【イ・ジュンギ 魔法の言葉20選】前編:役作りと心がけ。こだわりの演技論
イ・ジュンギは、自分の言葉を、自分の考えを持つ俳優だ。どんな作品でも、どんな状況でも、どんな質問でも、明確な自分の考えをもとに言葉を発してくる。インタビューでも、ファンミーティングのようなファンとの交流の場でも、ハッとさせられるような言葉を残し、さらに彼を知りたくなるような魔法をかけていく。これまでのジュンギが発した言葉で、印象的だったもの、イ・ジュンギそのものを表したような言葉を振り返ってみた。
前編では、作品に向き合う姿勢や決意、イ・ジュンギの生きざまが見える演技論を取り上げます。
ドラマは、みんなで作るもの。スタッフ共演者への心がけ
その① 現場で大切にしていること
「作品が決まると、スタッフや共演者に声をかけて、飲みに行きます。そうすると、キャラクターを見つけられるし、お互いに話もできるので。
もちろん、台本を読み込み、その人物を研究する作業もありますが、でもまず必要なのは、ひとつの空間で何カ月か一緒に作業をともにする人たちとのつながりだと思うんです。現場で僕をサポートしてくれる人たちだし、彼らから何かを得られるかもしれないので。
現場ではバカみたいに歩き回って、スタッフにもたくさん話しかけますね。最初に台本をもらったら、セリフより先に、出演者とスタッフの名前を覚えることに時間をかけています」
(2009年「イルジメ[一枝梅]」でのインタビューより)
――台本のセリフより先に出演者とスタッフの名前を覚える。このルールは、イ・ジュンギが俳優になったばかりの頃から現在にいたるまで徹底して行っているもの。作品は1人で作るものではない、現場をともにする人たちを何よりも大切にする、という信念が、作品の質を上げているのだろう。どの作品の共演者とも長く付き合っているのは、そのためだろう。
その② 共演者との関係
「(敵対する役を演じる俳優とは、わざと距離を置く俳優もいるが)僕の場合は違いますね。親しくしてれば気兼ねがないから、むしろ強く叩けるし、振り回せる(笑)。
どうせなら気楽なほうがいですよ。アクションの段取りもいっしょに決められるし、疲れたら励まし合える。そういうことがうまくいったほうが、アクションもカッコよく見えます。
いずれにしても演技は現実ではなく、演技にすぎません。現実では、僕らは支え合い、刺激し合う仲間です」
(2009年「イルジメ[一枝梅]」でのインタビューより)
――なるほど、の言葉。親しくなってこそ、アクションも本気で挑めるのだ。
◆アクションシーンを撮影後、「おケガはありませんか?」と相手を気遣うジュンギ 【U-NEXT独占見放題記念 特別メイキング Part3「麗~花萌ゆる8人の皇子たち~」より】
作品をより輝かせるために、深く考え、話し合う
その③ 作品選びの基準
「(作品を選ぶ際の基準は)僕がその作品のなかで、どのくらい使いみちがあるか、です。僕が持つ長所を本当に必要とする作品なのかが重要です。
単に時代劇だから、この時代を描くからといって、面白さを感じるわけではありません。僕がその作品のなかで、本当に役立つ俳優なのか。自分のキャラクターによって、その作品がさらに面白くなって、質的にも高まるか。そういう部分をじっくり考えます。
僕が苦手な分野もあるじゃないですか。ゴツゴツしたイメージのものとか。苦手なものにまで、時代劇なんだからやってみなくちゃと手を出したら、空回りしてしまうと思います」
(2014年「朝鮮ガンマン」でのインタビュー)
――イ・ジュンギという俳優が、長くトップの座に君臨してきた理由がこの言葉にある。自身のエゴでやりたいことを主張するのではなく、求められることに真摯に応えることにこそ価値を見出しているのだから。
その④ 時代劇について
「時代劇で大切なことは、守ることと、冒険することです。基本的な時代考証を無視しては、その時代を、その時代に生きた人物のリアルを伝えることができません。そのため、当時の事件や世相などを監督といっしょに資料を読んで討論したり、確認し合う作業は必須です。一方で、完全に史実のとおりに描くことになれば、ものすこく退屈でもどかしいものになってしまう。
だから、史実を土台に、想像力を加味し、劇的な面白さ、緊張感、感動を組み込んでいくにはどうしたらいいか、綿密に話し合っていきます。やりすぎると視聴者に違和感を抱かせるので、いつも悩みながら作っていますね」
(2014年「朝鮮ガンマン」でのインタビュー)
――時代劇をただ得意だから、見せ場が多いから、演じているわけでなく、時代劇の見せるべき真意を理解しているからこそ、その魅力を熟知しているからこそ、守ることも、冒険することも大切にしている。そういう考え方にシビれる!
