Cinem@rt エスピーオーが運営するアジアカルチャーメディア

『石門』ホアン・ジー監督がタイトルに込めた思いとは

『石門(せきもん)』場面写真
©YGP-FILM

“中華圏のアカデミー賞”と称される第60回台北金馬獎(2023年11月開催)で日本資本映画と初の《最優秀作品賞》を受賞、《最優秀編集賞》との2冠に輝いた映画『石門(せきもん)』(2022)が2月28日(金)から全国順次公開。

新たに解禁となった場面写真は、主人公のリン(ヤオ・ホングイ)が、恋人に妊娠を伝えた直後の様子を捉えた一枚。想定外の事実に頭を抱える恋人は、「もうすぐ君は航空会社と面接だ。こんな機会を逃すのはもったいない」と彼女をいたわる言葉をかけながら、「タイミングが悪い」と暗に中絶を促す。妊娠の責任を負うべき立場でありながら、まるで彼女一人の問題にするかのような恋人の態度に、沈んだ気持ちが滲むリンの背中が印象的だ。  

本作は、ホアン・ジー監督が「どうして私を生んだの?」と当時5歳の娘から尋ねられたことが製作のきっかけになっている。その時、どう答えたら良いかわからなかったホアン・ジー監督は、「少女から大人になりかけている女の子が、出産を悩む姿を撮ることで、その答えを導こうと考えた」と撮影に臨んだ。 『石門』というタイトルは、「女性を取り巻く環境に存在する、打ち破りたくてもなかなか突破して先に進めない壁」を指している。望まぬ妊娠が判明したにも関わらず、恋人の協力が得られないリンは、自分ひとりでは乗り越えられない大きな壁に直面する。診療所を営む彼女の母は死産の責任を追及され、高額な賠償金を支払うためにリンも働いて助けねばならない。

中国では、優秀な遺伝子を望む富裕層等を相手にした代理出産が闇ビジネスとして常態化している。子どもを産むことを決意したリンは、賠償金の代わりにその子を差し出そうと考えるのだが…。

ホアン・ジー監督は、「彼女のお腹の赤ちゃんも石の門を突き破ってこの世界に出てくることができるのか。そんな意味を込めました」と主人公リンの物語を紡いでいった。現代を生きる女性の多くが直面する普遍的な問題を静謐なタッチで切実に描き出す『石門』の結末を、ぜひ、劇場で見届けていただきたい。

『石門』
2025年2月28日(金)より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、シネリーブル池袋ほか全国順次公開

2022/日本/中国語/2時間28分/DCP/原題:石門/英題: Stonewalling/配給:ラビットハウス
©YGP-FILM
公式HP: https://stonewalling.jp/
公式X: https://x.com/usaginoie_film

記事の更新情報を
Twitter、Facebookでお届け!