#1【韓流お仕事図鑑】あなたのもとに韓国ドラマが届くまで<デザイナー×パッケージ制作担当編>
★★今までの「あなたのもとに韓国ドラマが届くまで」はこちら★★
普段私たちが見ている韓国ドラマ。韓国で制作されたドラマがどういう道のりを経て、日本でテレビ放送されたりDVDになったりするかご存知ですか?
この連載は、韓国ドラマを日本のお茶の間に届ける過程に携わる人たちにインタビューをしていく【韓流お仕事図鑑】です。
連載第6回目は、作品の日本版ビジュアルを作成し、DVD商品を作り上げていくお仕事"デザイナー"と"パッケージ制作担当"に迫ります。
「師任堂(サイムダン)、色の日記」をはじめ、多くの韓国ドラマ作品のビジュアルデザインを担当しているデザイナー・なおさん、エスピーオーでDVDなどのパッケージ制作担当を務める栗田梨加さんのインタビューをお届けいたします。
<プロフィール>
なお(デザイナー)
「お茶の国」生まれ、「落花生の里」育ち。プランニングOM〈オム〉株式会社に勤続25年の癒し系敏腕デザイナー。韓国ドラマを中心に、海外ドラマや映画など年間約30本以上の作品を世に送り出している。ネコと中日ドラゴンズをこよなく愛するイクメンパパでもある。
栗田梨加(パッケージ制作担当)
山梨県出身。株式会社エスピーオー 映像事業部勤務。入社当時、韓国作品は全くの未見、俳優もヨン様しか顔と名前が一致しない状態だったものの、いつのまにやらすっかり韓流女子に。好きな韓国ドラマのジャンルは笑って泣ける大人ラブコメ。同居モノ、お隣さんモノが大好物。BIGBANGをこよなく愛する。
第1回 「とにかく手にとってもらえるために」:2017.12.26更新
第2回 「最近の韓ドラはほぼ、なおさんの作品!?」 :2017.12.27更新
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― まずはじめに、ご自身の仕事内容について簡単に教えてください。
なおさん(以下、なお):
映画やドラマのDVD・ブルーレイのパッケージや販促物、広告などを主にデザインしています。
栗田梨加さん(以下、栗田):
私は、海外から買い付けた作品の素材を元に、日本版のキービジュアル制作を始めとした邦題決め、商品制作、販促物制作など諸々を担当しています。
会社としてどういう風に売っていきたいか、自分はどう作りたいかということを盛り込みながらデザイナーさんやライターさんと一緒に作り上げていきます。
― 商品や販促物って、具体的にどういった部分を担当されているんですか?
なお:
作品にもよりますが、劇場公開作品の場合は、既に出来上がっているビジュアルを、パッケージに落とし込んでいくことがほとんどなんです。
それに対して、韓国ドラマの場合は一からの作業になるものが殆どです。
ビジュアルやロゴのデザインから、商品の中身のブックレットだったり、DVDのレーベルだったり。時にはメニュー画面を作ることもありますよ。
― DVDを再生したときに出てくるメニュー画面も作られているんですか?
栗田:
そうですね。少し前まではタテ型の日本版キービジュアルを基にして映像制作の会社でアレンジしていただいてましたが、今はメニュー画面に合わせたビジュアル自体もデザイナーさんに作っていただいてます。
― では、お客様の目に触れるビジュアルは、ほぼすべてをデザインされている、というかんじでしょうか。
栗田:
そうですね。
レンタルショップなどに飾られるポップ自体はでレンタル店を運営してる企業で作ることが多いですが、そこで使用される画像素材は弊社からご提供したものを使ってもらってます。
あと、韓国ドラマでは作品の非売品プレスがレンタル店の棚に吊り下げられていることも多いですが、それは完全に私たち、つまり各映像メーカーが作ってますね。
- なおさんはエスピーオーの作品だけでなく、様々なメーカーの作品のデザインを担当されているとお伺いしたのですが、今まで担当された作品を教えていただけますか?
