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仙人たちの不思議な「仙術」|中国時代劇トリビア#15

ドラマ「扶揺(フーヤオ)~伝説の皇后~」では、武侠的な技だけでなく、仙人の道に通じる不思議な術(御水の術など)も登場してストーリーを盛り上げていきます。

「扶揺」場面写真1

今回は、歴史仙侠ドラマに登場する仙人たちの不思議な"仙術"にスポットをあてて、探っていきます!

古代中国では、不老不死の仙人に憧れる「仙人思想」が流行し、そこからさまざまな仙人になるための術が生まれてきました。まず、人間が仙人になるための手法としての仙術は、

① 仙人の住む山(神山)にある不老不死の薬を手に入れる。
② 煉丹術で人工的に不老不死の薬(丹)を作る。
③ 内丹法という特別な修行で体内の気を操って不老不死になる。


があるそうです。

仙人になるためには、東方海上の仙人の島にある仙薬を飲めばなれる!と信じられていましたが、自然の仙薬を手にするのは非常に困難だったため、鉱物を用いて人工的に作り出されるようになります。

不老不死の仙薬と聞くと、ものすごくオーガニック系の体に良いものを想像してしまうところですが...②であげた煉丹術は水銀を金に変えるような一種の錬金術でもあり、人工的に作った丹(薬)の原料には有毒の水銀が多く使用されていたので、煉丹術が流行した唐代の皇帝で丹を常用したものは、早死にをしてしまいます。このため、宋の時代には煉丹術は衰退し、有効な薬を作る技術として医学の中に入っていったそうです。

ちなみに。このドラマのモデルと考えられる春秋戦国時代には、優れた学者や思想家が生まれており、その中には"方技家"という当時の医術と化学、仙人の知識などを扱い、錬金術的学問を専門とする者もいたということで、そうした人々は宗越のように聖医として活躍していたのかもしれませんね。

「扶揺」場面写真2

こうした薬の力に頼るのではなく、自らの"気"の力で仙人に近づこうとする修行が、内丹法。導引という健康体操のようなものから、呼吸法によって気を操る行気など、気を強くする、失われた気を外から補うことなどが目的とされました。

ファンタジー系のドラマなどでは、強いパワーの持ち主が、負傷した人の背中に手を当てて気の力を与える...というシーンが登場したり、「扶揺」の中でも、扶揺が気の力で助けられる場面が描かれたりして、気功法のパワーが登場していますね!

続いて、仙人が使う魔術としての仙術。

① 姿を消す!
② 空を飛んで瞬時に姿を消す!
③ 誰も出られない牢獄から抜け出す!
④ 雨を降らせる!
⑤ 不可能なことや、たいがいのことが可能になる!!


「こんなこと、できたらいいな~」とうらやましく思うと同時に、あれ、どこかで観たことあるような...まさに仙侠あるある!な術ばかり。

こうした仙人の術を使えるようになるには、単に特別な技術を得たから可能になるのではなく、本物の仙人になることによって、はじめて使用可能になるのだとか。だから、ズルをして必要なものだけそろえても、仙人としての条件を持ちえなかった齊震は、残念ながら水を操る術を得ることができなかったわけですね。

スケールの大きい中国歴史ドラマだけに、これからもあっと驚くような仙術を映像の世界で再現してくれることに期待したいですね!

「扶揺」場面写真3


Text:島田亜希子
ライター。中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆する他、中文翻訳も時々担当。『台湾エンタメパラダイス』『中国時代劇で学ぶ中国の歴史』(キネマ旬報社)にて執筆記事掲載中。

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<参考文献>
新紀元社 「図解 魔術の歴史」 草野巧著
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