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ケガにふりかけるっ! 不思議なあの“白い粉薬”について考える|中国時代劇トリビア #94

近年、中国歴史ドラマでは医療や検視モノといった医術的見地が登場する作品に注目が集まっています。例えば「女医 清落~恋愛の処方箋~」「九齢公主~隠された真実~」などでは、高い医術をもったヒロインが、劇中で広い薬学の知識や診療の術を披露していきます。

今回はこうした医術系ドラマを中心に、時代劇の中でケガや病気の場面に登場する気になる“アレ”について、探っていきます!

ケガにふりかけるっ! 不思議なあの白い粉は…?

皇帝が不老不死のためにのむ丸薬や、傷薬にぬる軟膏、そして液状にして服用する煎じ薬などなど、様々な薬が登場する中国時代劇。

そんな中、割と目にする機会が多い、ふりかけて使用する白い粉薬。刀傷、刺し傷などで傷口が深く出血を伴うケガや、打ち身や骨折、熱をもったような痛みを伴うケガに大量にふりかけるっ!というシーンに見覚えがあるのでは?

 「女医 清落」粉薬登場シーン
「女医 清落~恋愛の処方箋~」での白い粉薬登場シーン。相当沁みるのか、なんとも痛そうな表情…!
© Youku information technology (Beijing) co., LTD

あの謎の白い粉は、中国の方には身近な常備薬として使われてきたある薬にヒントがありそうなのです。

中国では古くから雲南省が原産の「田七人参」を生薬として使用してきました。田七人参は、一部の含有成分が高麗人参を遥かに上回るものとして珍重され、貴族や特権階級の人だけに限られていたほど高価で稀少なものだったため、黄金に換えられないほど貴重なものという意味の「金不換」とも呼ばれる大変貴重な物でした。

田七人参の効能は、止血しながら活血(血流をよくする)する働きがあり、自然治癒力を高める作用もあり、神経痛、関節痛など各種の痛み止め、解毒、打撲・骨折などによる腫れや痛み、皮膚感染症の腫れや痛み、肺結核、喀血、潰瘍性疾患出血などにも効き目があります。


現在WOWOWで放送中の「斛珠<コクジュ>夫人~真珠の涙~」でも白い粉薬が登場。ポーカーフェイスだが、それでも痛そうな様子。
©Shenzhen Tencent Computer Systems Company Limited

光緒28年(1902年・日本では明治35年)に、医師の曲焕章によってこの田七人参を成分とする「曲焕章百宝丹」が研究開発され、その後開発された「雲南白薬」は、中国家庭の常備薬としてひろく愛用されるようになります。また、ベトナム戦争時には北ベトナム軍が止血用に雲南白薬(三七粉)を使用していたため、その効果がアメリカ軍関係者にも広まり、世界的に有名になったとも言われているそうです。

百年以上続く「雲南白薬」は一級保護種に指定されている秘伝の漢方薬で、その製法は国家機密レベルとも。薬の形状は、灰色がかった黄色、うすだいだい色に近い黄色の粉末状でしたが、現在では、錠剤、シップ、液体状の塗り薬、使いやすいばんそうこうタイプのものなど、さまざまな形状となって販売されているそうです。

ドラマのように真っ白な粉ではないものの、「中華の宝」とも称される秘伝薬だけに、もしかしたらドラマに登場するあの薬のモデルとなっているのかも?!……しれませんね!

Text:島田亜希子
ライター。中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆する他、中文翻訳も時々担当。Cinem@rtにて「中国時代劇トリビア」「中国エンタメニュース」を連載中。『中国時代劇で学ぶ中国の歴史』(キネマ旬報社)『見るべき中国時代劇ドラマ』(ぴあ株式会社)『中国ドラマ・時代劇・スターがよくわかる』(コスミック出版)などにも執筆しています。

このコラムに登場した作品
「女医 清落」キービジュアル

「女医 清落~恋愛の処方箋~」
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