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「霓裳(げいしょう)」から考える、中国の染色・織物の起源|中国時代劇トリビア#85

家族を失いながらも、数々の逆境の中を才能と強い心を持って成長していくヒロインを描いたドラマ「霓裳(げいしょう)~七色に輝く虹の如く~」。古代ファッション業界を舞台に繰り広げられるこの物語に登場する、古代中国の刺繍や織物について、今回は注目していきます!
   

中国の染色・織物の起源

「霓裳」場面写真1
「霓裳(げいしょう)~七色に輝く虹の如く~」
ⓒYouku Information Technology(Beijing) Co., Ltd.

謝小霓(しゃしょうげい)の実家で、織物業を営む謝家では、多くの職人たちが染色作業を行なっていました。中国の染色・織物の起源は古く、今から1万8千年前の中国原始社会の山頂洞人期に、骨の針が作られていたことが発見されており、こうした骨針で衣服にする獣皮を縫っていたと考えられています。

この時期に、赤鉄鉱を研磨して取った赤い粉末で染められた糸を、装身具を作る際に通していた跡も発見されており、赤色で装身具を染めたことは、染色芸術発明の始まりであると考えられるそう。また、赤は血の色であることから、血液の象徴、永遠の生命を求める呪術的な意味も含んでいたと考えられているそうです。もしかすると、今でも中国の人たちが“赤”を吉祥の象徴として好むのも、こういうところに通じるのかもしれませんね!

農耕生活の発展に伴い、6千~8千年前には植物繊維を用いた織物が作られ、養蚕によって蚕の糸も人々の生活に取り入れられていきます。一方、中国古代の中原地帯では、獣皮を衣服として利用し、獣の毛を利用してフエルトを作ることができました。また、西北地区に住む少数民族は、獣の毛を紡いで糸にし、毛糸や絨毯を作ることができました。このように、中国の毛紡織技術は早い時期から一定の水準を持つことになります。

「霓裳」場面写真4
「霓裳(げいしょう)~七色に輝く虹の如く~」
ⓒYouku Information Technology(Beijing) Co., Ltd.

やがて新石器時代晩期に、紡績と縫製技術を修得するようになると、それまで芸術的かつ宗教的意味合いをもっていた身体への入れ墨を、衣服へ描画するようになっていきます。しかし、衣装に描かれただけの文様は、活動中に取れて消えてしまうことも……。このため、人々は次第に絹糸で文様を刺繍していくようになり、耐久性があり、かつ見た目にも美しい衣装が作られていくのです。

西周時代には、絹糸一束と馬一頭で、奴隷5人と交換できたと言われ、刺繍は非常に価値の高いものでした。このため刺繍を施した衣装を着られるのは、皇族や支配者層に限られ、高貴な錦繍は列国諸侯の間でお互いの贈り物ともされたそうです。

唐から宋にかけては、刺繍作品は鑑賞用刺繍と実用刺繍の二つが発展していきます。こうした中で、刺繍が鑑賞用の“芸術”となったのは、宋の皇帝・徽宗と関係があるとか。書画の才に優れ、北宋最高の芸術家の一人で「風流天子」とも言われる徽宗は、崇徳年間(1102~1106年)に、皇家画院に刺繍の専科を設け、有名な刺繍職人をここから生み出しました。

鑑賞用刺繍は、絵画との融合性が求められ、芸術修養に対する要求も厳しかったそう。そしてこうした鑑賞用刺繍に関しては、名門の女性という条件もあり、「閨閣繍」(閨閣千金=“深窓の令嬢”のような意味で使う)とも言われたそうです。

「中国四大刺繍」とは?

参考文献
黄能馥・切畑健.『中国美術全集6』工芸編染織刺繍(Ⅰ).株式会社京都書院.

Text:島田亜希子
ライター。中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆する他、中文翻訳も時々担当。Cinem@rtにて「中国時代劇トリビア」「中国エンタメニュース」を連載中。『中国時代劇で学ぶ中国の歴史』(キネマ旬報社)『見るべき中国時代劇ドラマ』(ぴあ株式会社)『中国ドラマ・時代劇・スターがよくわかる』(コスミック出版)などにも執筆しています。

このコラムに登場した作品
「霓裳」DVDジャケット

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