韓流20周年特集|エンタメライター高橋尚子が選ぶ「何度でも観返したい!心揺さぶる愛の名作5選」
目次|進化・深化の韓ドラ20年! ディープに分析
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#1 元祖からネトフリスターまで~韓流人気を牽引してきた俳優変遷
#2 シンデレラが夢に向かって闘うまで~年代別ヒロイン像
#3 お決まりでも、突飛でも、平凡でも、愛はいつも全力!~ラブストーリーの潮流
#4 ロマンスがなくてもヒットする!~ジャンルの多様化
#5 エンタメライター高橋尚子が選ぶ「何度でも観返したい!心揺さぶる愛の名作5選」
2003年、「冬のソナタ」がNHK BSで日本初放送され、今年で20年。“韓流”はブームからエンタメの一ジャンルとして定着し、韓国ドラマも日常に溢れている。この20年、様々なジャンルが育ち、数々の名作が生まれてきたが、やはり心に残るのは「愛の物語」だ。人と人が出会い、影響を与え合いながら、愛を知り、ともに成長していく過程を丁寧に描いていく韓国ドラマ。そのなかでも繰り返し観たい5本をセレクトしてみた。
恋の力で変わる難アリ御曹司が、悶絶レベルでいとおしい!
「1%の奇跡」(2003年)
MBC©2003
一流ホテルを後継する財閥3世の御曹司ジェイン(カン・ドンウォン)と、中流家庭に育った身のかたいヒロイン、ダヒョン(キム・ジョンファ)。出会って恋に落ちる可能性はほぼゼロのふたりの“契約交際”から始まる恋と成長を温かな視点で描き、大ヒットした“伝説”のホームラブストーリー。
物語は、財閥会長でジェインの祖父ギュチョル(ピョン・ヒボン)が、ダヒョンの人柄を気に入り、ふたりを近づけることから始まる。仕事はできるが性格に難アリのジェインを改造しようという魂胆だ。
そうとも知らずダヒョンと交際契約を交わすジェインだが、高校教師のダヒョンに乱暴な言葉づかいを正されたり、挨拶の仕方を注意されたりと、知らぬ間に調教されてしまう始末。文句を言いながらもダヒョンに感化され、わかりやすく変化していくジェインが悶絶するほどいとおしく、人のために動くことのなかった彼が、やがて
「持っているものを全部与えても、まだ何かを与えたい。その気持ちが愛だ」
と人を諭すようになるなど、驚くべき成長にこちらまで幸せな気持ちになってしまう。
韓ドラ史上に残る“憎めない”ツンデレ御曹司を演じたのは、当時23歳の新人だったカン・ドンウォン。いまや映画俳優として知られる彼の貴重なラブコメディとしても必見だ。
MBC©2003
御曹司との恋物語というと、よくあるシンデレラストーリーのようだが、主人公ふたりが結婚に至るまでの物語には、親と子のそれぞれの気持ち、互いの家族が歩み寄っていく姿が丁寧に描かれ、ホームドラマとしても秀逸。
「財閥より平凡で温かい家庭がいい」という堅実なヒロイン&その家族に、天下の財閥御曹司が尻に敷かれていく感じも微笑ましく、ドロドロがないのもいい。
「人生の99%が決まっていても、残りの1%の奇跡がすべてを変えることがある。自分が誰かにとって特別な存在になる方法は、目の前の相手を大切に思い、特別に接すること。それは誰にでもできる1%の可能性です」
ふたりのキューピットとなる財閥会長ギュチョルが最終話で伝えるこの言葉は、まさにこのドラマのテーマ。今でも心のメモに刻まれている韓ドラ名台詞のひとつだ。
MBC©2003
「1%の奇跡」
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異文化の結婚で成長していく孤独王子に胸キュン・どストライク!
「宮〜Love in Palace」(2006年)
©2006 Eight Peaks/MBC All Rights Reserved. ©2009 GD Corp inc.
もし韓国に王室が存在していたら、しかも、国民の憧れ、イケメン皇太子のもとに“平民”女子高生が嫁ぐことになったら……そんな乙女チックな設定で、日本でも“王子ブーム”を巻き起こした大ヒットラブコメディ。
一見冷たいが実は心に寂しさを抱える“ツンデレ”皇太子シン(チュ・ジフン)と、心優しいが静かな強さを持つ“ナイト”なユル(John-Hoon)が、ヒロインのチェギョン(ユン・ウネ)をめぐり、火花をバチバチ散らす “リアル王子”対決に、どれだけときめいただろう。
©2006 Eight Peaks/MBC All Rights Reserved. ©2009 GD Corp inc.
