「永遠の桃花」「晩媚と影」 花が意味すること:後編|中国時代劇トリビア#27
前回のコラムでご紹介した清らかなイメージの蓮と、恋や愛情とが結びつく理由...。それは、中国語の発音や意味に関係があるようです。
中国語の"蓮"(リイエン)の発音が、愛情や恋を意味する"憐""恋"(リイエン)と同じで、このリイエンという発音を持つ言葉には、「物事の連続」という意味があり、これから転じて、思いが相手へと続く気持ちが"憐"や"恋"、小さな孔が連なって空いた花托を持つ蓮=連続するもの=恋へと意味が通じていったそうです。
漢代に蓮取りの労働を詠んだ民歌に登場する"採蓮"は、「恋人を選び取る」という隠された意味で使われたとか。このように蓮には、愛情、恋心、そして男女の仲の良さが象徴されているのです。
蓮はその意味が花にばかりあるのではありません。前にも登場したレンコン!これにもじつは大事な意味があるのです。
レンコンは皆さんご存知のように、蓮の食用にする部分で最も尊ばれてきました。この見た目は地味なレンコンにも「仲良きふたり」「未練心」といった恋にまつわる意味があるのです。
レンコンは、折ると糸をひくことから、寄せる想いが折れてもあとを引く......という、未練を残す心をレンコンの糸をひくところに例えることもあるそう。また中国語の発音がカップルを意味する偶(オウ)と同じなので、これが仲良き二人という意味になるとか。蓮=恋とは!なんだかとってもロマンティックですね。
仲良き夫婦を描いたドラマと言えば「明蘭~才媛の春~」。このドラマの原題「知否知否應是緑肥紅痩」は、海棠の花を詠んだ詩を引用したもの。
本コラムにたびたび登場する超VIPな大人カップル唐の玄宗皇帝&楊貴妃のお話では、二日酔いで起き上がれず、なよなよとして、侍女らに助けおこされた楊貴妃の様子を見ていた玄宗皇帝が、海棠の花にたとえて笑ったそう。このように海棠は美人の比喩にも使われています。
また海棠は「紅楼夢」にも登場し、真紅の花をつけた見事な海棠から名をつけた怡紅院に、主人公の賈宝玉は住むことになります。賈宝玉は海棠の花がお気に入りのようで、めずらしい白花(秋海棠の一種とも)の海棠を手に入れたのを機会に、海棠詩社という集まりを結成する...というお話も出てくるとか。
ちなみに、海棠は春の花ですが、秋に花が咲く秋海棠は、女性の流した涙がこぼれてそこから花が咲いた、というちょっぴり淋しい伝説があります。様々なストーリーを紡ぎ出してくれる美しい花たち。劇中に登場する花を調べてみると、そこに隠された新たな物語を知ることができるかもしれませんね。
Text:島田亜希子
ライター。中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆する他、中文翻訳も時々担当。『台湾エンタメパラダイス』『中国時代劇で学ぶ中国の歴史』(キネマ旬報社)にて執筆記事掲載中。
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<参考文献>
【参考文献】
集英社新書 飯倉照平著 「中国の花物語」
草思社 中村公一著 「中国の愛の花言葉」
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