【韓国】CHEKCCORI 佐々木さんが教えてくれる、韓国の読書事情とオススメ本3選
11月の特集テーマは「読書」。海外旅行に行くことが容易でない今、本を通じてアジアを感じてみませんか?
今回ご紹介するのは、韓国、タイ・チベット・トルコ、台湾、中国、香港。それぞれの読書事情や入門編にぴったりのおすすめ3冊をご紹介します。
韓国の本について教えてくれるのは…
韓国の本とちょっとしたカフェ CHEKCCORI 宣伝広報担当
佐々木静代さん
2分でわかる、韓国で愛されている本とは?
韓国でずっと愛されてきた読み物といえば「詩」ではないでしょうか。誰もが1つはそらんじられる詩がある、と言われるほど「詩」が身近に存在する韓国では、街のあちこちでも「詩」を目にします。
日本統治時代の金素月(キム・ソウォル)や尹東柱(ユン・ドンジュ)などは、その作品の登場から100年ほど後の今でも装丁や編纂を変えて、多くの人が手にし、街中の風景にその詩が彩を添えています。韓国ドラマや映画でも大事なモチーフとして用いられ、新たなファンを獲得している様子からもその人気の根強さを感じます。
特に日本にもファンの多い尹東柱は、死後に発表された生涯唯一の詩集『空と風と星と詩』が日本でも各社から翻訳版が出版されています。
近年の詩集に目を移すと、2014年に韓国で発売され、詩集で100万部を超えるベストセラー作家となったト・ジョンファン(2019年4月まで第50代文化体育観光部長官)の詩の世界は『詩集 満ち潮の時間』(書肆侃侃房、2017年)で堪能できますから、100年の時を超えて韓国の人々を魅了し続ける詩の世界を、作品を読み比べながら、その魅力を探ってみるのもおすすめです。
ト・ジョンファン『詩集 満ち潮の時間』(ユン・ヨンシュク、田島 安江訳、書肆侃侃房)
そして、現在の韓国文学界を象徴するのは「フェミニズム文学」です。象徴される作品としては、やはりチョ・ナムジュ著『82年生まれ、キム・ジヨン』(チョ・ナムジュ著、斎藤真理子訳)がわかりやすいでしょう。2016年に刊行され、これまでに韓国内でも130万部以上、そして日本語版も21万部を超える大ヒットになっています。結婚、出産を機に自分自身のキャリアが閉ざされた30代女性の半生が淡々と描かれ、この10月から日本でも同作を原作とした映画が公開されておりますます盛り上がりを見せそうです。
私自身がフェミニズム作品は?と問われた際には、真っ先に『娘について』(キム・ヘジン著、古川綾子訳)をよくおすすめします。母親の視点から描かれた女性の生き方に「老い」という現実も加わり、まさに女性の一生を問いかけてくる作品です。また、『ヒョンナムオッパへ』(チョ・ナムジュ、チェ・ウニョン他著、斎藤真理子訳)は、今韓国内で活躍中の若手女性作家たちがフェミニズムを問うた短編を寄せた小説集です。中でも私のおすすめはチェ・ウニョンの「あなたの平和」。チェ・ウニョンは自身が大学時代にフェミニズムの雑誌を作っていたというだけに、特にフェミニズムを謳っているわけではないものの『ショウコの微笑』(クオン)、『私に無害なひと』(亜紀書房)などの邦訳の短編集でも女性の生き方を問う作品が多く、こちらもぜひ一度手に取ってみていただきたいです。
キム・ヘジン『娘について』(古川 綾子訳、亜紀書房)
チョ・ナムジュ、チェ・ウニョン他著『ヒョンナムオッパへ』(斎藤真理子訳、白水社)
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