特に、はじめは冷たい態度のシンが、慣れない宮中生活に苦労するチェギョンのために陰でとりはからったり、ユルの前で「僕の妻だ」と釘を差したりと、“夫”として振る舞う言動はドキドキものだ。さらに、
「お前といると退屈しない」
「心臓が壊れたようにお前のことが気がかりで、顔が見たくなって考えると笑みがこぼれた」
と、心のうちを吐露していくシンに、心が揺さぶられまくり。しきたりだらけの王室で孤独に育ったシンが、家族の愛情に包まれて伸び伸びと育った“異文化”チェギョンと、ぶつかりながらも癒やされ変わっていく展開は、乙女心をくすぐる胸キュン・どストライクなのだ。
©2006 Eight Peaks/MBC All Rights Reserved. ©2009 GD Corp inc.
キュンばかりではない。王室の意向に従って生きてきたシンは、チェギョンとの出会いにより自分の意思で選択する生き方を知り、一方のチェギョンもまた、シンが背負う王位継承者の座の重みを知り、自身も“王室の人間”としてどう振る舞うべきか、考えるようになっていく。
「人間は、自分が世界の中心にいると自分しか見えない。しかし、一歩後ろに下がると他人が見えてくるものだ」
皇太后(キム・ヘジャ)が、シンとチェギョンにいう言葉だ。まさに、自分の世界しか知らなかったふたりが、結婚を通して、互いの世界を知り、それを受け入れ、夫婦としてひとつになっていく成長の物語だった。だからこそ今なお色褪せない魅力を放っているのだろう。
余談だが、23話のラスト、ごく平凡なカップルのように普通のデートを楽しむシンとチェギョンが雑踏のなかでキスをする場面について。これは、今でもはっきりと映像が浮かぶほど、韓ドラ史上に残る名キスのひとつだと思う。
©2006 Eight Peaks/MBC All Rights Reserved. ©2009 GD Corp inc.
「宮~Love in Palace」ディレクターズカット
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自分事のように錯覚する“恋する気持ち”が、ちくちく疼く!
「応答せよ1997」(2012年)
©CJ E&M CORPORATION
韓国で第一次アイドルブームが巻き起こった90年代を背景に、当時青春を送った仲間たちの現在まで続く恋の行方を描き出す“応答せよ”シリーズ第1作。
物語は1997年の高校生活を中心に進んでいくが、そこに描かれるエピソードの数々は、誰もの心にある“恋する気持ち”をちくちくと疼かせる。とくに、アイドルの追っかけに命がけの“がさつヒロイン”シウォン(チョン・ウンジ)と、そんなシウォンに振り回され続けている気難しい優等生ユンジェ(ソ・イングク)の幼なじみふたりの「近すぎて伝わらない・気づかない」関係から目が離せない。ふたりの物語には、ドラマチックな出来事や想像を絶する試練が降りかかるわけではないが、彼らが恋と友情のあいだで揺れながら成長していく姿には、恋愛あるあるのリアルなエピソードばかり。
何気ない瞬間にやってきたときめき、うまく伝えられないもどかしさ、傷つけたり傷ついたりしながらも、心配でいてもたってもいられない相手。
恋する気持ちについて、毎話テーマがあり、響きまくるのだ。
まるで過去の自分の恋でもあるかのように記憶を錯覚させる感覚は、これまでのドラマにないものだった。
©CJ E&M CORPORATION
過去と現在を行き来し、シウォンとユンジェを含めた、高校時代の仲間が誰と誰が夫婦になったのかに迫っていく展開も惹き込まれるポイント。ケンカしたり、別れたり、くっついたりしながら、愛し合った“ふたりだけの”思い出が、ひとつひとつ綴られ、最終話で出される答えに興奮せずにはいられない。
ちなみに、凄まじいエネルギーでアイドルを追いかけ続けるシウォンの推し活に文句を言いながらも、まるごと愛してくれるユンジェは理想の彼氏であり理想の夫。
普段は振り回されっぱなしだが、水飲み場での不意打ちキス(第1話)に始まり、非常階段キス(第14話)など、キスをリードするのはいつもユンジェでドキドキ感半端ない。“キス職人”ソ・イングクに心奪われる。
©CJ E&M CORPORATION
「応答せよ1997」
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キュンの時代は過ぎても、深くて温かな愛に昇華していく
「ゴー・バック夫婦」(2017年)
Licensed by KBS Media Ltd. ©Couple on the Backtrack SPC All rights reserved
ワンオペ育児に疲れ果てた妻ジンジュ(チャン・ナラ)と、仕事に追われる夫バンド(ソン・ホジュン)。結婚14年目にして離婚を決意した夫婦が、出会った当初の大学時代にふたりそろってタイムスリップしてしまったことから始まる“夫婦再生”ファンタジーロマンスの隠れ名作。
中身は38歳のまま、20歳の大学生に戻ったふたりの、オバサン、オジサンまるだしの言動に爆笑させられる一方、だてに長く生きてきたわけじゃない!年の功ゆえの危機対応力と行動力で、周りの仲間たちの気持ちを察し、あれこれと世話を焼く頼もしさに、若さのエネルギーもいいけれど、経験を積み、「大人になること」って素晴らしい!と思わされることしきり。
