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【インタビュー】『よい⼦の殺⼈犯』ジャン・ジンシェン監督 "愛と血のつながりは関係ないんじゃないか?"

オタクの愛と孤独、浮き彫りになる台湾社会の闇を描く『よい⼦の殺⼈犯』のDVDが本日9月3日(金)に発売! 本作を手掛けたジャン・ジンシェン(莊景燊)監督にお話しを聞きました。


― 『よい⼦の殺⼈犯』は実話がヒントになっているそうですが、映画化しようと決めたのはどうしてでしょうか?

この作品のヒントになっているのは、あまり親しくない遠い親戚の話なんです。その親戚は50代でアニメやゲームが大好きで、いつも部屋に引きこもっていました。ある日、私たちはその親戚が急死したことを聞きました。そして、家族がその人が亡くなっていることにすぐに気が付かなかったことも。同じ家に住んでいるのに大きな異変に気付くこともできない、これでも家族といえるのかな、と驚きました。一つ屋根の下に住んでいるのに心の距離がこんなに遠いなんて…。

この事件に影響され、愛と血のつながりは関係ないんじゃないかというテーマの映画を作ろうと思い、アナンというキャラクターが生まれました。ただ、この映画の中ではアナンは自分が死ぬのではなく、殺人を起こしてしまいます。
   


ジャン・ジンシェン監督  Ⓒ巴萬


― 監督が本作で特に思い入れのあるシーンはどこですか? 

アナンが、大好きなイチゴちゃんの目の前でヒーローのように自信満々に振舞ったあと、大きな落胆がおとずれるシーンですね。あのシーンで彼は究極の負け犬になります。

彼はその後、地下室から階段を上りイチゴちゃんを引き留めようとしますが、その場所が階段であったことに意味があります。社会の底にいるアナンが、自尊心を捨ててまで懇願しないと他人からの同情は得ることできないことを表しています。私にとってあのシーンはとても深刻で、撮影しながら私自身もかなり辛い気持ちになったシーンでした。

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