なお:
エスピーオー作品ですと最近は、「師任堂(サイムダン)、色の日記」や「イタズラなKiss~Miss In Kiss」ですね。
他社さんですと「福寿草」「キルミー・ヒールミー」「エンジェル・アイズ」「私はチャン・ボリ!」「恋のゴールドメダル?僕が恋したキム・ボクジュ?」「女の秘密」「運勢ロマンス」「風船ガム」「家族の秘密」「ナイショの恋していいですか!?」「女王の花」「カッコウの巣」「メディカル・トップチーム」、時代劇ですと「ホジュン宮廷医官への道」「九家の書?千年に一度の恋?」「女医明妃伝?雪の日の誓い?」「客主」「大王の夢」などです。
― なおさんは、一年間にどれくらいの作品のデザインを担当されるんですか?
なお:
月に1、2本は韓国ドラマがリリースされているので...年間だと20本前後の作品を担当しています。
― そんなにたくさんの作品を担当されているんですね!
そもそも、この仕事に就いたきっかけは何だったんですか?
なお:
僕は元々何かを作ったりすることが好きだったので、デザインの学校に通い始めたんですが、学校の授業の一環で、企業実習みたいなものがあって。
それでプランニングOMに来たんです。
その翌年の4月には入社したので、それから25年ですね。
栗田:
25年!学生時代から一筋とはすごいですね!
最初はどういうものをデザインされていたんですか?
なお:
最初は映像メーカーが出している新譜情報誌や広告がほとんどでした。
― 韓国ドラマで初めてデザインを担当された作品って覚えていますか?
なお:
韓国ドラマで初めてパッケージを担当させていただいたのは、「ホジュン宮廷医官への道」でしたね。
いつだったかな、と思ってさっき調べてみたら、2006年の作品でした。
― 韓国ドラマ以外だと、どういったジャンルの作品をデザインされていますか?
なお:
ハリウッド作品もありますし、ミニシアター系の作品、未公開の洋画や日本のドラマもあります。
でも今は韓国ドラマが多いですね。
― ということは...先程おっしゃっていた年間20本近く担当されている、そのほとんどが韓国ドラマなんですか?
なお:
ほとんど、というより、韓国ドラマだけでそのくらいです。
それにプラスして、ちょいちょい他のジャンルの映像作品が入ってきますね。
― それはかなりお忙しいのでは...!?
栗田さんはいままで担当した作品は、どのような作品でしょうか?
栗田:
直近の韓国ドラマで言うと、「デュエル~愛しき者たち~」「ボイス~112の奇跡~」「ウォンテッド~彼らの願い~」「師任堂(サイムダン)、色の日記」「シグナル」...という感じですね。
今現在は、まだ告知解禁されてないのですが、とある韓国ドラマのビジュアルを制作中です。
あと、韓国以外のドラマですと、一番新しいのは中国ドラマ「孤高の花~General&I~」ですね。
― 栗田さんがこの仕事に就かれたきっかけはなんだったのでしょう?
栗田:
入社した当初は、雑誌媒体に作品の画像を提供したり原稿を確認したりするパブリシティの仕事と、セル・レンタル法人向けの事務業務をメインに担当していたんです。2009年の初めで、これから「花より男子~Boys Over Flowers」を宣伝していくぞ、っていうタイミングでした。
その時ってまだ"韓国エンタメの情報をwebで得る"という事がそこまで浸透していなくて。毎月、たくさんの韓国ドラマやK-POPの情報誌やムック本が発売されていたので毎日素材出しとゲラチェックが山のようにあったんです。
エスピーオーに入社する前は雑誌や書籍の編集アシスタントみたいな仕事をしていたので、元々ゲラチェックとか好きだったんですよね(笑)。
その後、いまから3年前ぐらいに上司に「制作担当が向いてそうだからやってみないか?」と言われたことがきっかけで、現在の仕事を担当するようになりました。
最初は、商品作りだけとか広告などの販促物だけなど細かなところを担当していたんですが、「3度結婚する女」という韓国ドラマで、初めてビジュアルから商品まですべて担当しました。
― 栗田さんは現在、エスピーオーの作品をほぼお一人で担当されている状況ですよね。
栗田:
すごく厳密に言うと、他社さんとの共同事業作品だと、弊社が販売する作品でも他社のご担当の方が制作される場合もありますが、概ねの弊社作品はそういうことになりますね。
でも完全な新作は毎月そこまで多くないですよ。例えばBOX1・2が同日発売とか、長い巻数のレンタルが2週間ごとにリリースするとか、そういう作品が重なるとちょっと混乱してきますね(笑)。その間に次の作品のビジュアル作りも入ってくるので。
― 制作担当は、スケジュール管理が肝なので、リリース日が近いと大変ですよね。
栗田:
とにかく様々な納品日や入稿日からの逆算ばかりしてます(笑)。
― では、お二人が韓国ドラマのパッケージを作っていくお仕事をされていて、嬉しいことを教えてください。
なお:
嬉しいことは、やっぱり形になったものを見た時ですね。
パッケージの仕事を始めたばかりの頃は、リリースされるとレンタル店に見に行っていました。商品が並んでいるのを見て、ほくそ笑んだり...(笑)。
栗田:
今なんて、かなりの作品数をご担当されているから、レンタル店の棚がなおさんのデザインばかりですよね。
お店でほくそ笑みが止まらなくなっちゃいますね(笑)。
なお:
そんな事はないですよ!