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2度と同じ過ちを繰り返すまいと心に誓い、理想の相手とやり直そうとするふたりが、結局は互いが気になり、つい手を差し伸べてしまう展開も、胸にじわっとくるものがある。時間が巻き戻っても変わらない、ふたりだけの思い出や絆がそこここに浮き彫りになり、お互いにかけがえのない、唯一無二の夫であり、妻であることに気づいていくのだ。
キュンの時代は過ぎても、こんなに深くて温かな愛に昇華していくのだと、ふたりのやり取りに胸打たれてしまう。
そして、ジンジュの母ウンスク(キム・ミギョン)の存在だ。現在ではすでに亡くなっているウンスクに再会したジンジュは、あらためて母の愛を知る。
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「子供は親なしでも生きられるけれど、親は子供なしでは生きられないの」(ウンスク)
今は亡き母が、過去からやってきた娘、母となった娘に語り聞かせる母の思いに号泣。夫婦の愛、親子の愛、家族の絆にひたすら泣かされるドラマだった。
ちなみに、母の愛に飢え、“オバサン”ジンジュに癒やされていく大学の先輩ナムギルを演じたチャン・ギヨンが、本作で一気にライジングスターに。ジンジュ&バンドの夫婦関係にいい意味で刺激を与えた胸キュンパート、チャン・ギヨンのクールな魅力も目を引く。
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「彼の愛は本物か」夫婦の切ない感情のせめぎあいに心揺さぶられる
「悪の花」(2020年)
© STUDIO DRAGON CORPORATION
妻子を愛し、彼らの前で柔らかな笑みを浮かべる男には、知られてはいけない過去があった! 過去を封印し、正体を偽って生きる夫ヒソン(イ・ジュンギ)と、14年間愛し続けてきた夫に疑いを抱き始める刑事の妻ジウォン(ムン・チェウォン)。この愛は本物なのか。夫婦のスリリングで切ない感情の揺れを描いたサスペンスロマンスの傑作。
「明かしてしまおうか、俺がどんな人間なのか——」
冒頭からヒソンの謎めいたセリフで始まり、1話にして衝撃の展開。ヒソンの正体が殺人容疑者ト・ヒョンスであることが早々に明かされ、サスペンスの様相を呈していくが、声を大にして言いたい。
これは、究極の愛の物語だ。
「果たして彼は犯人なのか」はもちろん、「彼の愛は本物なのか」が物語の軸。夫婦の切ない感情のせめぎあいに、心揺さぶられるのだ。
© STUDIO DRAGON CORPORATION
なにせ、ヒソンの実父は連続殺人鬼のサイコパス。その血を引く自分には人間らしい感情が欠如していると思っている彼は、妻のジウォンに対する気持ちに愛という感情はないと信じ込んでいる。そんなヒソンが無意識のうちに、身を挺して彼女をかばい、彼女が喜ぶことを考え、行動しているさまに、
「だから、あなたはジウォンを愛しているんだって!」
と突っ込みたくなることたびたび。シリアスな展開のなかで、自分の感情に気づいていないヒソンの鈍感さ(ある種のピュアさ)が愛おしく、猛烈な萌えポイントになっている。
© STUDIO DRAGON CORPORATION
大切な妻の前で、いつ正体がバレるか、常に氷壁に立たされているようなギリギリのバランスで生きる主人公を、ときに危うく、ときにいたいけに、圧倒的吸引力で魅せていく、イ・ジュンギの名演が圧巻だ。
そんな夫との愛を、信じたい気持ちと、なぜ?という気持ちの間で行き来する妻の苦悩を繊細に表現したムン・チェウォンも良い。
そして、本作の真髄は最終話にある。ネタバレになるので詳しいことは避けるが、夫の妻に対する愛は本物だったか、彼らにとって夫婦であることの意味はなにか、ラスト1話全編をかけて、その答えが描かれていく。数々の名作ドラマのなかでも、とくにラストカットの美しさでは群を抜く秀作だと思う。
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『冬のソナタ』が日本で放送されてから20年。 今年は、日本における韓流20周年を迎えました。 当サイトでは、 関連イベントの情報やこの20年の韓流ブームを紹介したコラムなどを掲載し、 記念の年を盛り上げていきます。
TEXT:高橋尚子(編集・ライター)
ライター兼編集者。第一次韓流ブーム到来時に「韓国TVドラマガイド」(双葉社)を立ち上げ、現在まで責任編集を手がける。ドラマを中心に韓国のエンターテイメントについて、雑誌やWEB、DVDのライナーノーツなどで執筆活動を展開中。韓国エンターテインメントナビゲーター・田代親世さんと韓国エンタメについて熱く語り合うYou Tubeチャンネル「ちかちゃんねる☆韓流本舗」を配信中。https://www.youtube.com/@hanryuhonpo
Edited:野田智代(編集者、「韓流自分史」代表)
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