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「焼肉」って昔からあったの?|中国時代劇トリビア #97

近年、中国ドラマに登場するおいしそうな料理にも注目があつまっています。

容姿を変えて別人となって生き伸びる道を得た公主・君九齢が活躍するメディカル・ロマンス時代劇「九齢公主~隠された真実~」でも、劇中に気になるアノ料理が登場⁉ 今回はこのドラマに登場する料理にまつわるトリビアを探っていきます!

焼肉って当時からあったの?

 「九齢公主」焼肉店でのシーン
九齢公主~隠された真実~」© Youku information technology (Beijing) co., LTD

お茶やお菓子、そして屋台のお手軽料理など、中国ドラマには中華グルメがいっぱい! 「九齢公主」にも、劇中で今とおなじような焼肉店が登場してきますが、そういえば中国には焼肉って昔からあったのでしょうか?

北魏までの農書の集大成とされ、現存する最古の料理書ともいわれる「斉民要術」には、「灸」という「あぶりもの」の料理が記されており、火の上に肉を置き、直火または熱気で加熱する調理法が紹介されています。

枝を通して弱火で遠目に回しながら炙る、いわゆる丸焼き風のものから、串にさして焼き鳥のように炙るものなどの他、「つけあぶりもの」という料理が登場します。これは「肉をタレに漬け、炙って食す」料理で、ヒツジ、ウシ、シカの肉などを一寸四方に切り、擦り砕いた白ネギに塩鼓汁を混ぜたものにひたひたになる程度に漬け、しばらくしてから炙る、というもの(タレはほかにも、酒・魚醬・ネギ・ショウガ・陳皮をまぜて漬けこんだ味もあり)。“汁を多くし、早く漬けると肉が固くなる。火を近づけ、回しながらせっせとあぶる。白く色づいたところで、熱いうちに食べる。汁気を含み、舌ざわりがよく、おいしい”と、その味についても記されており、これはまさに、今の焼肉に近い料理なのでは⁉ 

ただし、中国料理が羹(吸い物)のような煮物中心の料理から、油を使って高温で炒める現在の中華料理の調理法に移行するのは、宋代以降に中華鍋(鉄鍋)が普及されてから、とされているそうで、「要術」が書かれた時代には、まだ鉄器を使っての調理はごく一部に限られていました。

ですから、味付けは今と近い部分があっても、調理スタイルはまだ未開発な部分が多かったと思われます。鉄器の調理器具が普及してからは、より現代に近いイメージの焼肉が存在していたかもしれませんね。

「九齢公主」焼肉店で乾杯しているシーン
九齢公主~隠された真実~」© Youku information technology (Beijing) co., LTD

ちなみに。日本の刺身とおなじように、魚や肉を生で食べる料理の「なます」が古代中国にはありました。

日本の「なます」は酢の物のイメージになりますが、古代中国の「なます」は、獣肉を用いた物は「膾」、魚肉を用いて同様の調理をしたものは「鱠」とし、ニンニク・ショウガ・陳皮・シラウメ・クリ・ウルチゴメ飯・塩および酢などをあわせた「つきあえ」という調味料と合わせて食べていたそう。“冬には陳皮とニンニクの「つきあえ」がよく、夏にはシラウメとニンニクの「つきあえ」がよし”と、「要術」には記されています。

また、生魚や肉を利用して塩と米飯、香辛料、麹、酒などを混ぜてつけこみ、乳酸発酵させた「なれずし」も作られていたそうで、現在の中国ではごく限られた人たちの間でしか食べないようになってしまったそうですが、かつては漢族もこの「なれずし」を好んで食べていたそうです。

【参考文献】
田中静一 小島麗逸 太田泰弘 編訳.「現存する最古の料理書『斉民要術』」.雄山閣 

Text:島田亜希子
ライター。中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆する他、中文翻訳も時々担当。Cinem@rtにて「中国時代劇トリビア」「中国エンタメニュース」を連載中。『中国時代劇で学ぶ中国の歴史』(キネマ旬報社)『見るべき中国時代劇ドラマ』(ぴあ株式会社)『中国ドラマ・時代劇・スターがよくわかる』(コスミック出版)などにも執筆しています。

このコラムに登場した作品
「九齢公主」キービジュアル

「九齢公主~隠された真実~」
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