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インタビュー|「奇蹟」ウェイン・ソン(宋偉恩)&ホアン・ジュンジー(黃雋智)&アン・ジュンポン(安俊朋)

医学を志す苦学生、非情に徹しきれないヤクザ、ヤクザ組織で共に育った一蓮托生の同志ーー運命的に出会った4人の“奇蹟”の物語「奇蹟」のBlu-ray・DVD発売にあたり、出演者にインタビュー!

ヤクザ組織「義雲盟(イーユンモン)」に敵対する「竜幫(ロンバン)」のボス、張騰(ジャン・トン)役のウェイン・ソン(宋偉恩)さん、そんな彼を献身的にサポートする阿雋(アージュン)役のホアン・ジュンジー(黃雋智)さん、范哲睿の異母兄弟、范姜睿臣(ファンジアン・ルイチェン)役のアン・ジュンポン(安俊朋)さんに、出演の経緯や撮影エピソードなどをお聞きしました。


     ホアン・ジュンジー、ウェイン・ソン、アン・ジュンポン
ホアン・ジュンジーさん(左)、ウェイン・ソンさん(中央)、アン・ジュンポンさん(右)
©2023 “KISEKI: DEAR TO ME” Partners All Rights Reserved.

――まず「奇蹟」出演の経緯をお聞かせください。

ウェイン・ソン キャストの募集があったとき、すぐに出演したいと思いました。まだ原作小説も読んでいなかったし、脚本の内容もそれほど知らない段階でしたが、以前に見た原作のプロモーション映像の世界観がとても気に入っていたんです。だから本格的な映像化だと聞いて、素敵な作品に違いないから出たい出たい!って(笑)。最終的に、敵(かたき)役に合うということでキャスティングしていただきました。

ホアン・ジュンジー プロデューサーのアニタ(宋鎵琳)さんがオーディションをセッティングしてくれたことがきっかけです。その流れで、僕にこの役の可能性を見出していただきました。当時、脚本全体の内容はまだ知らなかったのですが、とても嬉しかったです。馴染みの方たちが大勢友情出演されるし、アニタさんたちが制作される作品です。皆さんとても才能がある信頼に足る方たちなので、出演を決めました。

アン・ジュンポン ジュンジーと同じで、僕もオーディションに誘われました。確か当時はみんなを見に行こうぐらいの気持ちで、別の角度から見てみるのもいいかなって。だから最初は出演するとは思っていなかったんです。制作準備の後半に入ったころに出演しないかと声をかけられて「いいですよ」と(笑)。今回の役は、これまで僕が演じてきたキャラクターとは違うタイプなのがいいと思い、出演を決めました。

――ご自身の役をどのように解釈されていますか? また役作りの上で、大切にしたことや意識した点を教えてください。

ウェイン・ソン 5年前(取材当時)の「反逆の季節」以来、敵役は長いこと演じていなかったのでチャレンジではありました。実際のところ、当時の役と演じ分けられたか自分でもよくわからないのですが、5年前の老猴とは違う悪役を演じたいという思いがあって。一番意識したのは張騰の内面、愛情不足という点かな。彼の物事の見方や選択にはそれが根底にあって自分のやり方で突き進んでいく、そこに重点を置きました。脚本家や監督、制作チームの皆さんとも相談して役を作り上げる中、例えを引き合いに出すのはあまりしたくないのですが、みんな『HUNTER×HUNTER』のヒソカ=モロウのようなイメージを求めていたようです。愛情を知らず、欲しいものを手に入れるためなら手段を選ばない、そんな攻撃的で支配的な点を意識して演じました。

ホアン・ジュンジー 僕が演じた阿雋は、張騰に対してとても献身的です。何かを手にいれたいわけでも見返りを求めるわけでもない。演じる中で僕が考えたのは、張騰を好きになること、でもそれを抑えること。張騰とのシーンでは、好きだけどそれを知られたくない、そんな心の中の葛藤が興味深く感じられました。

アン・ジュンポン 僕が演じた范姜睿臣は後半に登場するので、役作りの際、家庭環境などの人物背景ははっきりしていました。計算高い人間なので、できるだけ自分を冷淡に見せるようにしましたね。でも監督にはいつも「優しすぎる。もっと冷たく。もっと、もっと」と言われてしまって(笑)。自分では冷淡にしているつもりなのですが、もっとと求められるので、撮影現場ではまるで部外者であるかのように物事を俯瞰するようにしました。人をコントロールする方法はわかっているという感じで。

