「夢幻の桃花」から考える、「夢」の意味と力:後編|中国時代劇トリビア#65
<前編はこちら>
長い歴史の中で、中国人は“夢”に対して、夢占いを実践して分析を重ね、夢解説という理論を打ち出していきました。そして、かつては迷信として伝えられてきた夢占いは、やがて、夢判断という心理分析を行うようになっていきました。
そうした中で、文化人たちは“夢”を題材にした詩文を創作し、精神世界の文化的表現へと昇華させていきます。
盛唐の詩人、李白や杜甫も夢の詩を残していますが、中唐になると、詩の世界がより個人の内面に向かうものが多くなり、精神世界とつながる夢を描く詩文が注目され、白居易らが活躍するようになりました。
明代に入ると、夢研究はさらに盛んになり、文化的著名人らによる夢に関する重要な書籍も多く出されるようになります。
「西遊記」を題材にした小説「西遊補」の作者で、夢研究の奇才とされる董説は、心の病を患う中で、自分の見た不思議な夢を「夢日記」という形式で記録したそうです。その過程で、夢に心の病を癒す力があり、“夢が心の薬になる”ことに気が付いていきます。分析を重ねた董説は、前回でご紹介した6つの夢のカテゴリーをさらに詳しく、独自に表現していきました。
董説の考えた夢の国(夢郷)
・玄海郷…現実には経験しようもない不思議な夢が住む地域。
・山水郷…自然を題材にする夢が住む地域。
・冥郷…魂が肉体を離れて見る夢が住む地域。
・識郷…意識が城郭などを造形して見る夢が住む地域。
・如意郷…欲望が思いのままに実現した夢が住む地域。
・蔵往郷…過去の出来事が再現した夢が住む地域。
・未来郷…未来の出来事を予知する夢が住む地域。
董説が幻想小説の作者であるからでしょうか、この董説の夢の世界観は、どこかファンタジックで「夢幻の桃花~三生三世枕上書~」の物語にも通じるところがあるようにも見えますね! これからも「夢幻の桃花~三生三世枕上書~」や「太陽と月の秘密~離人心上~」のように、夢に関するドラマが増えると面白いですね。
【参考文献】
著者:劉文英 訳者:湯浅邦弘
書名:『中国の夢判断』
出版社:東方書店
Text:島田亜希子
ライター。中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆する他、中文翻訳も時々担当。『台湾エンタメパラダイス』『中国時代劇で学ぶ中国の歴史』(キネマ旬報社)にて執筆記事掲載中。
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