「蓮花楼」「猟罪図鑑」…いま中国で急成長ジャンル“ヒロイン不在”ドラマの魅力
ラブ史劇、ファンタジー時代劇、異世界転生、ブロマンスにショートドラマ……中国ドラマ史は数々の人気ジャンルに彩られてきました。 今ある定番ジャンルも、まず人気に火がつき、ブームを経て定着してきたわけですが、今、注目の急成長ジャンルが “ヒロイン不在ドラマ(無女主)” です。
しかし、従来の中国ドラマは「女主(女性主人公 / ヒロイン)」「男主(男性主人公)」に男女の二番手、三番手と続くのが基本スタイルだったはず。ヒロインがいないとはどういうことなのでしょうか。この新ジャンルを牽引する話題作の魅力を紐解きながら、 “ヒロイン不在ドラマ” の魅力を探っていきます。
ヒロイン不在ドラマとは
「蓮花楼」© Beijing iQIYI Science and Technology Co Ltd. & H&R Century Pictures Co.,Ltd. All rights reserved.
ヒロインが不在とは、男性しか出ないドラマということ? ……ではなく、もちろん女性キャラも大活躍、作品によっては主人公の元恋人なども登場するぐらいです。そこをあえて “ヒロイン不在” と呼ぶ理由は、「男女の恋愛に主軸を置いていない」という点にあります。登場人物間の友情や宿敵同士のような恋愛以外の関係性がフォーカスされているのです。
熱い友情、そして男女の恋愛要素薄め……男性が主人公の作品の場合、少しブロマンスに似た香りがしませんか? “ヒロイン不在ドラマ” にはブロマンスファンを魅了したことで、注目されたという経緯があります。友情主軸の作品は以前から存在しましたが、“ヒロイン不在ドラマ” という名称がつきジャンル化した背景には、似た要素を持つブロマンスがすでに浸透していたことがあるのかもしれません。
「蓮花楼」で見る “ヒロイン不在ドラマ” の魅力
(1)主人公を取り巻く大きな情念
さて、現在の “ヒロイン不在ドラマ” 人気の立役者になったのは時代劇「蓮花楼」です。ミステリーにして武侠ものでもある「蓮花楼」を例に “ヒロイン不在ドラマ” の魅力を見ていきましょう。
ストーリーをざっくり紹介すると、飄々とした神医の李蓮花(りれんか / チョン・イー演)、名家の出でありながら自身にある使命を課して旅立った少年・方多病(ほうたへい / ツォン・シュンシー演)、李蓮花の宿敵・笛飛声(てきひせい / シャオ・シュンヤオ演)という3人が武術と智力で事件を解決しながら巨大な陰謀に立ち向かい、その中で絆を育んでいく物語です。この3人の関係性が絶妙だと大きな話題になりました。
まず、李蓮花には、彼の正体が武林の盟主・李相夷(りしょうい)であるという秘密があります。そんな李蓮花を憧れの師匠・李相夷だと知らずに友情を深めていく方多病。いつしか方多病は李蓮花=李相夷ではないかという疑念を持つようになりますが、李蓮花は過去に思うところがあり、絶対に正体を明かしません。方多病は李相夷への憧憬を抱きながら、目の前の李蓮花の背中を見つめ、さらに李蓮花も幼さ残る方多病を心で見守り……二人は師弟にも父子にも似た関係を築いていきます。
方多病(左)と李蓮花(右)
二人の関係性だけでも胸に刺さるものがありますが、「蓮花楼」は3人目の男・笛飛声が登場してからが真骨頂です。過去の因縁から李相夷に並々ならぬ執着心を抱く笛飛声。死んだと思っていた李相夷を李蓮花の中に見出した彼の気持ちを想像すると……これ以上の言葉はいらないでしょう!
実は、カリスマ性ある主人公のもとに人々が集うこと自体は、武侠では定番で、それほど珍しいことではありません。その定番とブロマンスとの親和性が爆発したのは、やはり視聴者側の変化が大きく影響しているのではないでしょうか。
笛飛声
「蓮花楼」で見る “ヒロイン不在ドラマ” の魅力
(2)自立した女性像
「蓮花楼」の “ヒロイン不在ドラマ” としての魅力は女性キャラクターの描写にもあります。本作には李蓮花の元恋人の喬婉娩(きょうえんべん / チェン・ドゥーリン演)、笛飛声を慕う部下の角麗譙(かくれいしょう / ワン・ホールン演)という女性が登場します。
喬婉娩は武芸の心得がある正義感の強い女性であり、角麗譙も腹心として笛飛声から認められる実力者です。彼女らを起点とした恋愛要素は全くのゼロではありませんが、彼女たちは恋だけに夢中になったり、相手に依存していらぬトラブルを起こすことはありません。だからと言って存在感がないわけではなく、己の信念をしっかりと持った物語のキーパーソンでもあるのです。“物語の花” や “添え物” ではなく一人の人間として描かれる彼女たちには共感したり、同情したり、応援したくなることもあるでしょう。自立した人物と描かれた点が好意的に受け止められています。
これ以上はネタバレになるので控えますが、「蓮花楼」は熱い絆を見せる主人公たち、自立した女性キャラ、さらに武侠ファンを唸らせる華麗なアクション、想像を超える謎解き展開という魅力で中国ドラマ界に新風を吹かせ、“ヒロイン不在ドラマ” 人気の象徴となりました。
喬婉娩.
角麗譙
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「蓮花楼」以降、“ヒロイン不在ドラマ” ブームは既存の作品にも波及しています。例えば定番作では、正反対のバディによるサスペンス現代劇「猟罪図鑑~見えない肖像画~」(主演:タン・ジェンツー&ジン・シージャー)、近代の天津を舞台にしたダークミステリー「河神-Tianjin Mystic-」(主演:リー・シエン&チャン・ミンエン)と「河神Ⅱ-Tianjin Mystic-」(主演:ジン・シージャー&チャン・ミンエン)が再注目されています。
また、新作では白猫名探偵と個性的な仲間たちの活躍を描く「大理寺日誌〜謎解く少卿には秘密がある〜」(主演:ディン・ユーシー)も「わちゃわちゃが楽しめた」「みんなの関係性が良かった」という感想が多く寄せられました。
作品のテーマは様々ですが、いずれも「熱い友情と絆」「恋愛主軸ではない」「女性キャラが自立している」という共通点が見てとれます。さらに “ヒロイン不在ドラマ” にハマった視聴者が一周回ってブロマンス劇を見始めているという動きも! さらに大きな枠でのブームになりつつあるのです。
新作だけでなく、既存の作品の魅力も再発見させてくれた“ヒロイン不在ドラマ”。中国ドラマをより活性化させるジャンルへと成長していくのかもしれません。

チャート制作・解説執筆:沢井メグ(ライター/中国語翻訳者)
大学で中国語と出会い上海留学、上海万博での勤務を経てライターとなる。エンタメ系を中心に中華圏のニュースの執筆、取材、翻訳。主な訳書に台湾ドラマ『いつでも君を待っている』の原作『用九商店』(トゥーヴァージンズ)等
Twitter @Megmi381
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2025年3月25日発売/2,530円(税込)
※地域や書店によって販売開始時期が前後する可能性があります
著者:藤萍 訳者:浜見凪
ヴォワリエブックス (発行・発売:日販アイ・ピー・エス株式会社)
全4巻、順次発売予定
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