ドラマ「茶金」をもっと楽しむ!前編:時代背景・ファッションから深める「茶金」の世界
2022年に台湾エミー賞史上最多16ノミネートという記録を打ち立てたドラマ「茶金 ゴールドリーフ」。その台湾珠玉のドラマがついに日本上陸! ということで、今回の記事では、「これを知っていると『茶金』がもっと楽しくなる豆知識」をお送りします。
時代背景やファッション、劇中に登場するお茶の知識まで……「茶金」の世界をもっと深めてみませんか?
台湾ドラマ「茶金」ってこんな時代
© 2021 Taiwan Public Television Service Foundation
台湾ドラマ「茶金 ゴールドリーフ」は、女性の経営者がほとんどいない1949年の台湾で、若き令嬢・張薏心(チャン・イーシン /リエン・ユーハン演)が台湾最大の茶商「日光」の「新社長」として奔走する物語です。時代の波に翻弄されながらも、事業と従業員を守ろうとする姿を丁寧に描いた本作は台湾で高く評価されました。
この「1949年」は台湾にとって、大きな事件がたくさん起きた年でした。戦後、台湾は日本から国民党政権下の中華民国の統治下に入りましたが、1946年に中国大陸で国民党と中国共産党による国共内戦が勃発。国民党が劣勢になる中、台湾は「国土奪還」の後方支援の役割を担うことに。しかし、1949年、中国共産党の人民解放軍によって主要都市が次々と陥落、10月には中華人民共和国の樹立が宣言され、国民党政府は台湾に逃れました。
また、経済面でも大きな事件が。一夜にして「 “4万台湾ドル” が “1新台湾ドル” になる」という通貨の切り替えが行われ、経済に混乱をきたしたのです。ドラマでもヒロイン父が経営する「日光」が多大な打撃を受け……。
現在、私達が手にする台湾ドルが「ニュー台湾ドル」と呼ばれるのは1949年の通貨切り替えによるものなんですね。
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目を奪われるレトロファッション
そんな激動の時代背景を持つ本作は、台湾で「最も美しいドラマ」と称されています。その秘密の一つが小道具や服装などの再現度の高さからくる華やかさとリアリティです。中でも特に目を引くのはファッションではないでしょうか。
例えば社長令嬢の薏心のファッションは、当時の流行スタイルだった「和洋折衷」が取り入れられているそう。
実際の服飾史を紐解いてみると 、当時の台湾では、国民党政府によって戦前の日本風を排除していこうという「去日化」政策が行われていました。その影響を受け、ファッション誌がトレンドとして取り上げるのはアメリカや、英国領香港(当時)のものに。一方で、まだ日本統治時代の名残があったので、実際に当時のファッションには和洋折衷な雰囲気があったそうです。
物語の前半の薏心のファッションは、「昭和のお嬢様」な雰囲気がありつつ、シルエットは丸みのある上半身、絞られたウエストを境に、ふんわりしたスカートというまさに戦後〜50年代にアメリカで流行したスタイルの要素が取り入れられています。そのトレンドをベースにTPOに合わせたファッションは、とてもスタイリッシュです。
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例えば米軍のパーティで体当たりの商談に着て行ったワンピースは、初めての、それも社運をかけた商談ということで、色、材質、シルエットと大変気合いが入った勝負服であるそう。薏心の気概は普段は巻かないスカーフからもにじみ出ているようです。
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その後、薏心の勝負服は徐々にスーツスタイルに移行していきます。経営者として長期的な視点を得た彼女の覚悟の表れかもしれません。
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一方、京劇役者で一座の座長を務める夏慕雪(シア・ムーシュエ / ソフィア・リー演)は一貫してチャイナドレス(旗袍 / チーパオ)を着ています。実は戦後の台湾ではチャイナドレスが再評価され、ちょっとしたチャイナドレスブームが起きていたそうです。
同じトレンドファッションでも、最先端の洋装である薏心に対し、古き良きの夏座長という対比も興味深いですね。また夏座長は、同じチャイナドレスでもゴージャスな刺繍の入ったものから、柔らかな素材まで色や柄、布地でバリエーションが出されています。これは彼女の心情が表現されているそう。どんな時にどんな服を着ているのか、ぜひチェックしてみてくださいね。
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参考資料
「茶金」台湾公式Facebook
微笑台湾「自己吃的蔬菜自己採 全家一起變身客家主廚」
中央社「知人知面還要知心 姚君看透演員本色打造專屬造型」
鏡周刊「《茶金》環台逾20處古蹟取景 最難借的場地還要跟觀光客搶時間」
「姜阿新洋樓」公式サイト
「大溪老茶廠」公式サイト
「日月老茶廠」公式Facebook
「台湾農林」公式サイト
葉立誠「二十世紀台灣服飾 變遷因素之探討」(台灣文獻 第五十三卷第二期)
葉怡蘭『紅茶經:葉怡蘭的20年尋味之旅』(寫樂文化)
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沢井メグ(ライター/中国語翻訳者)
大学で中国語と出会い上海留学、上海万博での勤務を経てライターとなる。エンタメ系を中心に中華圏のニュースの執筆、取材、翻訳。主な訳書に台湾ドラマ『いつでも君を待っている』の原作『用九商店』(トゥーヴァージンズ)等 Twitter @Megmi381
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