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ネタバレあり「蓮花楼」ライター対談《中編》愛されないなら憎まれた方がいい

「蓮花楼」キービジュアル

各ドラマアワード16冠達成の大ヒット時代劇「蓮花楼」のBlu-ray/DVD-BOX全巻発売を記念して、ライターの小酒真由子さん、林穂紅さんの対談を実施。「蓮花楼」にハマったお二人に、本作への愛を語っていただきましました。

前編:この物語に今の世相がようやく追い付いた

 ※ネタバレあり※ 
 
中編・後編では、物語の重要な展開や結末に触れています。全話視聴されてから読まれることをお薦めします。


方多病が李蓮花を疑ってしまった時も、それでも彼は「先生」と呼ぶ

——ここからはネタバレOK! 自由に「蓮花楼」への愛を語りたいと思います。まず、お二人の好きなキャラクターをお聞きしたいです。ちなみに私は方多病です。あのワンコ感が大好きで。

小酒真由子さん(以下、小酒) 方多病を演じたツォン・シュンシーって無邪気な熱血青年役がすごく似合うけど、ご本人は意外と落ち着いた頼もしい感じの男性ですよね。だから、第35話の覚醒するシーンのような演技に本来の骨っぽさが滲み出ていて、ぴったりの役でした。

林穂紅さん(以下、林) 方多病でいうと、彼は李蓮花を「先生」って呼ぶでしょう。あの字幕が凄くツボで。実際の中国語では「李蓮花」と呼んでいるので、あれは字幕の工夫だと思うんです。いかなる時にも、方多病の李蓮花へのリスペクトがあることが感じられて凄く良かったです。例えば方多病が李蓮花を疑ってしまった時も、それでも彼は「先生」と呼ぶ。その距離感を中国語ではセリフ全体で表現していますが、日本語はこの「先生」がそれを助けてくれている。

小酒 ちなみに私は笛飛声が好きです。演じているシャオ・シュンヤオが大好きで(笑)。笛飛声は武術バカというか、角麗譙が一生懸命「天下を盟主の手に!」と頑張っても、本人は全く興味なし。敵側なのに陰謀を巡らせたりせず、李相夷より強くなることしか考えていない。こんなストレートなキャラクターは新鮮でした。ただ、最後にちゃんと自分の復讐も遂げる一本筋が通ったところもあって。シャオ・シュンヤオのファンとしては、こんな美味しい役をやれて良かったね!という気持ちです。

林 笛飛声、最高ですよね。急に子供になってたりして(笑)。

小酒 子供の姿になっても、笛飛声らしくガツガツ食べる食いしん坊でね(笑)。そして、子供の姿でも笛飛声だと見抜く李蓮花。お互いに通じ合っていますよね。あと、笛飛声が李蓮花の前では笑顔になる展開にキュンときて! あの笑顔を見たときは、もう「あなた、いま初めて笑いましたね!?」って! あんなに自分に尽くしてくれる角麗譙にはずっと仏頂面で塩対応なのに(笑)。一方でめげずに、すぐ企み顔になる角麗譙も最高でした。

林 私、笛飛声と方多病のコンビも好きでした。まるで子供のようで(笑)。

小酒 本当に可愛かったですよね。李蓮花の作った新作料理を、方多病が不味そうだからと笛飛声に味見させたら、全部平らげてしまうシーンがあるじゃないですか。それを李蓮花に怒られた後、方多病が「俺のせいじゃないもん!あいつのせいだもん!」っていうやりとりが、お母さんと子供達みたいで(笑)。

 
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——李蓮花と笛飛声に置いて行かれて、拗ねる方多病も可愛かったです。

小酒 ついつい置き去りにされがちな方多病(笑)。彼に危険が及ばない為になんだけどね、本人はそれを知らずにプンスカしているっていう。でも、そんな方多病が、大理寺の獄に繋がれた李蓮花を助けに来るところがかっこよかった。

林 李蓮花の秘密を知ったあたりから、彼はどんどん急成長していきますよね。

小酒 推理の面でも、実は方多病は鋭いんですよね。揚州慢も習得出来るし。李蓮花や笛飛声といるから大したことないように見えるけど、実はすごく優秀な子。


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脇キャラなのにやけにイケオジな俳優がキャスティングされている

——林さんはどのキャラがお好きですか?

林 やっぱり角麗譙が最高でした。それから蘇小慵を演じたチェン・イーハン。主演作の「リミット・ラブ」だったり一生懸命な役が多いんですが、今回も一生懸命でアクセント的にすごく良い味が出ていました。 「蓮花楼」って、忘れたころに再登場して良い味を出すキャラクターが多いですよね。例えば、狐狸精も絶妙なタイミングで再登場して、いい活躍をする。楊昀春なんかもそうですね。

小酒 楊昀春、実は「万人冊(※)」の2位なので、すごく強いんですよね。石水といい感じになるのかな、と思いきや、そこはドラマの尺が足りなかった(笑)。

林 あと、出番は後半だけですが、展雲飛も好きです。演じたジャオ・ウェンハオは、最近だと「少年歌行」にも出演していますが、いつも印象に残るキャラを演じていますよね。印象に残るといえば、ホアン・ヨウミンが演じた肖紫衿もね、良い小物感が(笑)。

