【インタビュー】「悪との距離」チェン・ユー 前編 "みんなが私と一緒にいる感じがした"
圧巻の金鐘奨6部門受賞、史上最多14ノミネート!台湾ドラマの歴史を変えた、いま見るべき傑作ヒューマンドラマ「悪との距離」。本作で報道局の新人アルバイトであり無差別殺人事件の犯人、李暁明の妹・李大芝(リーダージー)を演じたチェン・ユーに本作について話を訊いた。
— 「悪との距離」に出演することになった経緯と、出演が決まった際の心境を教えてください。
チェン・ユーさん(以下、チェン・ユー) 普通はオーディションの前にキャラクター紹介とあらすじを頂く場合が多いのですが、「悪との距離」はなんと全話の脚本を提供してくれました!しかもオーディションは脚本をもらった3日後で、その時は別のドラマの撮影中だったので、とても緊張しました。そして、脚本を読み始めてさらに緊張しました。"李大芝"というキャラクターが好きすぎて、どうしても演じさせて頂きたかったから。夜も眠れませんでした。
結局オーディションの日は、自分的にはいいパフォーマンスが出来ず、まだちゃんと整理できていない考えと思いばかり話したような気がしました。「この役は手に入れられないだろう」と思いましたが、家に帰って、それでも脚本を読み続けました。出演できなくても、勉強としてこの素晴らしい脚本を分析してみようと思ったからです。そして春節明け、出演させて頂く連絡が来たときはとても驚きでした。自分の幸運に感謝です。あの時期にどこに行っても脚本を持ち歩いていてよかったです。
— "李大芝"を演じるにあたり、監督や脚本家からリクエストやアドバイスはありましたか?
チェン・ユー 脚本家のルー・シーユエンさんからフィールドワークでのインタビュー資料を頂きました。監督からもキャラクターを想像しやすいニュースを頂いて、彼が欲しい雰囲気やスタイルが分かる映画やドラマを見せて頂きました。
皆さんがドラマで見たこの"李大芝"は、監督と私で準備期間から撮影中もずっと調整し続けた結果です。
— チェン・ユーさんは、演じられた"李大芝"という人物をどのように解釈し演じましたか?演じる上で大切にした点や、特に意識した点があれば教えてください。
チェン・ユー この人物を''普通の人''という感じに作りたいと思いました。私たちの周りにいる存在感が薄い人のように。このキャラクターの声の表現は、私が今までやってきたものとかなり違いますし、抑えている演技も今まであまりやったことがなかったので。その中でも特に眼差しは意識したかもしれません。
— "李大芝"は殺人犯の家族としてかなり辛い状況に置かれています。それでも彼女がメディアで働くという夢に向かって頑張れたのはどうしてだと思いますか?
チェン・ユー 私が考えた理由は、彼女があまりに世間知らずだったからかもしれません。李大芝は両親の影響で、兄のことを恥ずかしいと思っている部分がありますが、一方で彼女の中には"怒り"があると思います。今までの生活が壊され、学校にも行けず、友たちも失って、母親に強制的に名前を変えられて。家から出された彼女は、もう兄という荷物を背負わないことにして、家族と連絡を切って、自分の人生を生きようとしました。
また、兄が報道された内容も大学で勉強したメディア倫理に違反していたので、反抗の気持ちも少しあったと思います。あと彼女はこの分野しか勉強していなかったし、教授が推薦してくれたから報道局に就職しました。まさか、そこの上司が一番出会ってはいけない人になってしまうのですが...。
— どのシーンの撮影が特に印象に残っていますか?その理由も教えてください。
チェン・ユー 印象に残るシーンがたくさんありますが、特に挙げたいのは、兄が銃殺されるときに李大芝がオンエアーしているシーンです。監督が事前にテレビ放送の画面を撮影しておいたことに対して感謝しています。またスタッフさんはとても入念にリアルな撮影環境を用意してくれたし、撮影中もとても真剣に雰囲気を作ってくれたので、李大芝の心境はとても寂しいものですが、演じていた私にとってはとても心強かったです。みんなが私と一緒にいるという感じでした。
<後編へ続きます>
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