◆こちらのインタビューからも「主演俳優が頑張れば、現場の士気も上がる」と、責任感をもって作品に挑んだ様子がうかがえる。 【CinemartChannel 未公開「朝鮮ガンマン」イ・ジュンギインタビューより】
その⑤ 時代劇と現代劇との違い
「時代劇の現場から現代劇の現場に戻ったとき、もっとも違いを感じるのは、声量の差、話し方ですね。時代劇では、大きくはっきりした声量、ゆったりした口調で話すのが基本なので。長く時代劇を演じていると、そういった口調が癖になってしまいます。でも、僕も現代人なので、演じているうちにすぐに戻りますが(笑)。
アクションも時代劇の韓服だと、身体のラインがきれいに映り、動きも大きく見えるカッコよさがあります。一方で、現代物のアクションは、様々な制約があるなかで、短いテンポで相手を制圧するダイナミックさがあって、時代劇とはまた違った魅力がありますね。よりスピード感で見せていくイメージでしょうか」
(2017年「クリミナル・マインド:KOREA」でのインタビューより)
――イ・ジュンギの武器でもある「アクション」を、時代劇、現代劇それぞれの特色を表現した言葉。声もまた、彼の魅力のひとつだが、時代劇での大きな声量、ゆったりと堂々とした話し方をおさえているからこそ、現代ものでも緩急きかせた様々な声色が出せるのだろう。
◆現代劇「クリミナル・マインド:KOREA」で見せたアクションシーン。 【DVD-BOX1特典映像より】
純粋さを失いたくない――。役作りの分析と共鳴、そして同化
その⑥ 役作りについて
「俳優なら誰もがそうだと思いますが、そのキャラクターの生い立ち、育った環境などを想像し、なぜ今そうなっているのか、心の奥底まで深く分析しながら作り上げていきます。演じながら、可哀想になるときもあります。
たとえば、『クリミナル・マインド:KOREA』のヒョンジュン。過去の傷を克服しようとするあまり、自分の身を顧みず、追い込んでいく彼が不憫で、思わず抱きしめたくなってしまうような……そんな人物でした」
(2018年「クリミナル・マインド:KOREA」でのインタビューより)
――つらい境遇に育ったキャラクターを演じることが多いイ・ジュンギ。「クリミナル・マインド:KOREA」は、ジュンギ自身も語るように、母と兄が生きてこそいるが、なかなかハードな背景があった。思えば、両親がそろって存在するキャラクターは、ドラマであれば「麗<レイ>〜」くらいではないだろうか。(あれも寂しい境遇だが……)
その⑦ 純粋さ
「僕が演じるキャラクターの根底には、常に人としての“純粋さ”が流れていると思います。僕自身、いくつになっても、若々しくいられたり、想像力豊かでいられるのは、まっさらな心を失わずにいるからじゃないかと。
大人になり、経験を積んでいくと、下手に知恵がついて、現場で適当に手を抜く方法を覚えたりします。でも、そんなふうに現場をただの現場として考えてしまったら、与えられた役を普通にこなせるだけの役者になり、つまらないですよね。
誰も想像できなかったような表情が浮かび、それを演技で魅せられたとき、観た人が驚く。そういうことが、俳優としての信頼につながると、僕は思うんです。常にそうありたいから、いま持っている“純粋さ”は失いたくないですね」
(2015年「夜を歩く士<ソンビ>」でのインタビューより)
――どの現場でも、子供のようにイタズラっこの面があると共演者からも暴露されているイ・ジュンギ。ファンミーティングなどで見せる姿も同様に、小学生か!とツッコミたくなるようなこと度々(笑)。そういった無邪気さが、役づくりでの想像力につながり、不可能を可能にするエネルギーになっているのかもしれない。
その⑧ 孤独と寂しさ
「俳優という職業は、多くの人に愛される反面、孤独もつきもので、僕の心にはそんな寂しい部分が存在しています。ワン・ソの、皇子でありながら心が満たされず、宮中に1人で放り出されたような絶望感、それを僕自身も感じていたことで、役に入り込めたのだと思います」
(2017年、「麗<レイ>〜花萌ゆる8人の皇子たち〜」でのインタビューより)
――スターの孤独、については、我々の想像に及ばない。ただ、ワン・ソというキャラクターが多くの人の心を揺さぶったのは、イ・ジュンギ自身がワン・ソに共鳴し、同化していたからに相違ない。そう思うと、ファンの前で見せる笑顔が愛おしくなる。
◆高麗時代の孤独な皇子、ワン・ソ役を演じた「麗<レイ>〜花萌ゆる8人の皇子たち〜」 【日本版公式サイト イ・ジュンギ恋に落ちる編より】
TEXT:高橋尚子(編集・ライター)
ライター兼編集者。第一次韓流ブーム到来時に「韓国TVドラマガイド」(双葉社)を立ち上げ、現在まで責任編集を手がける。ドラマを中心に韓国のエンターテイメントについて、雑誌やWEBで執筆活動を展開する一方、韓国エンターテイメントナビゲーター田代親世さんと韓ドラ愛をひたすら語るYouTubeチャンネル「韓ドラマスター親世と尚子の韓ドラ感想語り」を配信中。「韓流自分史」編集長・野田智代さんとの企画「韓流セッション」も開設!
Edited:野田智代(編集者、「韓流自分史」代表)
「悪の花」リリース情報
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DVD-BOX2)2021年12月24日(金)発売 【映像特典】メイキング、イ・ジュンギインタビュー 【封入特典】ブックレット 各16,500円(税込)
レンタルDVD)vol.1~vol.8:2021年12月3日(金)よりレンタル開始 vol.9~vol.16:2022年1月7日(金)よりレンタル開始
2020年|韓国|音声:オリジナル韓国語・字幕:日本語|発売・販売元:エスピーオー
© STUDIO DRAGON CORPORATION
その他、エスピーオーがお届けしているイジュンギ作品
「無法弁護士~最高のパートナー」DVD-BOX1・2
「クリミナル・マインド:KOREA」DVD-BOX1・2
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