ウェイン・ソン 本当のジュンポンは“暖男”(癒やし系男子)なんですよ。女性にも男性にも同じようにすごく優しい。

ホアン・ジュンジー だから冷淡に見せるのは、相当な努力が必要だったと思います。

アン・ジュンポン (照れ笑いしながら) 撮影現場ではみんなとあまり冗談を言ったりせずに、一人でいるようにしましたね。

ホアン・ジュンジー、ウェイン・ソン
©2023 “KISEKI: DEAR TO ME” Partners All Rights Reserved.

――范哲睿と白宗易の仲を取り持つ、キーパーソンとしての面もありましたよね?

アン・ジュンポン 白范CPを助けたのは自分にメリットがあったからです。いわゆるウィンウィンですね。范姜睿臣はエゴイストで、欲しいものはあらゆる手段で手に入れる。それがたまたま白范CPを助けることになっただけで、もし自分に何のメリットもなければ、ああしなかったかもしれません。役作りの際は、そういう方向性で演じました。

註)白范CP:「奇蹟」のメインカップル、白宗易と范哲睿を指す略称

――范姜睿臣という人物にとても興味が湧いてきますが、実は『心機』という小説に描かれているとお聞きしました。映像化はありそうですか?

アン・ジュンポン ええ、『心機』の主人公は范姜睿臣と七叔(チーシュー)ですね。もし映像化されるなら、もちろん嬉しいです! 完成されたストーリーの中で、この范姜睿臣という人間性がより深く掘り下げられるので、映像化されるといいなと思います。

アン・ジュンポン、カイ・シュー
©2023 “KISEKI: DEAR TO ME” Partners All Rights Reserved.

――今回演じたキャラクターで、ご自分と似ている部分、全く似ていない部分は?

ホアン・ジュンジー 阿雋と似ているのは、黙って人を観察するのが好きなところですね。常に脚光を浴びたり、注目の的になったりするのを好まないところも似ています。似ていないところは、ヤクザ組織には入らないことでしょうね。

ウェイン・ソン わからないよ〜(笑)。

ホアン・ジュンジー とりあえず今はないから(笑)。

ウェイン・ソン 僕は執着心かな。欲しいものは絶対手に入れたい、手に入らなかったら悲しいし腹が立つ。そんなところが普段の僕と似ています。似ていないところは、暴力的な行為ですね。自分から手を出すようなことはありません。張騰は、何かといえば後輩を叩いたり殴ったりしますけど僕はしませんね。

アン・ジュンポン 僕はほとんど似ていないですよ。范姜睿臣は冷酷で腹黒い人ですから(笑)。あえて言うなら、きっちりタスク管理したいところかな。范姜睿臣はすべてコントロールしたがりますが、僕もある意味そういう面があります。彼は綿密に計画し、あらゆる手段を用いて100パーセント目的を達成するけれど、僕はそれほど賢くはないので、成功するのはミッションの50パーセントくらい。成功することもあれば失敗することもあります。

――「KISEKI+」では、張騰の范哲睿への思いが明らかになりますが、范哲睿のどんなところに惹かれたと思いますか?

ウェイン・ソン これまで張騰の周りには、足を引っ張ったり踏みつけて危害を加えたりする人しかいませんでした。幼いときからずっと辛苦を味わってきた張騰が、初めて甘さを味わわせてくれる人に出会ったんです。初めての経験に戸惑いながらも、その味がずっと忘れられなかった。でも好きという感情を知らないので、迷宮に迷い込んでしまったようなものです。実際には范哲睿の策略で、たぶんこの方法が張騰に有効だと知っていたんでしょう。案の定功を奏して、悪く言えば彼はもてあそばれてしまった。范哲睿にそこまでのつもりはなかったとしてもです。でも彼はその執着心が恋愛感情だとは気付かずに追い続け、白宗易に対しても憎しみを抱きました。張騰にとって、范哲睿は籠の中の小鳥で、それが逃げたから殺してやる、という心境だったのだと思います。

ウェイン・ソン、カイ・シュー
©2023 “KISEKI: DEAR TO ME” Partners All Rights Reserved.