小酒 ホアン・ヨウミンは「山河令」での印象が強いですが、今回のように、世間では立派な君子で通っているけど実は嫌な奴、という役も多いですよね。

——肖紫衿は小物のように見えて、最後の最後まで李蓮花に絡んできますよね。

林 
本当の意味での悪人ではないけど、すごく害があるキャラクター。世間にもこういう人っていますよね。

小酒 すごくリアリティのあるキャラクターですよね。ホアン・ヨウミンはこれからも、ハン・ドンのように「時代劇にほとんど出てる!?」みたいな名バイプレイヤーとして、どんどんブッキングされて欲しい。 そういえば私、ネタバレを避けて視聴を始めたのに、単孤刀が生きていることを資料の写真を見て気づいてしまったんです。

——それはショック…! この作品の一番のサプライズですよね。

林 それでいうと、李蓮花の本当の身分も大きなサプライズですよね。あの展開は全く予想していませんでした。

——真実を知った封磬が哀れで…あの「ショック死か!?」と思うほどの最後の表情が印象的でした。

小酒 実は私、封磬も好きなんです。中国時代劇によくある、悪役にやけにイケオジな俳優がキャスティングされているのが好きで(笑)。ただ、彼は悪人側にいるんですが、祖国の為に一生懸命に働く忠臣とも言えるんですよね。

林 だから、イケオジなのも納得(笑)。「蓮花楼」は個性的なキャラクターが多いので、脇キャラも語りだすと止まりませんね。


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愛されないなら憎まれた方がいい、これを実践したのが角麗譙

——「蓮花楼」は脇キャラのように見えて実は本筋にも関わってきたり、細かなところも見逃せないんですよね。なので、2周目で気づくことも多くて。

林 それでいうと、角麗譙の衣装がまさにそう。何も疑わずに「ド派手なお姉ちゃんの衣装」ぐらいに思っていましたが、あれは異民族の服装なんですよね。最初から彼女の出自が示唆されていたことに2周目で気が付きました。我ながら目が節穴すぎて、方多病を馬鹿にできません(笑)。

——なるほど! 私も、角麗譙のスタイリングが素敵、とばかり思っていました(笑)。最後の花嫁姿も美しくて。

小酒 その前夜の李蓮花と笛飛声のシーン(38話)、皆さん胸アツじゃなかったですか!? あの日は2人の対決記念日なんですよね。2人でお酒を飲んで、笛飛声はもう満面の笑顔で「(10年前より)今日のほうが月がきれいだ」って。でも、李蓮花には「月は今も昔も同じだ」なんてかわされたりして。以前のエピソードに李蓮花は花嫁姿に、笛飛声は花婿姿になるシーンがありましたが、その伏線が回収された?とほくそ笑んでしまいました(笑)。

——あのシーンは本当に胸アツでしたよね! 一方、角麗譙からすると念願の結婚式!だったのに……。でも最後に、「私は女子は殺さぬ、だがお前だけは別だ」って言ってもらえてね。

小酒 愛されないなら憎まれた方がいい、これを実践したのが角麗譙。ある意味、いじらしいですよね。

林 「蓮花楼」のヒロインは彼女ですよ。


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血筋より育ち

——そんな角麗譙の死に方がかっこよすぎて……。黒幕の単孤刀よりかっこいいんじゃないでしょうか。

小酒 単孤刀はもはやピエロ……師母も早く言ってよ!(笑)。

林 武侠もので、親孝行されない父親って新鮮でした。武侠小説はやっぱり“任侠”と“孝”が2大柱。よく親の仇で~ってありますが、「蓮花楼」では方多病はあっさりと父親を捨てる。

小酒 そこまで深い葛藤は無いですよね。視聴者としても、単孤刀の悪行を見せられているから「こんな父親には孝を尽くさなくて良し」と思える。

林 この作品は、全体的に“血筋より育ち”を感じますよね。育ての親である方家の人達が皆いい人たちなのも、一種伏線なのかもしれません。以前、中国で『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』がパッとしなかったのは、親を裏切るという展開にどうしても抵抗があるから、と聞いたことがあって。方多病がお酒を捧げるシーンや単孤刀の死に方は、その抵抗感を和らげる為なのかもと思いました。

小酒 そういう意味でも「蓮花楼」は新しかったのかもしれませんね。孝を尽くすという定番の流れにならない。


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※万人冊
江湖の悪人から朝廷の役人まで、武芸者たちの番付けを記したもの。


《後編:自分に残された力を何に使うのか》


対談者プロフィール
小酒真由子
映画界・出版界での会社勤めを経てフリーライターに。『月刊スカパー!』などの雑誌、『見るべき中国時代劇ドラマ』『中国時代劇で学ぶ中国の歴史』『華流ドラマガイド』などのムックのほか、Cinem@rtにて「『山河令』の台詞を読み解く」「アジアドラマの処方箋」などを執筆。

林穂紅
中華圏ロックの対訳や音楽誌への寄稿を中心に活動後、OSTの仕事をきっかけに中華ドラマの字幕翻訳に従事。編著に『チャイニーズ・ポップスのすべて』(音楽之友社)、記事執筆に『中国時代劇で学ぶ中国の歴史』(キネマ旬報社)、『見るべき中国時代劇ドラマ』(ぴあ株式会社)など。
「蓮花楼」
配信:各社動画配信サービスにて配信中
セルBlu-ray/DVD:全3BOX 好評発売中(各BD19,800円・DVD16,500円 税込)
レンタルDVD:全20巻レンタル中

発売・販売元:エスピーオー
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https://www.spoinc.jp/official/renkaro/

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