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ラム・カートン、プロデュース作への熱い想いを語る「香港映画祭 Making Waves」11/9オープニングセレモニー+Q&A実施レポート

今年2022年、香港特別行政区は設立25周年。エキサイティングで活気あふれる国際都市・香港が迎えた大きな節目を記念し、日本未公開作品を含めた選りすぐりの香港映画8本を上映する、香港特別行政区設立25周年記念映画祭「Making Waves – Navigators of Hong Kong Cinema 香港映画の新しい力」が、11月9日(水)よりBunkamuraル・シネマにてスタート(11月13日まで)。

昨日11月9日(水)、本映画祭のオープニングを飾る『黄昏をぶっ殺せ』の上映前にオープニング・セレモニーが開催された。

 『黄昏をぶっ殺せ』登壇者の集合写真 
メイベル・チャン監督(左から3番目)、ラム・カートン(左から4番目)らが登壇

オープニング・セレモニーには、今年2022年春の大阪アジアン映画祭で上映されるや大好評を博し、本映画祭のオープニングを飾る『黄昏をぶっ殺せ』(2021)で脚本(何靜怡との共同脚本)およびプロデューサーを務め、昨年の東京国際映画祭で上映され世界的にも高い評価を受けた『リンボ』では主演を務めた俳優のラム・カートン、香港の4大映画会社が共同製作し、4人の新人監督が共同監督を務めた香港返還25周年記念作『同じ空の下』(2022)から、ティム・プーンとサニー・イップの監督二人、香港電影発展局副主席であり映画監督(『宋家の三姉妹』)のメイベル・チャン、香港国際映画祭エグゼクティブ・ディレクターのアルバート・リー、そして香港特別行政区政府創意香港アシスタント・ディレクターであり香港電影発展局事務局長のゲイリー・マックらが登壇し、場内を埋め尽くした大勢の香港映画ファンが盛大な拍手をおくった。

ゲストを代表して、香港電影発展局事務局長のゲイリー・マックは「今年は香港映画界にとって特別な年となりました。複数の大ヒット作があり、新時代を代表する新人監督たちが出現しました。この新しい力は、ここにおられる観客の皆さまの応援を得て、さらに大きく成長し続けていくと私は確信しています」と挨拶。

ラム・カートン1

続いて登壇したラム・カートンが「みなさん、こんばんは。私はラム・カートンです」と日本語で挨拶すると、思わず会場から歓声が! 「まずこの場を借りまして感謝申し上げたいと思います。私は今回(オープニング作品の)『黄昏をぶっ殺せ』にはプロデューサーそして脚本家という形で関わってきました。映画をご覧になった皆さんが感じたことを、ぜひ後程のQ&Aで教えてください」と続け、「これ以上お待たせするのはやめます。正直私はお腹がすきました」とユーモアあるコメントに会場が笑顔で包まれた。

オープニング作品『黄昏をぶっ殺せ』の上映後には、感動冷めやらぬ観客の大きな拍手の中、Q&Aのために再びラム・カートンが登壇!

かつて殺し屋としてタッグを組んでいたチャウ(パトリック・ツェー)、フォン(フォン・ボーボー)、チョン(ラム・シュー)の三人が、様々な事情で人生を終えたいと願う人たちのため自殺ほう助を請け負うことに。人生の黄昏期を迎えた彼らが、他者との関わりのなかで再びそれぞれの生を輝かせる姿をユーモラスに描いた本作。 まず製作することになった経緯について「皆さんが見てきた香港映画の多くは刺激的な映画だと思います。俳優として長年携わってくる中で、他のジャンル、他の選択肢はないのか、といつも自問自答をしていました。自分の生活や暮らしている香港について関心があり、そういった想いもあり脚本を作っていきました」と説明。

