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台湾映画同好会・小島あつ子さんが教えてくれる、おすすめカルチャー×スイーツ【台湾編③】

つづいて…台湾編の最新注目作は  映画『バナナパラダイス』

2019年金馬奨終身成就賞受賞!
台湾映画のレジェンド、ワン・トン(王童)監督作品 本邦劇場初公開!

台湾――そこはバナナがたわわに実る<天国(パラダイス)>のはずだった….。中国、台湾の歴史の大きなうねりの中 流れに抗うこともままならない立場に置かれた非力な人々がとにかく必死に生きようとする姿をユーモアを交えて描く!

『バナナパラダイス』 
新宿K's cinemaにて開催中の、台湾巨匠傑作選2020にて上映中、以降全国順次公開!
公式サイト:https://taiwan-kyosho2020.com/



【Q3】『バナナパラダイス』を見るときに一緒に楽しめそうな、台湾のおやつは何?

大西洋飲料股份有限公司の蘋果西打(アップル・サイダー)

さりげなく、この時代のアメリカ・中国・台湾の複雑な政治関係が描かれている『バナナパラダイス』。ニウ・チェンザー演じる主人公のメンシュアンがリー・チーリンになりすまして最初に就くのが、アメリカ軍への報告書を作る仕事でした。

台湾ニューシネマの起点となるオムニバス映画『坊やの人形』(83)の1作、ワン・レン監督の『りんごの味』で風刺されたように、1960年代の台湾人にとって、リンゴはアメリカの豊かさを象徴するあこがれの果物。1965年に台湾でアップル・サイダーが生産され始めた当時は「美國蘋果西打」(美國=アメリカ)という商品名だったそうです。

台南での生活を経て台北で就職したメンシュアンですが、必要に迫られ英語を勉強します。やがて生活に余裕が出てきた頃に、ラジオで楽しんでいたのはバスケットボールの試合。ですが中年になったメンシュアンが職場で手にするのは、バスケの有名選手の死亡届でした。

1979年にアメリカは中国と国交を樹立し、同時に台湾とは断交します。それに合わせて、アップル・サイダーの商品名からも「美國」の2文字が消え、現在の「蘋果西打」になったのでした。可愛らしいレトロなデザインの缶に、シンプルな味わいとちょうどよい炭酸強度の、台湾生まれのアップル・サイダー。ぜひよく冷えた「蘋果西打」を片手に『バナナパラダイス』を見ながら、台湾がたどった複雑な歴史に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。(小島さん)



Edited:小俣悦子(フリーランス編集・ライター)

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