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イベントレポ|サモ・ハン、倉田保昭、谷垣健治登壇! セミナー「カンフー映画の過去・現在・未来」(東京)

TIFFCOMにて開催された「Hong Kong Films @ Tokyo 2024」で、セミナー「カンフー映画: 過去、現在、そして未来」が行われ、香港を代表する武術家でありアクション映画の巨匠サモ・ハン(洪金寶)氏、俳優であり武術家の倉田保昭氏、著名なアクション監督であり映画監督の谷垣健治氏が登壇した。

日程:2024年10月31日(木)/会場:東京ポートシティ竹芝 ポートホール
※以下、敬称略

映画界に入った頃についてサモ・ハンは、「幼いころは京劇を必死に練習し、16歳の時に映画界に入りました。何も知らなかったけれど、映画を撮るとなったら、あれもこれもやらないといけない。そこで様々な師匠からアクションを学びましたし、ボクシングなど西洋の武術も学びました。マンガからも、こんな動きやこんな拳法があるんだ、と学んで吸収しました。すごく楽しかったですね。今でも、この仕事は生涯をかけてやり続ける天職だと思っています」と振り返る。そして「私だけじゃなく、他の監督や俳優もみんな努力してきました。努力は裏切りません。映画を撮るときは “絶対やる”。“出来ない”とは言いません、“できる”と言い続けることです」と語った。

倉田も当時の印象的な出来事を明かし、「サモ・ハンさんが撮影で来日しているとき、お茶しようと誘ってくれて。「倉田さん、いま何やっているの?」と聞かれたんだけど、その時はテレビで干されていたから「いま仕事ないんだよ」と答えたら、彼が「もったいないよ!俺たちとやろうよ!」と言ってくれて。それで出演したのが『七福星』です。そこでもう1回香港で勝負したいという気持ちになりました。香港映画が無ければ、今の自分も俳優生活もありません。香港には足を向けて寝られません」と香港映画への感謝を述べた。

谷垣は、「私は小さいころからカンフー映画が大好きで。倉田アクションクラブで学んだあと、一歩踏み出してみようと香港に行きました。やりたい気持ちはあるけど、言語も何もわからなくて最初から学びました」と話し、「なぜ香港のカンフー映画は素晴らしいか。それは、アクション監督が幅広い仕事をしてくれるからです。だからこそ全てを掌握でき、幅広く様々なアレンジも出来る。これは香港のいいシステムだと思っています。たとえば、兄貴(サモ・ハン)は自分でワイヤーも操るし、カメラだって持つし、編集もする。アクション指導だけにとどまらず、撮影から編集まで全部できてしまうんです。それはとてもいい教育になっていて、我々もそれを学び、実践しています」と、香港映画ならではの特徴を紹介した。

東京国際映画祭でも上映され話題を呼んでいるサモ・ハン出演・アクション監督を谷垣が務めた大ヒット作『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』。本作について司会者から好きなシーンを聞かれたサモ・ハンは、「全部好きです。(谷垣)健治さんが私の体のことを考慮してアクションを作ってくれたので、苦労することもありませんでした。(本作が大ヒットをおさめ、)健治さんにも自分にも、おめでとう!と伝えたいです」とニコリ。

話題は次第に、香港映画の今後についての議論へ。まずは自身の監督作『The FURIOUS』を例に、香港映画の国際的な展開について聞かれた谷垣は、「どの国に行っても、香港映画の大きな影響を感じます。例えば(『The FURIOUS』出演の)ジョー・タスリムやヤヤン・ルヒアンも、私と同じで子供の頃にカンフー映画を観て育ってきた。僕らのオリジンは同じなんです。共通言語を持っているから、1言えば10分かってもらえて、やりやすかったです」と述べ、「『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』の時もそうでした。よく兄貴(サモ・ハン)に言ってたんです、ご自身が昔作ったアクションばかりですよ、って。子供の頃からずっと観て育ってきたカンフー映画ですから、体の中に組み込まれているんです」と語った。

近年の最先端技術やAIを使った映画制作については、サモハンは「上手にアクションをする俳優を見て、エフェクトを足そうとは思いませんよね。年をとっても、命を懸けて必死に歯を食いしばってやっています。自分は武道家としてやってきたわけだから、自分の手足を動かして表現する事、それに尽きると思います。なんでも自分でやる、諦めずに自分の頭を使って考える。指一本さえ動かさずにできることなんてありません」と語った。

セミナー終盤では、来場者からの質疑応答も。来場者から「若い世代に絶対観て欲しい3本」を聞かれると、サモ・ハンは「『ユン・ピョウ in ドラ息子カンフー』『ペディキャブ・ドライバー』『おじいちゃんはデブゴン』。これはぜひ見ていただきたいと思います。時系列で観てみると、それぞれ違う姿が見られると思います」、倉田は「印象に残っているのは『七福星』。冷房もなく40度ぐらいのセットの中でアクションをした記憶があります。それからジェット・リーと共演した『フィスト・オブ・レジェンド』、今は亡き親友であるコーリー・ユン監督の『クローサー』。この3つはぜひ」、谷垣は「70年代だったら『少林寺VS忍者』。日本と中国の武道が戦うという面白さがあります。80年代なら『ユン・ピョウ in ドラ息子カンフー』。90年代は、明日は違う作品を挙げているかもですが、今日は『酔拳2』を挙げます。2000年代以降は『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』見ていただきたいです」と、名作揃いのラインナップとなった。

そして「私たちが香港映画の為になにか出来ることはありますか?」との質問に、サモ・ハンは「香港映画のチケットを1人1日10枚買ってください。友達も誘って、一緒に映画館へ行ってください」と回答し、「観客からの支持なしに我々は輝くことはできませんし、創作を続けることもできません。皆さん、香港映画を支えてくれて本当にありがとうございます」と感謝の意を伝えた。

Text:Cinemart編集部

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