韓流20周年特集|進化・深化の韓ドラ20年! ディープに分析#3「お決まりでも、突飛でも、平凡でも、愛はいつも全力!~ラブストーリーの潮流」
目次|進化・深化の韓ドラ20年! ディープに分析
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#1 元祖からネトフリスターまで~韓流人気を牽引してきた俳優変遷
#2 シンデレラが夢に向かって闘うまで~年代別ヒロイン像
#3 お決まりでも、突飛でも、平凡でも、愛はいつも全力!~ラブストーリーの潮流
#4 ロマンスがなくてもヒットする!~ジャンルの多様化
#5 エンタメライター高橋尚子が選ぶ「何度でも観返したい!心揺さぶる愛の名作5選」
2003年、「冬のソナタ」の日本初放送により韓流ブームが巻き起こって今年で早20年。今でこそジャンルも多様化し、人間ドラマやサスペンスなどでも高い評価を得ている韓国ドラマだが、その醍醐味、真髄は、やはり「愛の物語」にあるように思う。一生に一度の恋かと思われるほど、愛することに凄まじいエネルギーを注ぐ主人公たちに、どれだけときめかされてきただろう。というわけで、今回はラブストーリーに特化して、その変遷を見ていきたい。
出生の秘密、因縁、記憶喪失…
お決まりの「足かせ」から、“本質”と“リアル”重視に
韓ドラにおいて主人公たちを動かすものは、「愛」の前に、実は「試練」「足かせ」があったりする。「冬のソナタ」にしろ「天国の階段」にしろ、韓流ブーム初期作品で、主人公カップルの前途を阻むのは、出生の秘密、親の因縁、身分差に記憶喪失、恋のライバルに難病といったお決まりの足かせがあった。
阻まれるほど、葛藤が深まり、互いの大切さを知り、愛は強固なものになっていく。一途で切なくドラマチックな展開が、THE韓ドラの魅力なのだ。
足かせがパターン化してきた頃、これを覆すものが出てきた。それが、2004年の「バリでの出来事」であり、「ごめん、愛してる」だ。
野心か、愛か。復讐か、愛か。
“悪い女”“悪い男”の登場で、愛の本質があぶり出される衝撃作だった。この2作は、“廃人(ペイン)”と呼ばれる熱狂的ファンを生み出したほど。
「魔王」(2007年)、「赤と黒」(2010年)と、この系譜を継ぐ作品はいずれもペインを生み、韓ドラ得意のジャンルとなっていく。
「赤と黒」©アジア・コンテンツ・センター グッド・ストーリー NHK
一方で、重い足かせを取っ払った等身大ロマンスも支持されていく。それが、2005年の「私の名前はキム・サムスン」だ。身分差と年上女子という足かせはあったが、それ以前のドラマのようにシリアスでない。
「いつか別れがやってくるかもしれない。どんなに愛し合っていても、先に何が起こるかわからない。でも今は愛し合っている」
という最終回のメッセージは、恋愛のリアルだった。ドラマチックとは違う描き方で、韓ドララブストーリーの幅を広げる作品となった。
同性!? 人間じゃない!?
身分差なんて当たり前、予想外の切り口が登場
時代とともに、難病や出生の秘密、記憶喪失といった足かせは減っていくが、その分、予想外の切り口も出てきた。その走りが、「コーヒープリンス1号店」(2007年)だ。
「君が好きだ。君が男だろうと、宇宙人だろうと、もう気にしない」
という主人公ハンギョル(扮コン・ユ)の告白の衝撃たるや。そんじょそこらの身分差はもはや当たり前。それを上回る足かせとして提示されたのが、「同性愛」だった(実際は違うが)。
「コーヒープリンス1号店」© MBC 2007 All Rights Reserved
「君が男」はあっても、「君が宇宙人」は想像だにしていなかったが、韓国ドラマは大胆かつ柔軟だ。この宇宙人も来てしまうのだ。「星から来たあなた」(2013年)である。
そもそも恋愛は異文化交流。そういう意味で、宇宙人と恋に落ちるこのドラマは、異文化交流の最たるもの。あまりにも突飛な設定だが、相手が「いつかここを去ってしまう」という足かせは、切なさを生み出す装置として優れものだった。
結果、宇宙人とトップ女優のロマンスにアジア中が夢中になった。そして、「星から〜」の成功は、のちの「トッケビ〜君がくれた愛しい日々〜」(2016年)や「ハベクの新婦」(2017年)につながっていく。
「ハベクの新婦」©STUDIO DRAGON CORPORATION
切なさは、ついに時空を超える!
