インタビュー｜『呪葬』シェン・ダングイ監督「“恐怖”は魅力的な体験」

2024.06.2117:00

パンデミックを題材にした『哭悲／THE SADNESS』、宗教施設の禁忌に端を発する『呪詛』をはじめ、鋭く良質なホラーを放ち続ける台湾から新たな傑作ホラーが誕生した。公開当時の年間ランキング（台湾映画）で6位を記録した大ヒット作だ。

祖父の葬儀のため、大都市台北を離れ、長らく疎遠だった実家に帰郷したシングルマザーのチュンファと娘のチンシェン。しかし、2人を迎えたのは冷え切った家族と、不穏な影が潜む不気味な屋敷だった…。この度、監督を務めたシェン・ダングイのインタビュー＆本編から家族写真が一挙解禁。

『牯嶺街少年殺人事件』『ヤンヤン夏の思い出』などエドワード・ヤン監督作品への出演で知られるチェン・イーウェン演じるチュンファの父、台湾映画界の名バイプレイヤー、ナードウ演じる叔父チュアンデらのカットと併せて、若かりし日の家族写真の背景に映り込んでしまった「何か」をとらえた一枚も。いったい、何がこの家族をバラバラにしてしまったのか―？シェン・ダングイ監督に本作について語ってもらった。

シェン・ダングイ監督

——長編デビュー作にホラー映画を選んだ理由は？

シェン・ダングイ監督　観客と、映画を通じて―それが悲しみでも喜びでも―感情でのコミュニケーションを取りたいと思っています。映画鑑賞においては「恐怖」も魅力的な体験や感覚です。初監督作品では、ホラーというジャンルを使って、最もダイレクトに観客とコミュニケーションを取りたいと考えました。

——タイトルでもある「初七日」（原題：頭七）を題材にした理由は？

シェン・ダングイ監督　まず、「家族」をテーマにした映画を作りたいという構想が初めにありました。「家族の誰かが亡くなると、7日目に家族のもとに帰ってくる」という、台湾では誰もが知っていて、子供の頃から何らかの形で経験してきたことのある風習を物語のきっかけにしたらどうかと考えたことが原点です。多くの人は、帰って来た霊に恐怖を感じるかもしれませんが、帰ってくるのは家族なので、恐ろしいだけにはとどまりません。

——ホラー映画初挑戦となる主演のセリーナ・レン、子役のウー・イーハンに加え、チェン・イーウェン、ナードウなど熟練のキャストが脇を固めています。

シェン・ダングイ監督　すべての俳優が素晴らしい演技を披露してくれました。役柄の設定においては、キャラクターをより立体的にするために、ジャンル映画の役柄設定に符合させました。それにより役柄と、それぞれが持つ自身とのイメージとのギャップが表現されていると思います。主に、今までにチャレンジしたことのない役に挑戦したセリーナ・レンや、チンシェンが感じる「恐怖」に対し、グラデーションのある表現が必要だったウー・イーハンの演技からそれが見て取れるのではないでしょうか。

——ホラー映画を演出する上で、こだわった点は？

シェン・ダングイ監督　手法に関しては、リアルな映像表現を追求しました。随所で使用したワンカットでの撮影もそうですし、アニメーションを使わずセットを組んで、実際にはありえない不可思議な空間をキャストに行き来させることも行いました。CG処理が可能な場面でも、実際に俳優たちが集い役に入り込んでもらうこと―こうすることで映像のリアリティが非常に強くなり、俳優もその環境に入り込み、演技もより魅力的になったと思います。特にクライマックスの場面で、その効果が発揮されていると思います。

『呪葬』場面写真

『呪葬』

2024年7月12日（金）よりシネマート新宿、シネマート心斎橋他にてロードショー

2022／台湾／中国語／カラー／103分　映倫：G　配給：ファインフィルムズ
HP：https://jyusou-movie.com
©2022 PINOCCHIO FILM CO., LTD. TAIWAN MOBILE CO., LTD. Macchiato Digital Imaging Co., Ltd PEGASUS ENTERTAINMENT CO., LTD. MUWAV DIGITAL STUDIO CO.,LTD

提供：ファインフィルムズ