ラム・カートン2

次に、キャスティングについては、「3~4か月かけて熟考する中で、かつて凄腕の殺し屋だった主人公にパトリック・ツェーがぴったりなのではないか」と考え、オファーすることにしたが「自分はパトリック・ツェーのことを(愛称の)“4番目のお兄さん”と呼んでいるのですが、高齢ということもあり、芸能活動を最近はしていなかったこともあって、健康を心配する声も多かった。特に彼の友人たちがまるで“関門”のようで、まずは彼らの了解を得るように時間をかけてアプローチしました。“4番目のお兄さん”にはサングラスでかっこよくタバコを吸ってというイメージがあるが、自分としては大先輩である“4番目のお兄さん”の固定したイメージをこの役を通して変えてみたいという気持ちもあったんです」と熱望した理由を語った。

また、脚本作りついては、実はラム・カートンと共同脚本者ともに長編映画の脚本を手掛けるのが初めてで、時に家にまったく帰らず、食事もテイクアウトで済ませて時間を惜しみ没頭していたそうで「ずっと楽しかったが、それぞれの役柄に自分が入り込んでしまって、元の自分に戻ってこれないことがあり、その点は大変でした」と振り返る。一方、撮影現場では80歳を越えているパトリック・ツェーにいかに撮影を楽しんでもらえるかをずいぶん考えていたと明かし、パトリック・ツェーも1日に10時間以上も撮影する過酷な撮影でも一言も文句なく楽しんでいたという。そんなパトリック・ツェーは、本作での演技によって自身のキャリア初および史上最高齢(受賞当時85歳)で、「香港のアカデミー賞」と呼ばれる香港電影金像奨最優秀主演男優賞を受賞した。

ラム・カートン4

そして、この映画で好きなセリフやシーンを問われると「難しい質問ですね…」といいながら、思わず色々な想いが込み上げ、言葉に詰まるラム・カートン。一息つくと「(この質問については)どうしてこの脚本を書いたのかをお話ししたほうがいいかもしれません」と続け、「私は脚本や映画を通して、家族、友人、あるいは他人でも周りの人間に対して、少しでも関心を持つようになってほしい。なぜかというと、いま私たちが生きている社会は情がどんどん薄れていっているような気がします。年を取るとなかなか言えないこともあるけれど、それに対し、どういうことを求めているのか、私たちはこの人のために何ができるのか…後輩として人生の先輩に対して、理解や優しさ、応援する気持ちを持つことが必要だと思うのです。そうすれば、互いに支えあい、この世はもっとよくなるのではと考えています」と熱のこもった言葉で応え、改めて大きな拍手が沸き起こった。最後も日本語で「ありがとう」と笑顔で締めくくったラム・カートン。一つ一つの質問に丁寧に答える姿から、本作への深い想い、そして映画への愛を感じるイベントとなった。

『黄昏をぶっ殺せ』登壇者の集合写真2

共同制作プロジェクトを助成する新制度「香港・アジア映画共同制作助成制度」がスタート!
香港映画祭Making Waves主催である香港特別行政区政府 創意香港による、香港とアジア諸国の映画製作者による共同制作プロジェクトを助成する新制度がスタート。最大8企画に対して、最高900万香港ドルが助成される本制度は、国際的に認められた映画祭で受賞もしくはノミネート歴のある香港と日本を含むアジアの国・地域の監督、プロデューサー、脚本家が携わるプロジェクトが対象で、主要10ポジションのうち6つは香港の永住権保持者であること、総製作費の30%以上が香港で支出されることなどが条件となる。 本制度の詳細は香港特別行政区政府 創意香港(CREATEHK)のウェブサイト(中・英)へ。 https://www.createhk.gov.hk/en/index.html

香港特別行政区設立25周年記念映画祭「Making Waves – Navigators of Hong Kong Cinema 香港映画の新しい力」


2022年11月9日(水)〜13日(日)開催
会場:Bunkmamuraル・シネマ
※全て日本語字幕付き上映 

お問合せ:大阪アジアン映画祭事務局  makingwaves@oaff.jp   TEL 06-4301-3092
主催:香港特別行政区政府 創意香港/共催:大阪アジアン映画祭/協力:香港特別行政区政府 駐東京経済貿易代表部/
企画・運営:香港国際映画祭 / 特別協力:Bunkamura 
公式サイト:makingwaves.oaff.jp   
公式Twitter:@MakingWaves_HKC/公式Facebook:MakingWavesHKC

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