韓国ドラマは巻数も多いので、結構な幅もとってますしね。
あと、デザインした作品が、「ヒットしてるよ!」とか聞くと、嬉しいですね。
― ご自身が担当された作品で「これはヒットしたな」と印象に残っている作品はありますか?
なお:
「福寿草」ですかね。
栗田:
うんうん、確かに!他社さんの作品ですが、とてもヒットしましたね。
ラブコメじゃない韓国ドラマが、こんなにヒットするんだ...!と思わされた作品のひとつです。
― 「福寿草」が大ヒットをおさめ、似たような作品がたくさんリリースされましたよね。
なお:
確かにそうかもしれません。今でも引き合いに出されることが多いんです。
― 栗田さんは、いかがですか?
栗田:
それはもうお客さんがすごくハマってくれたり、楽しんでくれたりすることにつきますよね。DVD-BOXは決して安い買い物ではないので、「買って良かった」と思ってもらえることが純粋に一番嬉しいです。
あと、これは私自身がそうだからなんですけど、「1日仕事で疲れて帰ってきたり、日常で嫌なことやつらいことがあっても、寝る前にこのドラマを一話ずつ見るのが日々の楽しみ」という感じで、特別な何かではないけれど、その人の日々の支えになっている作品を届けられるといいな、といつも思ってます。
― では、この仕事をしていて大変だと思うことはありますか?
なお:
韓国ドラマに限らずなんですけど、アイディアを出し続けなければならないのはしんどいですね。
1つの作品に限ったことではなく、今やっている作品と次の作品、またその次の作品と、どんどん違ったアイディアを出し続けていかなければならないので。
― アイディアを出し続けるために普段やられていることってありますか?
なお:
あまり意識はしていませんが...街なかの広告とかはよく見ます。ここの処理はどうやってるのかな、とか考えたりしています。
気に入ったものがあると憶えておいて、参考にすることもあります。参考にする前に忘れちゃうことも多いですケド(笑)。
あとは、とにかく手を動かしながら考えています。
ひとつ試してみて、ダメならまた違うことして、って...。
栗田:
すごい。それって、自分にたくさんの引き出しがないといけないですよね。
― 広告をみていろいろ考えてしまうって、ちょっとした職業病ですね(笑)
なお:
電車に乗っているときになんとなく広告を見ていて、文字詰めが気になったりしますよ(笑)。
意識していなくても見ちゃってますね。
栗田:
私はレンタルショップですごく他の作品をチェックしちゃいますね。アジア作品に限らず、海外ドラマや日本作品のキービジュアルだったり、キャッチコピーだったり、あとは表4(=裏表紙)の使い方だったり。
あと、レンタルジャケットのデザイン面で大事なのが背なんですよね。
面陳(=背表紙ではなく、表紙を見せる陳列方法)してもらえる作品は少ないし、されたとしても期間が短いので背が重要なんですよね。
タイトルがはっきり見やすいか、人物写真を入れるならどういう入れ方をするかなど参考にしてます。なので、何も借りないけどレンタルショップに行く、ってこともよくあります。それと、まだ私は自分が担当した作品を見ながらレンタル店でほくそ笑みたいんです(笑)。
― なおさんの担当された作品群をみていると、同じ方が作ったとは思えないほどバリエーション豊かなのですが、
ご自身でご覧になって「これはどの作品にも一貫してあるポイントだな」っていうところはありますか?
