古代中国の書店・庶民に読まれた本ってどんなもの?|中国時代劇トリビア #119
結婚できない“婚活若様”と 結婚したくない“男装女子”の、運命を超えた愛の行方を描いたチャーミングなラブコメ時代「女神様の縁結び」。今回はこのドラマの中に登場する気になる“アレ”について、探っていきたいと思います!
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古代中国の書店とは?
中国の印刷術は八世紀には行われていて、九世紀には版木で印刷された暦や仏典などが市場で売られるなど、印刷物の販売なども行われていたそうです。
やがてその印刷術で書籍も印刷されるようになり、専門的に書籍を売買する書肆(しょし/書店)が登場してきます。印刷術の中心であった長安、そして洛陽、さらには開封など、経済的にも重要な都市などを中心に、一部の地方都市にもそうした店の出現があったと考えることができるようです。
書肆によっては、仕入れた書を売るだけでなく、人気になりそうな内容(詞など)を集めて編纂し発行もする出版社のような形態も兼ねる店もあったとか。ドラマ「女神様の縁結び」で作家である林煙が、直々に“書いて売る”商売をしているのも、実際にあったスタイルの一つだったのかもしれないですね!
© Jetsen Huashi Wangju (Changzhou) Cultural Media Co., Ltd.
© Jetsen Huashi Wangju (Changzhou) Cultural Media Co., Ltd.
庶民に読まれた本ってどんなもの?
中国では宋代から印刷本の時代に入り、ドラマに登場する林煙のように営利出版も盛んに行われて、書籍というものが貴族や身分の高い人たちだけでなく一般にも普及していったと言われています。とはいえ、やはり学識者である士大夫らが発展の中心となっていた時代には、娯楽性とは遠い学問や思想的なものが主であり、挿絵ともなる図版を用いた類のものであっても、見て楽しむ…といったものではなかったのだとか。
それが元代に入ると、“平話”と言われる口語を用いた通俗小説と、全てのページが「上図下文」といった構成による、図と文章が一緒になった“全相”と言われる「全面平話」という形式の書物が登場し、新たな方向を生み出します。この“平話”の本は、宋代の頃にもあって、盛り場で演じられた講釈師の歴史物語を書物にしたものだったそう。確かに、時代劇の中で、講釈師が演じた内容が紙になって巷に伝わり、さらに話しが広まって…というシチュエーションも、よく見かけたりします。口語体で虚構を述べる通俗小説は、士人らには当初受け入れられる類のものではありませんでしたが、「水滸伝」や「三国志演義」などの人気小説の流行によって、明代の末には非難していた知識層側からの肯定も多くなり、こうした通俗文学への認知は広がりを見せていったそうです。
こうした小説が一番人気の売れ筋になるには、やはり、ストーリーに魅力があるかが一番大事なところ!ということで、「女神様の縁結び」の中でともに作家である甯嵐と林煙が物語について熱く議論をぶつけあうのも、なるほどと納得がいきますね。
© Jetsen Huashi Wangju (Changzhou) Cultural Media Co., Ltd.
参考文献
井上進『中国出版文化史―書物世界の知の風景―』名古屋大学出版会
井上進『書林の眺望―伝統中国の書物世界』平凡社
DVD-BOX1 発売中
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※DVDレンタル&各社動画配信サービスにて配信中!
発売・販売元:エスピーオー
© Jetsen Huashi Wangju (Changzhou) Cultural Media Co., Ltd.
公式サイト:https://www.cinemart.co.jp/dc/c/enmusubi.html
Text:島田亜希子
ライター。中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆する他、中文翻訳も時々担当。Cinem@rtにて「中国時代劇トリビア」「中国エンタメニュース」を連載中。『中国時代劇で学ぶ中国の歴史』(キネマ旬報社)『見るべき中国時代劇ドラマ』(ぴあ株式会社)『中国ドラマ・時代劇・スターがよくわかる』(コスミック出版)などにも執筆しています。
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