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《台湾ドラマの今を考察する》第1回 キラキラ眩しい恋愛ドラマから、リアリティ追求型のドラマへ

2003年「流星花園〜花より男子〜」の日本初放送以来、その魅力にハマり、台湾ドラマ・ウォッチャーとなった方も少なくないかもしれない。当時、一作品あたり20話超という長い尺が標準だった台湾ドラマは、原作をより忠実に再現できる強みを生かし、日本の漫画との親和性が高かった。「イタズラなKiss〜惡作劇之吻〜」(05)や「悪魔で候~惡魔在身邊~」(05)に代表される数々のヒット作を生むと同時に、F4、ジョセフ・チェン(鄭元暢)、アリエル・リン(林依晨)、マイク・ハー(賀軍翔)、レイニー・ヤン(楊丞琳)ら人気スターも輩出した。

そんなアイドルドラマ全盛期から約20年がたった今、再び台湾ドラマが熱い。今回は直近10年ほどの台湾ドラマについて考察してみたい。



キラキラ眩しい恋愛ドラマから、リアリティ追求型のドラマへ

「年下のオトコ」場面写真
「年下のオトコ」©2017 Gala Television. All Rights Reserved.

2010年代は、台湾ドラマにとっての過渡期だったといえる。韓国ドラマのリメイク美男<イケメン>ですね~Fabulous☆Boys(13)、ヤクザの御曹司と恋に落ちるアニキに恋して(愛上哥們)(15)など男装ヒロインという中華圏古来の鉄板設定や、王子様をオトせ!(就是要你愛上我)(13)のように、庶民女性が高スペック男性と恋に落ちるシンデレラ要素強めのラブストーリーが根強い人気を誇る一方、よりリアリティのある恋愛ドラマも大きな支持を得るようになった。


長年の友情が恋へと変わるイタズラな恋愛白書~In Time With You(我可能不會愛你)(11)や、30代バリキャリ女性と大学生純情男子の恋を描いた年下のオトコ(我的男孩)(17)は、アイドルドラマを見ていた視聴者が年を重ね、より共感できる等身大のドラマを求めた結果、生まれた作品といえるかもしれない。両作品に共通するのは、ヒロインの恋の相手が十分身近にいそうな男性であること。もちろん演じる俳優のルックスは身近にいるとは言い難いが、人物設定としては手の届かないようなレアキャラではない。仕事に邁進する女性の多くは、いつしか男性にハイスペックを求めなくなっていた。何より必要なのは誠実さと優しさで、ひたすらヒロインの気持ちに寄り添い、癒してくれる人。例えば「イタズラな恋愛白書」で、胸に恋心を秘めながらもヒロインのよき理解者として寄り添った大仁は、理想の恋人として人気沸騰。働く台湾女性の恋人像をリアリティ豊かに体現したチェン・ボーリン(陳柏霖)は、「大仁哥」の名で親しまれ、再ブレイクを果たした。

また、不倫問題も他人事ではなくなった昨今、よき父であり伴侶だったはずの夫の浮気によって、壊れていく夫婦関係を細やかに描いた結婚って、幸せですか(犀利人妻)(10)は、ドラマに没頭しすぎたファンから、夫役のウェン・シェンハオ(温昇豪)と浮気相手役のアマンダ・ジュー(朱芯儀)自身にも非難の声があがるほどの社会現象を巻き起こした。


同性婚合法化に先立ち、司法院大法官会議(憲法裁判所に相当)が「同性婚を認めないのは憲法違反」との判断を下した2017年には、BLドラマ「HIStory」シリーズの第1シーズンが配信。「HIStory」シリーズは現在第5シーズンまで制作されており、いずれの作品もヒットしている。以降、Be Loved in House 約・定~I Do(21)、We Best Love 永遠の1位/2位の反撃(21)など、台湾発の良質なBLドラマも次々誕生し、日本を含むアジア全域でファンを魅了している。

ハイスペック王子様とのキラキラした恋愛ドラマももちろん夢があって楽しいけれど、この10年でより多様化した台湾の恋愛ドラマは、リアリティを追求したストーリーや現代社会を反映した人物設定の作品が増えていった。


第2回「政府の援助と外資参入により迎えた転換期」につづきます


Text:二瓶里美
編集者、ライター。2014年より台湾在住。中華圏のエンターテインメント誌、旅行情報誌、中国語教材などの執筆・編集に携わる。2020年5月、張克柔(字幕翻訳家・通訳者)との共著『日本人が知りたい台湾人の当たり前 台湾華語リーディング』(三修社)を上梓。

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