なお:
なんだろうな...。ありそうな気もするんですけど...。
栗田:
なおさんのデザインは"綺麗"って思います。品があるっていうのかな。
例えば、なおさんと初めて一緒に作った中国ドラマ「賢后 衛子夫」の背景にしかれている布も、私が想像していたよりももっと美しくて精細になっていましたし。
なお:
確かにそういう方向が好きではあります。
綺麗めの方が自分の好みではありますね。
栗田:
女性っぽさもありますよね。
― 女性っぽさってすごくわかります。色の使い方とか、絶妙に柔らかいというか。
では、栗田さんはお仕事をされていて、大変なことはなんですか?
栗田:
割と気を張っているのは日本版のキービジュアルが出来るまでですね。プレッシャーもありますし。
キービジュアルは作品の骨組みになるものなのに、デザイナーさんに作品の方向性を伝えるのは自分だけ。その伝え方ひとつでデザインは大きく変わってしまうので、いつも最初の打ち合わせは緊張してます。
― デザイナーさんに作品の方向性を伝えるときに意識していることはありますか?
栗田:
以前は結構デザインに関して具体的なことをお伝えしてたかもしれません。「ここにこの人物を置いて、こういう背景で」みたいなことをお話ししていました。
でも、今は作品に持たせたいイメージや方向性のほうをより重視してお話ししています。私はデザイナーではないのでそういう具体案では限界もありますし、細かいデザインに関してはやっぱりデザイナーさんのほうがプロですから。
例えば、これはなおさんのデザインではありませんが「ウォンテッド~彼らの願い~」や「ボイス~112の奇跡~」はせっかく中身は面白いのに韓国の売り方そのままだと、どうしても日本では手に取ってもらい難いように感じたので、その作品が元々持っている要素の中から、「日本ではここを大事にしよう」っていうポイントを抽出しました。
例えば「ウォンテッド~」だったら劇中で起きる事件よりも、「息子を助けたい!」っていう母の気持ち。「ボイス~」では「救いたい!奇跡を起こしたい!」って奮闘する人たちの熱意に重きを置いたビジュアルにしました。
デザイナーさんには、そういう大事にしたいポイントを的確にしっかりとお伝えした方が上手くいくことが多いなって最近思っています。
実際出来上がった2作品に関しても、「希望」とか「光」とかそういうものをビジュアルにも表現してもらえて良かったです。
そうは言っても、本国のビジュアルには表現されてない部分もあるので、デザイナーさんは大変だと思いますけど...(笑)
なお:
栗田さんにイメージをお聞きして、出来るだけそのイメージに近づけるように作っていくんですけど...まぁ、なかなか難しいですね(笑)。
お聞きしたイメージをアタマの片隅に置きつつ、自分のイメージで作ってみることもあります。
― では、栗田さんが、ビジュアルを作るときに意識していることってありますか?
栗田:
とにかく手にとってもらえるかどうかってことですね。インパクトとはまた違うんですけど。
例えば日本の作品って、みんな出演者の顔もわかっているし、日々のCMや番宣で、そのドラマに関する情報を得ることができるから、その作品を手に取るきっかけが色々ありますよね。
でも韓国ドラマは、韓国での放送のタイミングで既に情報を追っている人以外は、日本版のサイトやビジュアルの雰囲気で見るかどうかを決めるという場合も多いと思うんです。
もちろんキャスト次第というのもありますけど、同じ俳優が出ていても、ヒットする作品とそうでない作品はありますから。
そうなると、中身やビジュアルの部分が重要になってくるんですよね。
中身の良し悪しはそれぞれ好みがあるので、最終的にはお客さんが判断することだと思うんですが、私たちは中身を見て良し悪しを判断してもらうための、まず第一歩をより多くの人に踏んでもらうために、見てみようかなと思ってもらえるビジュアルにすることを意識しています。
<第2回へつづきます>
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