花芷~星が照らす道~」
デジタル配信中&DVD-BOX発売中(全3BOX・各16,500円税込)
提供:エスピーオー/BS12 トゥエルビ
発売元:エスピーオー 販売元:エスピーオー
https://www.spoinc.jp/official/sekikashi/

Text:島田亜希子
ライター。中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆する他、中文翻訳も時々担当。Cinem@rtにて「中国時代劇トリビア」「中国エンタメニュース」を連載中。『中国時代劇で学ぶ中国の歴史』(キネマ旬報社)『見るべき中国時代劇ドラマ』(ぴあ株式会社)『中国ドラマ・時代劇・スターがよくわかる』(コスミック出版)などにも執筆しています。

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