中国の「敬酒」文化|雑誌『和華』セレクション
中国ドラマ好きのための、雑誌『和華』セレクション
毎号1つのテーマを徹底的に掘り下げ、日中文化の魅力を再発見する雑誌『和華』。様々なテーマを取り上げてきた『和華』のバックナンバーから、読んでおくと中国ドラマ鑑賞がより楽しくなりそうな記事をピックアップして紹介します。
『和華』HP:https://visitasia.co.jp/waka/
酒を勧める!中国の「敬酒」文化
文・写真/『中國旅游』 翻訳/舩山明音
(『和華』第12号 特集「酒」より)
中国では、早くも漢字が発達する以前から、人々は酒の醸造技術を知っていた。多くの書物に酒と飲酒文化についての記載があり、酒文化は中国人の血脈に染み込み、深い影響を与えていたのである。『詩経』では20箇所以上で酒について触れられており、酒には礼儀、社交、寛ぎなどの意味が与えられ、特別な宗法(同族集団の中の支配体系)の秩序や人間の上下関係を表すものだった。さらに専ら酒について記された書物も多く、酒は早くから中国文化の重要な構成要素となっていた。
酒の文化とともに、古い歴史を持つのが「敬酒」(酒を勧める)文化である。中国の初期の「酒を勧める」風習は、長時間にわたる宴会に源を発している。古代の宴会は極めて重要な社交の機能を担っており、唐代の宴会は一般に午後に始まり、日が暮れるまで7〜8時間に及ぶものだった。清代には、公的な宴会は3日から5日に及ぶものさえあり、これらは社交だけでなく政治活動でもあった。音楽や舞踊の他に、宴会に終始欠かせないのが、すなわち酒である。
酒を勧めることには、臣下が君主を、子が父を、弟が兄を、目下が目上を、世代が下の者が上の者を、主人が客人を敬うなどの社会的な身分の区別が存在する。酒を勧めるのはまず目下が目上に行うものであり、相対的に言えば相手に酒を飲むことを強制するものではない。しかし目上から目下へ行う場合は、返礼として酒を注ぐ場合も、自発的に注ぐ場合もあるが、かなり明確に飲むことを強いるものである。とりわけ、家庭レベルから国家レベルでの宴会になるにつれ、このような観念は次第に政治的な強制力を持つものとなる。
現代では、「酒を勧める」際の社会的な身分の違いは、それほど明確ではなくなっている。しかし「酒を勧める」という文化はなお存在しており、民間の素朴な風習を伝えるとともに、マイナスの一面も持っている。
「酒を勧める」場合、「文敬」「回敬」「互敬」「武敬」「罰敬」などの幾つかのスタイルがある。
「文敬」とは、伝統的な飲酒道徳の表れたものであり、礼儀正しく客人に酒を勧めることである。
宴会が始まると、主人は多くの場合何か挨拶の言葉を述べると、一回目に酒を勧める。このとき、客は必ず立ち上がり、主人はまず杯の酒を自分が飲み干してから下に向け、完全に空にしたことを示して客人への敬意を表す。客も普通、飲み干さなくてはならない。宴席では、主人はさらに各テーブルを回って酒を勧めることが多い。
「回敬」とは、客が主人に酒を勧めることである。
「互敬」とは、客と客の間で酒を勧めあうことである。相手に多く飲ませるため、酒を勧める側はいろいろな口実を設ける。勧められた側は、断る理由がなければ飲まなければならない。
「代飲」とは、威厳を失わず、主人に興ざめもさせずに酒を断る方法である。勧められた本人があまり飲めない、あるいは飲みすぎているにも関わらず、主人または客が酒を勧めて敬意を表したい場合には、代わりの人に飲んでもらう。代わりに飲む人は一般に、本人と特別な関係にある。婚礼では、新郎あるいは新婦の介添えが選ばれることが多いため、介添えは酒に強い人でなければならない。
「罰酒」とは、中国人の独特の「酒を勧める」方法である。その理由も様々なものがあり、よく見られるのは宴会に遅れた人への「罰酒三杯」である。いくらか冗談の意味合いを持つこともある。
今回ご紹介した記事は第12号「酒」特集に収録!
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出版社:アジア太平洋観光社/星雲社発売 出版年:2016年
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バックナンバー一覧:https://visitasia.co.jp/waka-backnumber
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