ある理由から高麗時代へと連れてきたウンスをいつか帰してあげるために戦い続けるヨンと、自分の世界に戻りたいと思いながら、そばでヨンの心を守りたいと思うようになるウンス。「必ず帰す」というヨンの約束から始まった2人の出会いは、“いつかくる別れのとき"と背中合わせの切ない愛の物語に展開していく。なかでも、“守る男"ヨンの男らしさと無骨さ、不器用な優しさは、その切なさをより際立たせ、胸締め付けられ、ドキドキさせられる。
たとえば、ウンスが敵陣キ・チョルのもとに送られたことを知れば、いてもたってもいられず彼女を追い、陰からそっと助けるヨン。一方で、徳興院に奪われたウンスを取り戻すため、皆の前でいきなりキスをするヨン。時にストイックに、時に大胆に、ウンスを守ろうとする彼の姿にシビレてしまう。 なにより、回を追うごとに、ウンスに惹かれ、そばにいてほしいという思いを強くするヨンが、それでも自分の気持ちを抑え、どこまでも始めの約束を貫こうとする「信義」に、心揺さぶられる。そして、ヨンのぶれない男気と愛を、繊細さと大胆さ、落ち着いた深みのある演技で見せたイ・ミンホが圧巻だ。最後までヨンは彼女を守れるのか? 号泣必至の結末を見届けるべし。
ヨンとウンスの愛は、切なさばかりではない。はじめは、“時代ギャップ"もあり理解しがたい存在としてぶつかり合う2人が、徐々に相手を理解し、支え合う存在になっていく過程には、感動はもちろん、萌えや胸キュンも満載だ。とりわけ、無愛想でほとんど笑うことのなかったヨンが、ウンスの明るさに触れ、表情をほころばせていく様はとても愛らしい。おかしな歌を歌い出すウンスを見て、思わず笑い出したり、ふざけてヨンの髪に花を挿し喜ぶウンスに、きょとんとなったり、その花が血の匂いを消すと言われ、大切に取っておいたり、次第に表情が増えていく様に、見ている方までほっこりする。さらに、近衛隊の隊員たちに混じって戯れるウンスを呼び出し、嫉妬を見せる姿も可愛い。一方で、決して横になって眠ることのないヨンに、ウンスが肩を貸すシーンにもキュンとなる。女に肩は借りられないと拒みつつ、コトンと彼女の肩に寝てしまうヨン。実は寝たふりなのだが、そうでもしないと甘えることのできない不器用さがたまらない。
不器用で感情を表に出すことはないヨンが、見る者の心を捉えて離さない最大の理由が、その眼差しだ。たとえば、ウンスを帰す約束を果たせず、命で償おうと彼女の剣を受けるシーン。武士としての「信義」を貫く真っ直ぐな眼差しは、見る者の心に突き刺さり、「イ・ミンホの眼差し演技」は、物語序盤から多くの視聴者を“チェ・ヨン・アリ(病)"にしてしまったほどだ。
また、過去に愛する人を守りきれず、失った心の傷を隠し持つヨンの眼差しは、常に悲しみの陰を湛えている。ただ誰かを守るためだけに剣を握る彼の瞳には、生きることを拒むかのような諦めに似た寂しさが浮かんでいる。だが、ウンスとの出会いによって、その眼差しが変化していく。騒がしいウンスに小言を言いながら、彼女を見つめる瞳の奥には優しさが溢れ、彼女のためにこぼれた笑みには無邪気な少年のような瞳が輝く。彼女を奪おうとするキ・チョルに向ける目には激しい怒りが映り、ウンスに「自分を守らなくてもいい」と拒まれると、深い絶望を瞳に映す。意を決し、ウンスへの愛を伝える場面では、これまでにない柔らかで力強い眼差しで彼女を見つめる。
ヨンの眼差しには様々な感情の色があり、その瞳を見ているだけで、彼の心が痛いほど伝わってくる。瞬間瞬間、ヨンの変化していく心を繊細に表したイ・ミンホの眼差し演技。決して心に嘘のないヨンというキャラクターに完全に同化したイ・ミンホの、俳優としての深化、底知れぬ力を感じることだろう。
イ・ミンホの俳優としての魅力は、その華のあるアクションにもある。前作『シティーハンター in Seoul』でも、そのスタイリッシュなアクションが高く評価されたが、今作ではさらに難易度の高い時代劇アクションに挑戦。『シティーハンター〜』のヤン・ギリョン武術監督と再びタッグを組み、時代劇と現代劇のアクションを融合させた新しいタイプのアクションを披露している。
時代劇に必須の剣術アクションでは、長い刀を自分の体の一部がごとく自由自在に操り、そのあまりのカッコよさにため息が出るほど。回し蹴りで敵を一撃したり、細やかな手わざで敵を次々倒していくアクションは、“アートアクション"と呼ばれ、視聴者からも絶賛された。また、宙を飛ぶようなワイヤーアクションも繊細な動きを交え、迫力がありながら、リアルで華のある美しいものになっている。それらのアクションのほとんどを、代役なしで挑んだ身体能力の高さには、ただただ唸るばかりだ。
型があり、服装や所作など制限の多い従来の時代劇アクションの観念を、軽やかに飛び越えた“魅せる"アクション。イ・ミンホのアクションは、スタイリッシュで美しい。時代劇の世界に、アクションという意味でも新たな風を吹き込んだといえよう。
◆王と臣下とのの信義
恭愍王の人間性を知り、仕えるべき王として信じたヨンは、どんな時も揺るがぬ忠誠を貫く。率直な民の声として進むべき道を示してくれるヨンに対する王の信頼も篤い。信じ合う2人が、互いに交わした約束を大切に守ろうとする姿も感動ものだ。
◆隊長と部下との信義
普段は寝てばかりだが、いざという時は的確な判断力と圧倒的統率力で隊を率いていくヨン。隊員各自の能力を熟知し、彼らを守ろうとするヨンに向けた隊員達の敬愛の念は深い。どんな状況でもヨンに絶対の信頼を置く隊員達の忠誠心は泣ける!