――そんな張騰を、阿雋はそばでずっと支えていましたね。

ホアン・ジュンジー ええ。張騰に対する一種の憧れが好きに変わったのだと思います。阿雋の尽くし方は、ずっとそばにいて黙って見ているだけでいいという感じ。心理的に張騰の地位を高く、自分を低い地位に置いている。だから彼とどうなりたい、関係を発展させたいとは思っていなくて、彼がいいならそれでいいんです。

――報われない阿雋に、今ジュンジーさんから何か言ってあげたい言葉はありますか?

ホアン・ジュンジー 「好きだったら勇気を出してぶつかれ。人はありのままの自分でいてこそ、誰かから本当に愛してもらえるんだよ」、そう阿雋に言ってあげたいですね。

ウェイン・ソン 阿雋も“暖男”ですね(笑)。

――劇中では、張騰の阿雋への気持ちは描かれていませんでしたね。

ウェイン・ソン あれほど寄り添って手助けしてくれる人がいたことに気付かなかったんですよね。張騰はすごいビジネスをしたいとか、あるいは范哲睿が大事で、阿雋をないがしろにしていたと思います。死の瞬間、范哲睿への気持ちが愛だったと知ると同時に、これほど自分を気にかけて、たくさんのものを背負ってくれた人がいたのだとわかるんです。

ホアン・ジュンジー 張騰はちょっと偏執的な感じ。

ウェイン・ソン そう、すごい執念ですよ。敵役は必ずそういう執念を持っているものです。

ウェイン・ソン
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――范姜睿臣は兄の范哲睿とは複雑な関係性でしたが、彼からどのような影響を受けたと思いますか? 

アン・ジュンポン 范哲睿は表面上チンピラっぽく振る舞って裏社会に入ってしまったけれど、いろいろあって范家で暮らすようになってから、とても優しい人だと知ります。范哲睿と白宗易は大変なことがあったけれど、それらはもう過ぎたことで最終的には幸せになった二人の姿は、范姜睿臣にとってある意味羨ましかったんじゃないかな。范姜睿臣の辞書には一方通行のやり方しかない一方で、范哲睿は双方向の関係を築いて自分とは違うやり方で欲しいものを手に入れました。それは范姜睿臣に足りない部分でもあったので、やがて以前ほど冷酷じゃないふうに変わっていった、というのが自分の推測です。

――大御所ヤン・リエ(楊烈)さんとの共演シーンもありましたが、何か印象深い撮影エピソードはありますか?

アン・ジュンポン 僕が登場するシーンはそれほど面白くないんですよ。范姜睿臣は策略家なので、常に相手の腹を探っている感じで(笑)。でも9話のリエさんとのオフィスでのシーンは、みんなそれぞれの思惑や目的があって、敵対し合う感じが演じていて楽しかったです。

――今回は阿雋が一人残されてまた悲劇的な結末を迎えてしまいました。(「HIStory3那一天~あの日」」の)恩智CPのハッピーエンドが見たいという声もあるかと思いますが、今後共演するとしたらどんな役を演じてみたいですか?
註)恩智CP:恋人同士を演じた作品をきっかけに、キャスト本人(ウェイン・ソン=宋偉恩&ホアン・ジュンジー=黃雋智)の名前から一字を取り、カップリングした愛称

ホアン・ジュンジー ドラマでも舞台でも、僕たちはずっとカップル役で常に恋愛感情のある役どころだったので、次に共演するなら、例えば敵同士だったり、恋愛関係じゃないものならもっといいですね。これまでと違う関係性なら、良いチャレンジになりそうです。

ウェイン・ソン 実は「Life 線上の僕ら」とかハッピーな関係もないわけではないのですが、カップル役を何度も演じているうちに、こう抱き上げて次はジュンジーが上にいって……という感じの関係に慣れすぎてしまったので、もし新たなキャスティングがあれば挑戦したいです。例えば張騰と范哲睿とか……いや、それは恋愛感情があるから張騰と白宗易とか(笑)? 人質と誘拐犯、警察と強盗犯など、いつもとかけ離れたものがいいですね。もしハッピーエンドの作品をオファーしていただけるなら、もちろんそれもOKです。途中で誘拐犯と人質とか何らかのいざこざがあれば、なおいいですね(笑)。

ホアン・ジュンジー ウェインはとにかく誘拐されたいみたいです(笑)。

ホアン・ジュンジー
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――「奇蹟」にちなみ、これまでご自身に起きた奇蹟はありますか? あるいは未来に起きてほしい奇蹟について教えてください。

ホアン・ジュンジー 
僕はあります。

ウェイン・ソン ロトに当たったとか?

