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最新台湾映画|ツァイ・ミンリャン、行者(Walker)シリーズの最新作が台北電影節で盛況上映

ニュース提供元:台北電影節

  ツァイ・ミンリャン、リー・カンション、Anong Houngheuangsy
台北電影節 

ツァイ・ミンリャン(蔡明亮)の新作『無所住(Abiding Nowhere)』が23日、台北電影節(台北フィルムフェスティバル)で台湾初上映され、満席の会場に監督のツァイ・ミンリャン、キャストのリー・カンション(李康生)とラオス出身のAnong Houngheuangsyが登壇。観客に創作理念や撮影エピソードについて語った。

ツァイ・ミンリャンが2012年から取り組んでいる“行者(Walker)”シリーズは、僧侶を演じるリー・カンションが世界各地を極端に遅い速度で歩く様子を捉えたもので、10作目となる『無所住』をあわせ作品の尺は計7時間に及ぶ。ツァイ・ミンリャンは「まるで夢のようです。行者シリーズはこれからもずっと撮り続ける予定で、次作のロケ地は韓国の全州市と決めました」と話し、70歳になったリー・カンションがどのように歩くのかを非常に楽しみにしていると、十数年先まで撮り続ける意思を明確にした。

ツァイ・ミンリャン監督
台北電影節 

シリーズ中、最もリラックスした純粋な気持ちで『無所住』を撮影できたというツァイ・ミンリャン。前作『何處』は、ポンピドゥー・センターのタイアップで力が入りすぎたため、今回は少しリラックスするよう自分に言い聞かせたそうだ。ロケ地の米ワシントンはニューヨークに比べ静かな街という印象で、みんなに知られすぎた場所を殊更に映像で見せたくなかったため、自然の風景、美術館、街並みを中心に撮影した。ツァイ・ミンリャンは観客に映像の力を感じてもらうために、映画の質感を発揮できる高水準の上映環境が必要だとした上で、行者シリーズは「映画が空間を切り取った詩や絵画として観客に受け入れられるかどうかを探る」実験的な試みだと語った。

10作目を迎える行者シリーズの撮影について、リー・カンションは「年に一度の修行です」と笑い、菜食に切り替え、袈裟を着て頭を剃ると自然と気分が変わって役に入り込みやすくなり、たとえ太陽に焼かれた石の上を歩いていても、周囲から干渉されても気にならず、前へと足を進められる、70歳を超えてもできるだけ長く行者シリーズと共に歩み続けたいと語った。Anong Houngheuangsyは、劇中では1日の過ごし方しか見せていないが、本作の一員になれてとてもうれしいと謙虚に喜びを示しつつ、今後も監督と仕事をする機会があれば、監督の目を通してさまざまな都市を見てみたいと語った。

2024年台北電影節は6月21日から7月6日まで、臺北市中山堂、信義威秀影城、光點華山電影館で開催中。最終日の授賞式の模様は、台湾の主要チャンネルや配信プラットフォームのほか、Dish TV、YouTubeなどで生配信される。

リー・カンション
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Anong Houngheuangsy
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『無所住』上映会場
台北電影節 


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翻訳・編集:二瓶里美
編集者、ライター。2014年より台湾在住。中華圏のエンターテインメント誌、旅行情報誌、中国語教材などの執筆・編集に携わる。2020年5月、張克柔(字幕翻訳家・通訳者)との共著『日本人が知りたい台湾人の当たり前 台湾華語リーディング』(三修社)を上梓。

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