ファンタジーは、名作の宝庫
そういう意味で、タイムスリップを素材にした「シンイ-信義-」「イニョン王妃の男」「屋根部屋のプリンス」(すべて2012年)も、他の時代から来た相手が「いつか去ってしまう」切なさが根底にあり、2人の愛が深まれば深まるほど、視聴者の心を揺さぶった。
「シンイ-信義-」©The Great Doctor LLC and Master Works Ltd. Licensed by TOUCHSKY Ltd.
マンガの世界の主人公と恋に落ちる、「W-君と僕の世界-」(2016年)もこの系譜だろう。 そして、今やファンタジーロマンスは韓ドラ名作の宝庫になっている。
また、「君の声が聞こえる」(2013年)から始まる、ロマンスにサスペンスの要素を入れ込むパターンは、「愛する人を危険から守りたい」という切実さが、2人の絆を強くする仕掛けとなった。
殺人の加害者の息子と被害者の娘の愛を描いた「ここに来て抱きしめて」(2018年)もこれに当たる。悲しい宿命は純愛を生む。
何かの試練が加わることは、愛を描くうえで必須なのだ。
「ここに来て抱きしめて」©2018MBC
あり得ないけど、想像し得るリアル度が絶妙!
「愛の不時着」はファンタジーの進化系
そして、ある種ファンタジーの進化系といえるのが、2019年の「愛の不時着」だ。「冬のソナタ」が純愛+足かせの切なさでシンドロームを巻き起こしたとすれば、「愛の不時着」はラブコメ+足かせという両極のタッチをうまく掛け合わせた成功例。
北朝鮮と韓国という国境を超えた男女の異文化交流をコミカルに見せつつ、南北の叶わぬ恋という切ない展開に昇華した手腕は見事。本来ならあり得ない設定だが、想像し得るリアル度が絶妙だったのだろう。
「愛の不時着」
ファンタジーやジャンルミックスものが果敢に作られる一方で、近年は「スタートアップ:夢の扉」(2020年)、「その年、私たちは」(2021年)、「二十五、二十一」(2022年)と、再び等身大ロマンスが増えている。
御曹司でも神でもない平凡な主人公たちが、夢を追いながら愛や友情を育んでいく、どこにでもあるシンプルな恋愛ストーリーだ。それでも、ドキドキさせられ、胸を締め付けられるのは、主人公たちがいずれも愛に対して真っ直ぐで全力だからだろう。
様々な切り口で、愛というものを真正面から描いていく韓国ドラマ。そのエネルギーを、羨ましく思い憧れる気持ちが、韓ドラに魅了され続ける理由なのかもしれない。
「二十五、二十一」
<#4「ロマンスがなくてもヒットする!~ジャンルの多様化」につづく>
『冬のソナタ』が日本で放送されてから20年。 今年は、日本における韓流20周年を迎えました。 当サイトでは、 関連イベントの情報やこの20年の韓流ブームを紹介したコラムなどを掲載し、 記念の年を盛り上げていきます。
TEXT:高橋尚子(編集・ライター)
ライター兼編集者。第一次韓流ブーム到来時に「韓国TVドラマガイド」(双葉社)を立ち上げ、現在まで責任編集を手がける。ドラマを中心に韓国のエンターテイメントについて、雑誌やWEB、DVDのライナーノーツなどで執筆活動を展開中。韓国エンターテインメントナビゲーター・田代親世さんと韓国エンタメについて熱く語り合うYou Tubeチャンネル「ちかちゃんねる☆韓流本舗」を配信中。https://www.youtube.com/@hanryuhonpo
Edited:野田智代(編集者、「韓流自分史」代表)
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©アジア・コンテンツ・センター グッド・ストーリー NHK
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