ホアン・ジュンジー ロトには当たってないけど、ある意味似たようなことかな。大学受験の面接の日、家に帰る途中の在来線の駅で爆発事故に遭ったんです。面接がうまくいかなくて落ち込んでいたところに事故に遭うなんて最悪だと思いました。でもよく考えたら、危険な目に遭っても無事だったこと自体が奇跡ですよね。数日後、大学から合格通知が届いたのも奇跡だと思います。どん底だと思ったら上昇して、まるでジェットコースターに乗っているような不思議な経験でした。

ウェイン・ソン あれは台湾でも大きく報道された爆発事故だったんですよ。確か8年前、松山駅で起きたんです。まだジュンジーと知り合う前でしたが、実は爆発事故の30分前に僕も松山駅にいました。僕たちは当時すでにすれ違っていたんですよ。これは別に奇跡とはいえないですけど(笑)。

アン・ジュンポン 二人のロマンチックなエピソードですね(笑)。

ウェイン・ソン そう、そのときから袖振り合う縁があったという話です。僕は宝くじに当たって欲しいですね。ロト当選!

アン・ジュンポン 僕も! 

ウェイン・ソン これ、ちょっとひどい回答ですか? でもお金を稼ぐのは大変じゃないですか。だからロトに当選したいです〜。

――お仕事が順調なので、これからもっと稼げるのでは?

ウェイン・ソン 確かにそうですが、ロトに当たったらもっといいじゃないですか。いや、やっぱりちゃんと記事にしていただけることをもう一つ言いますね。

ホアン・ジュンジー 今言ったことでも大丈夫では?

ウェイン・ソン (ジュンジーを見て)彼に出会えたのが奇跡だと思います(キリッ)。

アン・ジュンポン 僕は、奇跡とは言えないまでも、身の回りで起こる小さなことを含めて、とてもラッキーだと思っています。今のままで十分満足しているし楽しいですね。あ、でも「奇蹟」に僕がキャスティングされたのは奇跡と言えるかもしれませんね。

アン・ジュンポン
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――最後に、BLドラマの先輩方から、これから「奇蹟」を見る視聴者の皆さんに向けて、ここに注目すればより楽しめるというポイントを教えてください!

ホアン・ジュンジー 登場人物それぞれの関係に着目していただければと思います。各人物に何らかのつながりがあり、物語全体を結びつけているのが見どころです。僕のパートでは、阿雋と張騰の知られざる関係をご覧ください。もちろんそこまで細部にこだわらず、大筋をご覧いただけるだけでもOK。十分面白いですが、よく見ていただくと、小さなサプライズを見つけていただけると思います。

アン・ジュンポン 人生にそれほど多くの奇跡は起きないけれど、起こりうるという点で、「奇蹟」はある意味とてもリアルに描かれています。「奇蹟」は全体を通して非常に魅力的な作品ですが、付き合うことは不可能だと思われた二人が最終的に結ばれる、この世界にもまだ希望はあると思わせてくれる点が一番惹きつけられるところです。

ウェイン・ソン 先輩と言わせてもらえるなら、後輩4人は「奇蹟」で本当に素晴らしい演技を見せてくれたと思います。若い彼らが范哲睿、白宗易、陳毅、艾迪のような役柄を演じられたのは本当にすごいことで、皆さんにぜひお薦めしたいですね。彼らの演技をご覧になったら、きっと「奇蹟」の作品世界に引き込まれると思いますよ。

――お忙しい中、インタビューにお応えいただき ありがとうございました!


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聞き手・文:二瓶里美
編集者、ライター。2014年より台湾在住。中華圏のエンターテインメント誌、旅行情報誌、中国語教材などの執筆・編集に携わる。2020年5月、張克柔(字幕翻訳家・通訳者)との共著『日本人が知りたい台湾人の当たり前 台湾華語リーディング』(三修社)を上梓。

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